枝優花とシバノジョシア、ルーナ・ルーナソン新作「突然、君がいなくなって」を語る

映画「突然、君がいなくなって」の一般試写会トークイベントが昨日6月10日に東京・日本シネアーツ試写室で行われ、映画監督で写真家の枝優花とフォトグラファーのシバノジョシアが登壇した。

第77回カンヌ国際映画祭にて、ある視点部門のオープニング作品に選出された本作。アイスランド・レイキャビクの美大に通うウナには大切な恋人ディッディがいる。しかし彼には遠距離恋愛をしている長年の恋人クララがおり、ウナとディッディの関係は秘密だった。ある日ディッディはクララに別れを告げに行くと家を出るが、事故に巻き込まれ帰らぬ人に。誰にも真実を語ることができないまま、愛する人を失った悲しみを抱えるウナの前に、何も知らないクララが現れる。「ECHO／エコー」「スパロウズ」のルーナ・ルーナソンが監督を務め、エリーン・ハットルがウナ、カトラ・ニャルスドッティルがクララ、バルドゥル・エイナルソンがディッディを演じた。

本作を鑑賞した枝は「主人公のウナが喪失から人間を受け入れるまでの話。単に恋人とのことではなく、ウナが悲しみを悲しみ切れないということに葛藤し、それもすべて受け止めることで自分を許すという話だと思いました」と述べ、「ウナとクララにはそれぞれ『私のほうが好きだったはず』『私のほうが長く一緒にいた』とおそらくお互い言わないいろんなものがある。そんな中でも『大事な人を失った悲しみはお互い一緒』ということを受け止め合うところは、監督が一番魅せたかった部分なのかなと」と口にした。

また枝は「キャスティングがうまいと思いました。付き合っている女と浮気する女って違うみたいな（笑）。元カノ同士は似ていたりするのに、浮気をするときは付き合ってる恋人の足りない部分を補う女性を選ぶという心理が働くんだなと。本作でいえばウナはシュっとしていておしゃれで、アートもわかっているので話も合う。でも付き合う相手は正反対。刺激はないけど安心感があるクララを選ぶみたいな。監督わかってるなと思いました」と笑う。

アイスランドのさまざまな風景を長年撮影しているシバノは「“首都に暮らす若者たちの青春映画”というのが印象的でした」と述懐。「アイスランドは北海道と四国を合わせたくらいの国土で人口が38万人（ほぼ新宿区と同じ規模）です。レイキャビクに住んでいるのが約20万人なので、アイスランドのほとんどの人がレイキャビクに住んでいます。20万人のうちのさらに若者の人数と考えるともっと少ない。そんなレイキャビクで繰り広げられる青春群像劇だと思って本作を観てもらうと、彼らの『恋人になる』という感覚は、東京で暮らしている我々の想像している以上に結構貴重な縁だと思います」と語った。

最後に枝は「大切なものがいなくなってしまって、それでも生きていかないといけない人たちがどういうふうに手と手を取り合って生きていくのか。それを丁寧に描いているところが好きでした。大事な人と観に行くのもいいのではと思います」とコメント。シバノは「私がアイスランドで一番惹かれるのは“何もない”ところなんです。大自然での圧倒的な孤独感というか、日本では味わえない怖さもあるような。ただ、そんな中でもコミュニティがあるレイキャビクは小さいけれど温かみのある町です。映画を観て、興味を持った方はぜひアイスランドに行ってほしい」と呼びかけた。

なおこのたび本作の本編映像の一部がYouTubeで解禁。ウナとクララが初めて2人だけで会話する様子が収められている。

「突然、君がいなくなって」は6月20日より東京のBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、新宿武蔵野館ほか全国で順次公開。配給はビターズ・エンドが担当する。

映画「突然、君がいなくなって」本編映像