映画に携わる役職ごとのジェンダー格差が明らかに、スタッフ向けの契約書講座も開始

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一般社団法人のJapanese Film Project(JFP)が発表した「実写映画・アニメ映画・演劇の制作現場におけるジェンダー調査2023」に関する記者レクチャーが、本日12月12日にオンラインで実施。調査結果とともに、「映画スタッフに向けた契約レッスン」を開始することも報告された。

対面研修会「ゼロから始める、契約書の読み方講座~映画スタッフ編~」告知ビジュアル

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「実写映画・アニメ映画・演劇の制作現場におけるジェンダー調査2023」資料より。

「実写映画・アニメ映画・演劇の制作現場におけるジェンダー調査2023」資料より。[拡大]

2021年以降、日本映画業界におけるジェンダー格差と労働環境について調査を行ってきたJFP。今回の調査は、実写映画だけでなくアニメ映画にも範囲を広げ、興収10億円以上の作品を対象に実施された。その結果、実写・アニメの両方で、意思決定層の役職における女性比率と比べてアシスタント職(助監督や録音・照明・美術の助手など)の女性比率が高いことが明らかに。対象となった実写映画13本のうち、女性の監督は0%、助監督は5%、監督助手は25%。撮影を担う女性が5%なのに対し撮影助手は23%など、その差は如実だ。

「実写映画・アニメ映画・演劇の制作現場におけるジェンダー調査2023」資料より。

「実写映画・アニメ映画・演劇の制作現場におけるジェンダー調査2023」資料より。[拡大]

こうした実態について、JFPに所属する映画監督の歌川達人は「多様な働き方のない多様性は絵に描いた餅」と表現し、「意識改革だけしてもダメで、労働環境を改善しないとジェンダー格差(の解消)や多様性は生まれない。構造の問題だ」と断言。そして、2024年秋に施行されるフリーランス保護新法に言及し、「(発注者から受注者に対し)契約書に業務内容、報酬額、支払期日その他の事項などを明示することが義務化される。きちんとした内容で契約を結ぶことが業界の振興にもつながると考えていますが、あまり知られておらず、対策を練られていない状態」だと述べる。

具体的な策として、JFPは映画・映像に関わるすべての人を対象とする対面研修会「ゼロから始める、契約書の読み方講座~映画スタッフ編~」を、文化庁からの委託事業で実施する。映画監督の金子由里奈中村義洋、美術監督の福澤勝広らが聞き手として参加し、専門の弁護士が契約書に必要な要素や、納得できない条項が盛り込まれていた場合に交渉するための知識などを伝える。歌川は「実用を考えると、フリーランスは発注元の契約書にサインする場合が多い。その際に、フリーランス側に知識がなければ、手渡された契約書にただ印鑑を押すだけとなってしまい、問題点があっても気が付くことができない。そういった問題を補うような事業を考えています」と話し、「どういった契約書にしていくべきかという議論自体が、具体的な構造の話にもつながると思います」と語った。JFPは2月に5回の研修会を予定しているほか、1月14日20時からは、韓国の映画現場で使われている標準契約書などを紹介する無料のオンライン講座「映画スタッフの契約事情~韓国映画界の事例紹介~」も行う。

オンライン講座「映画スタッフの契約事情~韓国映画界の事例紹介~」告知ビジュアル

オンライン講座「映画スタッフの契約事情~韓国映画界の事例紹介~」告知ビジュアル[拡大]

歌川は「これらの課題は、映画に限らず演劇・アニメなど文化芸術領域で共通」としつつ、今後については「“映画スタッフ”とは、映画の現場で働く人みんなのこと。最初はある程度、標準となる契約書や考え方をガイドしたうえで、『撮影部はこういう問題が起こりやすい』『助監督や制作は長時間労働が多いし、業務の内容があいまい』といった業種ごとに異なる問題をフォローできるようにしていこうと思っている」と説明した。

オンライン講座「映画スタッフの契約事情~韓国映画界の事例紹介~」

2024年1月14日(日)20:00~21:30
<登壇者>
呉美保(映画監督)/ 藤本信介(助監督)/ 成川彩(韓国在住文化系ライター・司会)/ 大塚大輔(JFP 韓国調査員・翻訳等担当)

対面研修会「ゼロから始める、契約書の読み方講座~映画スタッフ編~」

2024年2月8日(木)13:30~15:00 東京都 日本映画大学 新百合ヶ丘キャンパス
2024年2月9日(金)13:30~14:30 東京都 LOFT9 Shibuya
2024年2月9日(金)19:00~20:30 東京都 Space & Cafe ポレポレ坐
2024年2月10日(土)19:00~20:30 東京都 Space & Cafe ポレポレ坐
2024年2月17日(土)17:30~19:00 京都府 キャンパスプラザ京都
講師:長澤哲也(弁護士)
<登壇予定者>
甲斐清香(ポストプロダクションスーパーバイザー / 日本映画・テレビ編集協会 専務理事)/ 金子雅和(映画監督)/ 金子由里奈(映画監督)/ 儀間眞悟(撮影監督)/ 中村義洋(映画監督 / 脚本家 / 日本映画監督協会 常務理事)/ 福澤勝広(美術監督 / 日本映画・テレビ美術監督協会 副理事長)/ 山中瑶子(映画監督)

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主催:文化庁(令和5年度「芸術家等実務研修会」)

事務局・企画・運営:一般社団法人Japanese Film Project

協力:(協)日本映画監督協会、(協)日本映画撮影監督協会、(協)日本映画・テレビ照明協会、(協)日本映画・テレビ録音協会、(協)日本映画・テレビ美術監督協会、(協)日本映画・テレビ編集協会、(協)日本映画・テレビスクリプター協会、(協)日本シナリオ作家協会、日本映画大学

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