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「深夜食堂」新シーズンの現場に潜入、松岡錠司が「めしや」セットの工夫明かす

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松岡錠司

松岡錠司

小林薫が主演を務めるドラマ「深夜食堂」の新シリーズ「深夜食堂 -Tokyo Stories Season2-」が、Netflixで10月31日に配信される。神奈川・川崎市で行われた本作の撮影に映画ナタリーが密着した。

安倍夜郎のマンガを原作に、2009年10月よりドラマ第1弾が放送された「深夜食堂」シリーズ。劇場版2作品も製作され、2016年にNetflixオリジナルシリーズ「深夜食堂 -Tokyo Stories-」が配信された。4月25日に行われた「秋鮭ときのこ」の撮影には、マスター役の小林のほか、不破万作小林麻子宇野祥平金子清文らめしや常連客キャスト、ゲストの池田鉄洋平岩紙、監督を務めた松岡錠司らの姿があった。

撮影現場となった同市内の旧体育館には、めしやとその周辺を街ごと表現した巨大なセットが。林立する居酒屋やスナックの看板、オダギリジョー演じる警官・小暮が詰める派出所などが街を形作るほか、無造作に捨てられた吸い殻やポストのダイレクトメールなど、細部にまでこだわられていた。「めしや」と書かれたのれんをくぐり、コの字型のカウンターが設置された店内に足を踏み入れると、作品世界に入り込んだような錯覚を覚える。

この日は主に、マスターが池田と平岩演じる夫婦に鮭の塩焼きときのこのバター炒めを提供するシーンが撮影された。撮影の合間には、小林らキャストが劇中のマスターと常連客さながらに和気あいあいと言葉を交わす様子も。松岡は撮影について「のーびのびとやってます(笑)。4月1日にクランクインして、1カ月近く撮影しているのでキャストやスタッフにチームワークができてきましたね。めしやのセットは意外と狭いのでスタッフが一度に動くことができないんです。各々だんだん所作がわかってくるので、連携がよくなりますね」と語る。

セットの側には松岡のデスクと、セット内のカメラ位置を細かく記入した大きなホワイトボードが置かれていた。めしやのセットはカウンターに座る人物を撮影するため、窓や壁を取り外すことができる。松岡は「めしやは、人の出入りはあるけど基本的に店内で客が動かないんです。座っているキャストをどう撮るのかはこの作品を通して勉強になりました。ちょっとしたニュアンスを出すためにどう撮っていくか、1つひとつ手間はかかりますが、こうしてスタッフと葛藤して作っていくことがこの作品に深みを持たせているんだと思います」と述懐。「撮影位置の変化によって不自然に見えないように、箸の長さが変わっていたり、キャストに空気イスで演技してもらったりするシーンもあります」と細かな工夫も明かす。セットの中では、カットがかかるたびにスタッフが数人がかりで店内の様子を変更する様子が見られた。

また、撮影には「かもめ食堂」などで知られ、本シリーズに長年協力しているフードスタイリスト・飯島奈美も参加。セット脇のテント内にはガスコンロや調理台が置かれ、飯島とアシスタントが撮影シーンに合わせて調理を行う。鮭を網で焼き上げる、きのこにバターを絡めるなど、飯島の調理が進むごとに周囲にはかぐわしい匂いが漂い始める。劇中で軸となる食事シーンの演出について松岡は「このシリーズに関わり始めた頃、料理のアップは必要なのかと悩んだんですが、完成品を観たときに、すごく料理がおいしそうに見えて、おろそかにしてはいけないことなんだなと学びました。このアップがあることで、観ている人がスッと物語に入っていける作用があると思います」と述べた。

松岡は、2009年に放送された第1シリーズから参加しており、10年の「付き合い」となる本作について「『仕事終わりに観るとよく眠れる』『酒飲みながら観ると最高なんだ』という意見もあり、どんな作品なんだ!と思います。でも先日、『深夜食堂』とはどういう作品なのかを改めて振り返るために見返したときは、気付いたら自分も酒飲んでましたね」と笑う。「そのときに、作り手が作品を作るんじゃなくて、作品が作り手を作るんだなと思いました。当初は1つの物語を描くときは90分ぐらいほしいと思っていたんですが、10年もやってると約20分の作品を作るエキスパートになってきている。制限があると我々が学習しなければならないので、そういう意味で作品が自分を作ったんだと思います」と意図を述べた。

最後に、松岡に今シリーズのテーマを問うと「数年前までは脚本チームに『これは地べたではいずりまわってる人たちに対する応援歌なんだ』と言っていました。でも人生はさまざまですから、一言で表せるような大きなテーマは考えていません。強いて言わなくちゃいけないとしたら『人に対する思いやり』とか当たり前のものになってしまうので」と苦笑した。

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