映画「るろうに剣心」シリーズや「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」でアクション監督を務めた
「The Furious」とは
第30回釜山国際映画祭のミッドナイト・パッション部門に出品された本作。誘拐された娘を救うため、父親が犯罪集団との死闘に身を投じる姿を描く。「新・少林寺伝説」などカンフーアクションを中心に活躍する主演のシェー・ミャオ(謝苗)をはじめ、「ザ・レイド」「モータルコンバット」の
The Furious - Clip
谷垣健治が語る制作経緯
香港でスタントマンとしてキャリアをスタートさせた谷垣は「香港のいろんな映画人に教わってきました。当時の僕らの世代は、例えば韓国のリュ・スンワンさんやチョン・ドゥホンさんも同じで、みんな香港映画を観て、まねして、けがをしながら学んでいったんです」と振り返る。そして「特にドニー・イェンさんとよく一緒に仕事をしているので、僕の中には彼のアクションの風味が色濃く残っていると思うんです」と語り、現在のスタイルに香港アクションが深く息づいていることを伝える。
「The Furious」の企画の発端を振り返り、「2年前にプロデューサーのビル・コンさんから呼び出され、『究極のアクション映画を作りたい。主役はシェー・ミャオだ』と言われた」と述懐。続けて、主人公の相棒となるジョー・タスリムのキャスティングについて「彼に直接会いに(インドネシアの)ジャカルタまで行き、食事をして友人になってオファーしました」と裏話を明かした。
多彩なアクションスタイル
主人公の前に立ちはだかる悪役たちも、坊主頭で巨体のブライアン・リー、赤いトラックスーツ姿で不敵な存在感を放つヤヤン・ルヒアンなど強烈な面々がそろう。岩永の起用理由については「『ベテラン』という韓国映画で、最後にユ・アインさんが出てくるじゃないですか。“若くてかっこよくてスマートで技がすごい”という存在は、この映画でも使えるんじゃないかと思ったんです」と説明する。
シェー・ミャオは中国武術、ジョー・タスリムは柔道の元インドネシア代表、ヤヤン・ルヒアンは伝統武術プンチャック・シラットと、それぞれのアクションの得意分野も実に多彩だ。そんな中、ブライアン・リーに関しては「正直もう何の格闘技かよくわからないんですけど……“ミックスマーシャルアーツ”って感じですね。彼は師匠についてもらわず、YouTubeで独学した“YouTubeファイター”です(笑)」と笑いを交えて紹介。また「子供の頃、香港映画には必ず“蹴りキャラ”がいた」ということで、ダンサー出身で極真空手も習得している岩永を足技のキャラとして起用したことを解説した。
一方、シェー・ミャオは「とても挑戦的で、完全なアクション映画になるとわかっていました。谷垣さんが監督だと聞いたときは歓声を上げました。なぜなら彼は世界最高のアクション監督なので、アイドルと一緒に映画を撮るようなものですから」と全幅の信頼をのぞかせる。谷垣が韓国語で「カムサハムニダ。サランヘヨ」と伝えると、シェー・ミャオも笑みをこぼしながら「サランヘヨ」と返し、会場は和やかな空気に包まれた。
「The Furious」は映画界のブレイクスルーになりうるか?
イベント後半には観客とのQ&Aが行われ、まずアクションの構成方法についての質問が挙がった。谷垣は「今回はどんな場所で戦ったら面白くなるか、場面から先に考えました」と明かす。全編タイで撮影された本作だが、「タイと言ったらブルース・リーの『ドラゴン危機一髪』」ということでオマージュを込めた撮影場所についても解説し、会場をうならせた。
本作では香港の伝統的なカンフーやインドネシアの古典武術が融合し、革新的なアクション表現が生み出されている。「世界の映画産業が相対的に弱体化しつつある現在、この映画こそが再び活性化させる突破口になるのでは?」と観客から問いかけが寄せられると、シェー・ミャオは「アクション映画は、映画界において重要なジャンル。でも近年は、次々と傑作が生まれていた時代とは少し状況が異なっているかもしれません。だからこそ、この映画が刺激となり、アクションに携わるすべての人々……プロであれアマチュアであれ、より多くのアクション映画を届けてくれることを願っています」と力を込める。一方、谷垣は「この映画が突破口になるかは、観客の皆さん次第だと思います」と切り出し、「僕たちは一生懸命作りました。でも最後に『面白い』と感じてくれるのは皆さんです。もし面白かったら、家に帰って家族に話したり、学校のクラスメイトや道ですれ違った人に伝えてくれたら。口コミこそが突破口になるんだと思います」と呼びかけた。
クラシックとして長く残る作品に
また劇中では明確に説明されない部分もあり、観客から「続編の構想は?」という期待の声も。谷垣は「設定自体は考えてありましたが、一番大事なのは観客に興味を持ってもらうことで、すべて明かすよりは途中までにしたほうがいい」と意図を述べ、「“パート2”をお楽しみに」と付け加えて会場を沸かせた。
最後にシェー・ミャオは「困難もたくさんありましたが、最後までブレることなくやり抜きました。これからも揺らぐことなく映画を作り続けます。皆さんも変わらず応援していただけたら」と力強くコメント。谷垣は「僕は昔のサイレント映画も好きなんですが、今回の作品もそうしたクラシックとして長く残ってほしい」と作品への願いを込め、イベントを締めくくった。
本作は「ザ・レイド」などのXYZ Filmsが国際配給を担当。日本公開は現時点では未定だ。
vitalxchange @vitalxchange_
@eiga_natalie つまり、あの名作アクションのアクション監督が、新しい“究極のアクション映画”を担当しているという紹介です。🔥🎬