映画監督
役所広司を主演に迎えた最新作「
主人公が世界中を旅しながら撮影したイメージを、盲目の母親が最新鋭の機械を通して脳内で“見る”ことになる「夢の涯てまでも」。そのクライマックスは、当時の最先端映像技術であったハイビジョン(Hi-Vision)で制作され、ヴェンダースによって「夢のシークエンス」と名付けられた。ヴェンダースは制作の過程で、8mmフィルム、16mmフィルム、ビデオ画像、写真、ドローイングなどのアナログデータをデジタルデータに変換したときに、観たことのない絵のような幻影を偶然発見。これらのイメージに主演俳優らの写真を撮影・合成し、 鮮烈な視覚表現を作り上げた。
「Electronic Paintings」は「夢の涯てまでも」のアソシエイトプロデューサーを務めた御影雅良が30年以上保管していたコレクションから展示。墨屋宏明がキュレーションを務めた。
N&A Art SITEでは、1990年から91年に東京を訪れたヴェンダースが、 NHK 編集室において制作した「夢のシークエンス」のドキュメンタリー「ヴィム・ヴェンダース イン 東京」も上映。また東京都写真美術館で開催される恵比寿映像祭2024では、2月20日から3月20日にかけて「夢の涯てまでも」のディレクターズカット 4Kレストア版が上映される。
ヴィム・ヴェンダースの透明なまなざし
2024年2月1日(木)~3月2日(土)12:00~17:00 東京都 N&A Art SITE
御影雅良 コメント
「世の中、大いに変わったよね。あの頃は、僕たちが最初にハイデフィニション・デジタル・アートの出現をこの目で、あそこのNHK編集室で目撃したのだよ。覚えているだろう。」とヴィム・ヴェンダースは、私の問いかけ(そろそろ『Electronic Paintings』の展覧会をやらないか)にすぐに応えた。
2022年5月のある日のこと、新作映画「THE TOKYO TOILET」(現『PERFECT DAYS』)の制作発表会があり、ヴィムから連絡があって私たちは32年ぶりに再会した。ほぼ2時間に渡り旧交を日本酒で温めて、話は多岐に渡った。大きな場所でやるにはもっと考えないと、今のデジタルが当たり前な世代には「伝わらない」かも、という懸念が彼にはあった。しかし、まずは小さな空間で33年前の始まりの姿を観てもらう事に意味がある、と理解を示してくれた。私は、今回展示するヴィムの作品群は、日本で生まれたテクノロジーを使ってアートを作り上げた美術史に残る傑作だと思っている。
tAk @mifu75
展覧会「ヴィム・ヴェンダースの透明なまなざし」電子絵画と風景写真を展示 https://t.co/T6Oz4ITXug