太田真博の劇場長編デビュー作「エス」公開、自身の逮捕から着想を得た物語

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映画監督・太田真博の劇場長編デビュー作「エス」が、2024年1月19日より東京・アップリンク吉祥寺で公開されることがわかった。

「エス」ポスタービジュアル

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「エス」場面写真

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「エス」場面写真

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太田は小劇場を中心に役者として活動後、2006年に自主映画制作をスタートさせる。その後、 2007年からはCMディレクターとしても活動し、2009年に滝藤賢一主演作「笑え」を発表。しかし2011年に不正アクセス禁止違反容疑などで逮捕され、30日余りを留置場で過ごす。2016年には自らの犯罪をモチーフとした作品「園田という種目」でSKIPシティ国際Dシネマ映画祭の長編コンペティション部門にノミネート、福井映画祭では長編部門グランプリを受賞した。

「エス」は、太田が自身の逮捕から着想を得た物語。映画監督・Sこと染田真一は、新鋭の若手として注目されていながら、自らが犯した罪により映画監督としての未来、そしてこれまで築いてきた人間関係の多くを失う。染田への思いをこじらせた挙句、別の男性と結婚した千穂、染田の新作に主役として出演するはずだった崖っぷちの俳優・高野、自称“染田との絆がもっとも深い”先輩・鈴村は何を思うのか。千穂を松下倖子、高野を青野竜平、鈴村を後藤龍馬が演じたほか、安部康二郎向有美はしもとめい大網亜矢乃辻川幸代坂口辰平淡路優花石神リョウ篠原幸子中尾みち雄ノブイシイ岡山甫高村明裕、太田、松永直子河相我聞が出演した。

YouTubeでは特報が公開中。また今回の発表に際し、映画監督の中村義洋塚田万理奈、脚本家の大野敏哉、高橋泉ら各界著名人から応援コメントが到着。以下に記した。

映画「エス」特報

中村義洋(映画監督)コメント

もういい加減こういうのじゃない映画を撮ったんだろうと思って、でもそれがべらぼうに面白かったら、こいつ全然反省してねーなとか思っちゃうのかな、とか思いながら観たら、やっぱりこういうのか!と、その瞬間から私は、登場人物の一人になった。
1つの出来事を何年も見つめ続けた奴にしか描けないと思う。登場人物は紛れもなくそこに居て、作劇を忘れる。嘘がない。誠実だ。・・・でもそれも、本当に?と疑わしさを漂わすあたりがまた「ちょっと気持ち悪い」エスの作品である。

大野敏哉(脚本家)コメント

太田真博は人間を好きすぎる。
彼の映画はいつも問いかけてくる。あなたにとって人間とはなんなのか。あなたは人間と何を話し、何を分かち合おうとしているのか。
この「エス」もそうだ。彼の作品独特の、ふざけ合う会話が問いかけてくる。あなたは誰の友達で、誰の他人なのか。考えているうちに映画は終わる。
あんなに難しい問いだったのに、あの独特な会話の中に入ってもう一度考えたいと思っている自分に気づく。

高橋泉(脚本家)コメント

友人とのスタンスを見失った登場人物たちが、自分の気持ちを探して喋り続ける。
ムダ話の語彙力高めなのに、その力を本題では発揮できないという皮肉に笑い、
空回りし続けた先に生まれた熱風に、巻き込まれて泣いてしまった。

後藤和夫(シネマハウス大塚支配人 / 映像作家)コメント

2018年、私はとんでもない映画に出会ってしまった。私の主催するシネマハウス大塚で開催された「インディーズ映画祭」。
そこで上映された太田真博監督の「園田という種目」である。
突然そこからいなくなった男“園田”。残された者たちの園田をめぐる果てしない会話。
果たして園田とは何者か。饒舌の果てに見えてくるもの。私たちは他人の何を知っているのか。何を知らないのか。私たちは私たちの何を知っているのか。
飛び交う言葉にゲラゲラ笑いながらも、背筋がぞっとするような体験。
まさに笑劇的な作品だった。
その後太田作品をことごとく観ることになり、私は太田監督がこだわる「不在をめぐる冒険」にたどり着いた。そこにいない人物をめぐって、残された人間たちが、想像や思い込みや、果ては妄想も交えて語り合う。それは会話のバトルだけでなく、役者の演技バトルでもある。まるで、ロバート・アルトマンの群像劇を見ているようなスリリングな面白さ。
そしてそこに流れる哀しみもまた。人はつながりを求め会っているのに傷つけあう厄介な存在。時にブニュエルのように残酷に、時にウディ・アレンのように身もふたもなく、太田ワールドは私たちを翻弄する。
「園田という種目」のバージョンアップともいうべき本作品。「不在を埋める何か」を発見できるかもしれない。

前田和紀(映画プロデューサー)コメント

膨大な台詞量に圧倒されました。
犯罪を犯してしまった男が所属していた劇団時代の仲間たちの群像劇。仲間たちが、その男を軸に、くりひろげる一見、意味のないような無駄話も、彼らの過ごしてきた空気、時間が垣間見え、映画を支えてる。
人の弱さ、あやうさ、立場、後悔の念、意思、それぞれの感情や行動が、リアルにせまってきて、自分は、この中の誰かかもしれない。そう自問自答した。
友人が捕まったとき、果たして自分は、、、
映画冒頭からぐいぐいと迫ってきて、気付けばエンドロールが。。。没入しました。

塚田万理奈(映画監督)コメント

怖い監督です。そして変態。
役者の内面と、自分自身をガン見しながら、笑いながら、笑っていない。
あいつって私のこと本当はどう思ってんだろ、皆なんて言ってんだろ。知りたい、でも怖い、いやだ掘らないでくれ。
不在の人間を語る、見事な台詞達と厳しい演技演出による群像劇。
ど天才です。近づきたくない。
けど太田さんという監督を知った時、私は天を仰いで興奮しました。世間に知られてないのが悔しくもなった。

有元真一(福井映画祭実行委員会 事務局長)コメント

太田監督の持ち味は、すべての役者の機微を的確に撮る事で、まるでその場にいるような臨場感を映画に宿すところにある。
それぞれの本音が伝わるようなこの感覚は何だろうか。
自ら招いた過ちの顛末や周りの人たちと向き合い、過ごした日々がこの映画には映されているのだろう。前に進むためには撮らなくてはいけない映画なのだと。
太田監督にしか描けない境地を是非見てほしい。

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(c)2023 上原商店

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ルートヴィヒ白鳥王 @lohengrin_lud

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