「台湾BLの海外戦略」をテーマにしたシンポジウムの様子。左から姜瑞智、林珮瑜、潘心慧、蔡妃喬、蔡幸真、金京恩、宋鎵琳。

ナタリーが見た台湾カルチャー最前線 第2回 [バックナンバー]

台湾BLドラマのクリエイターたちが海外戦略をテーマにトーク──そこから見えてきた強み、課題、そして未来とは? / GagaOOLalaのコンテンツ発表会も現地取材

33

434

この記事に関するナタリー公式アカウントの投稿が、SNS上でシェア / いいねされた数の合計です。

  • 154 251
  • 29 シェア

台湾のLGBTQ子供コンテンツを世界へ

林志杰(ジェイ・リン)

林志杰(ジェイ・リン)

続いてレポートするのは「Content in Focus: LGBTQ + BL GagaOOLala」。2017年にスタートしたGagaOOLalaはLGBTQ作品に特化した台湾発の動画配信サイトだ。同社ではBL、LGBTQに特化したドラマも制作している。イベントには創設者である林志杰(ジェイ・リン)らが登壇し、GagaOOLalaが手がける注目コンテンツを発表した。

「PAPA & DADDY」台湾版ビジュアル(画像提供:杰德影音Portico Media)

「PAPA & DADDY」台湾版ビジュアル(画像提供:杰德影音Portico Media)

その1つが、LGBTファミリードラマシリーズ「PAPA & DADDY」のアニメ化計画だ。台湾の文化庁も制作を支援した「PAPA & DADDY」では、アジアで初めて同性婚が合法化された台湾を舞台に、ゲイカップルのダミアンとジェリー、そして代理母出産により2人がもうけた息子カイの姿が描かれる。

林志杰は同シリーズについて「視聴者だけでなく教育関係者からもいろいろな意見が出て、ネットで話題になりました」と述べ、「私も2人の子供がいるゲイのお父さんです。台湾で、子供にどうやって同性愛を説明していくのか? 教育の面で向き合っていくべき課題です」と述懐。そして「ロマンティックなBLは数多く作られていますが、LGBTQをテーマにした家族向け、子供向けのコンテンツは少ない。だから『PAPA & DADDY』だけでなく、子供向けのアニメを作ることによって、子供がLGBTQを理解しやすいようにできたらいいと思っているんです」と語る。

アニメ作品は子供になじみのあるYouTubeでの公開を視野に入れているそうだ。林志杰は「台湾のLGBTQ子供コンテンツを世界に届けていきたい」と言葉に力を込める。

重厚なBLコンテンツにも力を入れていきたい

「小光Light」台湾版ビジュアル(画像提供:杰德影音Portico Media)

「小光Light」台湾版ビジュアル(画像提供:杰德影音Portico Media)

視聴者がリラックスできるような作品、ロマンティックな気分を味わえる作品を世の中に送り出す一方、GagaOOLalaでは重厚なBLコンテンツにも力を入れていきたいのだという。

林志杰が「ダークな作品」として紹介した「小光Light」は「ダークブルーとムーンライト~深藍與月光~」のアダイアモンド・リーが監督を務めたBL短編映画。劇中では、幼少期に義理の父から虐待を受け育った男娼の小光と警察官・碩哥の姿が描かれる。

視聴者からの熱い要望を受け、同作はドラマ化する予定だという。林志杰は「台湾の基隆が重要なスポットになる。日本でも撮影したい」と語った。

質のよいGL作品が世界で求められている

「最初の花の香り」台湾版ビジュアル(画像提供:杰德影音Portico Media)

「最初の花の香り」台湾版ビジュアル(画像提供:杰德影音Portico Media)

BL作品だけでなく質のよいGL作品が世界で求められていると語る林志杰。「最初の花の香り」は、Varietyが選ぶ「2021年の海外テレビ番組ベスト」の1本に選ばれ、第34回東京国際映画祭でも上映された。劇中では主婦のイーミンが、高校時代の後輩ティンティンと再会し、彼女への思いが再燃する様子がつづられる。

林志杰は同作のシーズン2を制作することに触れ、作品をお披露目する際にはイベントを開催する予定であると明かした。

さまざまなことにチャレンジできる環境

台湾はこれまで、アン・リーが監督を務めた「ウェディング・バンケット」をはじめ、グイ・ルンメイとチェン・ボーリンが共演した「藍色夏恋」や「GF*BF」「君の心に刻んだ名前」といった映画、白先勇の小説「孽子」をもとにしたドラマ「ニエズ~Crystal Boys」など、LGBTQをテーマにした作品で世界的に高い評価を受けてきたという背景がある。

TAICCAの職員によると、台湾エンタメ業界で今勢いのあるジャンルがホラーと並んで、BLドラマなのだという。比較的寛容な社会の空気の中、クリエイターが物語の題材を選べるのが強みだ。シンポジウムに登壇した「We Best Love」シリーズの監督・姜瑞智(ジャン・ルイジー)も合理的な脚本があれば、さまざまなことにチャレンジできる環境が台湾にはあると語っている。クリエイターたちを支援することを目的の1つに、台湾・文化部が2019年にTAICCAを創設したというのも、台湾BLドラマの未来を考えるうえで見逃せないポイントだろう。

シンポジウムと「Content in Focus: LGBTQ + BL GagaOOLala」を取材し、今後もチャレンジ精神とオリジナリティにあふれた、多種多様な台湾発のドラマが生まれることを確信した。アジア各国で同時多発的に世界を熱狂させるBLドラマが生まれている昨今、台湾発の作品にこれからも注目していきたい。

※文中、すべて敬称略

バックナンバー

この記事の画像・SNS投稿(全10件)

読者の反応

おきらく台湾研究所 @okiraku_tw

映画ナタリー「台湾BLドラマのクリエイターたちが海外戦略をテーマにトーク──そこから見えてきた強み、課題、そして未来とは? / GagaOOLalaのコンテンツ発表会も現地取材」 https://t.co/sGM7hS73nZ

コメントを読む(33件)

関連記事

あなたにおすすめの記事

このページは株式会社ナターシャの映画ナタリー編集部が作成・配信しています。

映画ナタリーでは映画やドラマに関する最新ニュースを毎日配信!舞台挨拶レポートや動員ランキング、特集上映、海外の話題など幅広い情報をお届けします。