「Actors' House」とは、韓国を代表する俳優陣が出演してきた毎年完売必至のプログラム。演技力だけでなく、スクリーン内外で際立つスター性を放ち、高い評価を得ている俳優にスポットを当て、俳優自身の魅力に迫る内容だ。今年はイ・ビョンホン、ソン・イェジン、キム・ユジョンに加え、二宮が日本人俳優として初めて招かれた。
「8番出口」での挑戦「塩コショウだけで勝負」
同映画祭のミッドナイト・パッション部門に出品された「
出演の決め手を尋ねられると、「とにかくキャストが少ない。自分のキャリアの中で、1人の芝居の時間がこんなにも多いのはなかったので、挑戦だなと思いました」と振り返る。また原作ゲームのシンプルさも惹かれた理由だと言い、「どこまで映画にできるんだろうと興味を持ったのが大きいです」と明かした。
1人芝居が多い本作については「台本通りやると、現実で起こることとの齟齬が生まれてしまう。それをなるべくなくすために、今回は脚本作りから参加させてもらいました」と説明し、役者として物語を支える責任に言及する。舞台となるのは単調な地下通路。「制約のある環境っていうのは演劇的になりやすい。大きなリアクションをしがちになるけど、そうすると観客が置いていかれてしまうんですね。なるべく大味にせず、料理で言うところの『塩コショウだけで勝負』するような細かい作業を心がけました」と表現し、観客に考える余白を残す演技を大切にしたと話した。
司会者から質問を投げかけられるうちに、二宮は「えっと……」と言葉に詰まり、「こんなにも真面目な場だと思ってなかったから……。日本人初でちょっと浮かれました(笑)」と熟考する場面も。そのたびに観客から「ニノ! がんばれ!」と声援を受けながら、1つひとつ真摯に答えていった。
嵐の活動で培ったもの
話題は演技論にも及ぶ。例えば二宮が出演したクリント・イーストウッド監督作「
また司会者は「作品ごとに、あるいはキャラクターごとに動きが変わる」と二宮の演技について称賛し、「アーティストとして活躍された経験が影響している?」と質問。二宮は「それはあると思います」と肯定し、「僕は嵐というグループで活動している人間でもあるんですけど、例えばコンサートで『フリーで動こう』となっても、5人全員が同じ方向に行くことはない空気の流れみたいなものをうまく感じながら動くのは、グループ活動で培われたものかなと感じます」と述べ、アイドル活動と俳優活動の相互作用を示した。
「浅田家!」での心がけ “迎合はしない”
東日本大震災の被災地が登場する「
さらに先ほどの“動き”に関する話題から「動きは制限があるというか、嘘をつけない。でもセリフは違うんです」と続け、セリフの持つ“4つの性質”について言及。「聞こえるけど聞きたくない。聞こえないけど聞きたい。聞かせたくないけど聞こえちゃう。聞かせたいけど届かない。この4つを使い分けることで感情をコントロールしています」と、自身の演技術を具体的に解説した。
「監督を黙らせること」が大事?
観客からの質問コーナーでは、前列に座っていた男性を二宮が指名。中学時代から二宮のファンで、現在は俳優として日韓を行き来しているという自己紹介を受けると「いい人当てましたね!」と自画自賛した。「演技をするうえで変化した点、また演技において一番大切にしていることは?」と問われると、キャリア初期を振り返る。「昔は、なぜ(その作品に)呼ばれたかを常に考えていました。芝居で呼ばれたのか、ファンを引き込みたいからか、バラエティ番組での宣伝活動のためか。自分がどこに属しているのか冷静に捉えるようにしていました」と明かし、今は「それらを全部できるようにがんばろう」と動いている点が変化だと話す。
そして「演技の中で一番大事に思ってるポイントは……これ、伝わり方が悪いとよくないんだよね」と言葉を選ぶように口をつぐんだのち、「誤解を恐れずに言うと、監督を黙らすことですね。とにかく力でぶん殴っていく!」ときっぱり。会場が一瞬ざわめく中、二宮は「台本に書いてあることはみんな把握しているし、テストもしている。その状況で監督を黙らせられる瞬間が、自分にとっての成功なんです。監督から『もっとこうして』と指示があると、あ、そうか、そうだよな、ってなる。でもそこで理屈が先行するんじゃなくて、『こいつはもう言っても変えないだろうな』『これに絶対的な自信を持ってるんだな』と監督に思わせられたら『じゃあ、このあとの展開はこいつ何考えてるんだろ』となっていく」と続け、「3秒でも5秒でもいい。その場で監督を黙らせられたら、それが正解だと思っている。自信とかじゃなくて、『僕はこれが絶対に合ってると思います』という気持ちが一番大事なのかなと思います」と結んだ。
さらに「もう1つ付け加えるとするなら」と重ね、食の比喩を交えて演技論を展開。「おいしいものはいくらでもあって好みの差だけど、“まずい”は全員一致でまずい。演技も同じで、上手は趣味嗜好だけど、下手は誰が見ても下手。だから“うまい”より“下手”を観るほうがうまくなります」と明かし、「もし時間があったら試してみてください」とアドバイスした。
韓国語で芝居を──新たな夢とは
トークの締めくくりに、二宮は今後への意気込みを伝えた。「僕はずっと『自分が世界に行く』のではなく、『自分たちで作ったものが世界に届く』という仕事がしたいと話してきました。この『8番出口』が釜山に来て、皆さんに観ていただける機会が少しでも増えたことが、すごくうれしい。ああ、やっててよかったなと思えます」と素直な気持ちをのぞかせる。そして「そうなると次は……やっぱり二宮が韓国に来るべきだと!」と会場に大きな期待を投げかけると、客席から「おおお!」と大歓声が湧き上がる。「ゲストではなく、ちゃんとレギュラーとして、韓国語で芝居をして。拙い韓国語にはなるでしょうけど、それで皆さんの気持ちを動かしてみたい。これが僕のもう1つの夢として加わることになります」と話す。
最後に「嵐のことも皆さんが能動的に動いてくれたから、お返しをしなきゃいけないと思っています。ただ……それは韓国からオファーがないと動けないので(笑)。だから皆さん1人ひとりが『二宮を観たい』と言ってください。僕の夢は、皆さんの“おうち”にお邪魔すること。テレビをつけたら二宮がいる、そんな感覚を韓国の皆さんにも味わってほしい。皆さんの“おうち”で芝居している自分が楽しみです。これからも応援よろしくお願いします」と力強く語りかけ、温かい拍手と歓声に包まれながらステージをあとにした。
なお同日には、映画の殿堂・BIFF 野外ステージにて「8番出口」のトークイベントが行われ、二宮のほか、“歩く男”役の
第30回釜山国際映画祭は9月26日まで開催。「8番出口」は全国で公開中だ。
映画「8番出口」予告編
関連記事
二宮和也の映画作品
リンク
ねどこ @nedoco_1102
めちゃくちゃ詳しいありがたい😭 https://t.co/ppHzthZAzF