左からジャネット・シエ(謝怡芬)、アリエル・リン(林依晨)、ティファニー・シュー(許瑋甯)、シェ・インシュエン(謝盈萱)。

映画ナタリーが見たコンテンツビジネスの祭典・2023 TCCF Vol. 1 [バックナンバー]

アリエル・リン、ティファニー・シュー、シェ・インシュエンら台湾トップ俳優が歩んできた道のりとは? | 「2023 TCCF」現地レポート

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アジアのコンテンツビジネスの祭典「2023 TCCF クリエイティブコンテンツフェスタ(Taiwan Creative Content Fest)」が11月7日から12日まで台湾・台北で開催された。このイベントは、台湾・文化部(日本の文科省に類似)によって創設された台湾クリエイティブ・コンテンツ・エイジェンシー(TAICCA)が主催したもの。台湾文化コンテンツの産業化、国際化を促進するTAICCAでは、台湾映画やドラマ、クリエイターを積極的に支援している。

4年目を迎えた今年のTCCFで大きな注目を集めたイベントの1つが、アリエル・リン(林依晨)、ティファニー・シュー(許瑋甯)、シェ・インシュエン(謝盈萱)といった台湾のトップ俳優が顔をそろえ、ジャネット・シエ(謝怡芬)が司会を務めた「The Actor's Journey」だ。映画ナタリーでは台湾現地にてTCCFを取材。エンタテインメント業界でキャリアを重ねてきた彼女たちが、それぞれの経験や考えをシェアしてくれた。

取材・/ 金子恭未子

彼女たちはなぜ俳優になったのか?

「The Actor's Journey」の様子。

「The Actor's Journey」の様子。

11月10日に台湾・台北で行われた「The Actor's Journey」。満員の観客を前に登壇者がそろうと、司会のジャネット・シエは「自己紹介はたぶんいらないかな?」と笑顔で切り出し、さっそくイベントをスタートさせた。そんな何気ない1コマが、彼女たちが大衆に親しまれていることを物語る。

この日、登場したのはドラマ「イタズラなKissII~惡作劇2吻~」「イタズラな恋愛白書」で金鐘奨の最優秀主演女優賞を2度受賞したアリエル・リン、「紅い服の少女 第一章 神隠し」などで第18回台北電影獎の最優秀主演女優賞に輝いたティファニー・シュー、「先に愛した人」で第20回台北電影獎、第55回金馬奨の最優秀主演女優賞を手にしたシェ・インシュエンというそうそうたる面々だ。

シェ・インシュエン(謝盈萱)

シェ・インシュエン(謝盈萱)

そんな彼女たちにはまず「なぜ俳優になったのか?」という質問が投げかけられた。シェ・インシュエンのターニングポイントになったのは大学進学のとき。「台北芸術大学に行って、演劇学科に入りたいと思ったんです。それまで演劇学科があるということも知らなかったんですが、ほかの学科とは違う特別な何かを感じました」「とても自分らしく過ごせる場所だと感じました。ちょっと反抗したい時期だったこともあって、ちょうどいい学校があったから進んだんです」と語る。

ティファニー・シュー(許瑋甯)

ティファニー・シュー(許瑋甯)

「モデルのイメージが強いかもしれないんですが、子供の頃からずっと俳優になりたかったんです」と振り返るのはティファニー・シュー。「あるとき学校で、クラブで踊っている最中に停電したというシチュエーションで演技をするように言われたんです。簡単だと思ったけどうまくできなかった。体の使い方、表現はモデルという仕事を通して学びました」と思い返した。

アリエル・リン(林依晨)

アリエル・リン(林依晨)

家族を養える仕事に就きたいと考えていたアリエル・リンは、教師や家庭教師、記者になることを考えていたという。「賞金が高かったから高校3年生のときに美少女コンテストに参加したんです。そしたら受かっちゃって(笑)」と芸能界入りの経緯を回想し、「すごくラッキーだったと思います。最初の2、3年は何もわからなかったですが、俳優はすごく面白い職業でいい方向なのかなと思うようになりました。それで大学の主任にちゃんと卒業はするけど、最低ラインでしか卒業できないかもしれないと話したんです。先生は背中を押してくれました」と周囲の理解があったことに触れた。

大学時代は撮影後にファストフード店で2時間仮眠を取り、学校に行くというハードな日々を送っていたこともあったアリエル・リン。台湾の名門大学・国立政治大学を卒業した彼女は「仕事と学業、それぞれがそれぞれの逃げ場でもあり隠れ家だったんです。達成感もあって、あきらめちゃ駄目だと思いました」と両立できた理由を明かす。これを横で聞いていたシェ・インシュエンは「私だったら無理。本当にすごいと思う!」とたたえた。

レッテルを貼られる苦悩

左からアリエル・リン(林依晨)、ティファニー・シュー(許瑋甯)。

左からアリエル・リン(林依晨)、ティファニー・シュー(許瑋甯)。

俳優という職業は、ときにレッテルを貼られ、プレッシャーや期待を背負い、苦難を伴う。アリエル・リンは「私はとても長い間、童顔であることに悩んでいました。長期間“傻白甜”(少し抜けていてかわいらしいといった意味)といったキャラクターを演じていて、30歳なのに、まだこういう役をやらないといけないの?って。でも作品の中で演じられることは私にとって喜びなんです。今振り返れば、なんでもなかった。ある種の過程ですよね」と述懐。そしてダイエットに話が及ぶと、体重をコントロールするためマネージャーの隣では食事をしないようにしていた時期があったことに触れ、「コンビニで大好きなものをたくさん買って、一口ずつ食べて、泣きながら吐いたこともありました」と打ち明けた。

「“傻白甜”がやりたかった!」と言って、会場を笑わせたのはティファニー・シュー。彼女もまたレッテルを貼られていた1人だ。「私の顔は人を遠ざける、“近付かないで!”みたいな顔(笑)。だから、誰かのボーイフレンドを奪ったり、そういう役どころが多かった」と述べ、「こういう仕事をしているとダウンする時期もあります。撮影現場で急にどうしていいかわからないことに直面することもある。でも先ほどアリエルも言っていましたが、今振り返ると、すべてがプロセスだったと感じます」と伝える。

アリエル・リンは「仕事に対して完璧を求めるのは人間の性。でもほどよいタイミングで自分の脆い部分を出すのも大事だと思います。俳優としても、1人の人間としても、弱さや欠点がその人の存在をリアルでユニークなものにすると思います」と続いた。

シェ・インシュエン(謝盈萱)

シェ・インシュエン(謝盈萱)

舞台出身のシェ・インシュエンの生活は、2018年に出演した映画「先に愛した人」で第20回台北電影獎と第55回金馬奨の最優秀主演女優賞を手にしたことで大きく変化した。「舞台に出演してフィードバックをもらうこともありますが、人も少ないし、悪意あるコメントや変なコメントが来ることもなかった。外見について何か言われることもありませんでした。でも2018年以降、多くの人の目に晒されるようになって、善意のコメントも悪意のあるコメントも一気に大量に届くようになったんです。そのときに対抗しなきゃと思いました」と思い返す。

悪意ある批判についてアリエル・リンは「とても栄養価の高い魚のスープを飲みたいのに、骨がたくさんある。悪質な批判は骨だと思って、すべて吐き出します。私はスープと魚の身だけを食べたいんです。専門的でリアルなコメントを受け入れたい」と自身の考えをシェアした。

そんな彼女は、俳優業を一時中断し、イギリスに留学していたことがある。「早く走っていると爽快だけど、景色を見落としてしまうこともある。イギリスでは先生に嫌味を言われたり、並んで食材を買ったり、そのどれもが楽しいことでした」と笑みをこぼした。

今後取り組んでみたいこと

「The Actor's Journey」の様子。

「The Actor's Journey」の様子。

イベント終盤には登壇者が今後、取り組んでみたいことについてトークを展開。ティファニー・シューは「絵を描くのが好きなので絵画展をやったり、アリエルみたいに作家になったり、まったく違うことをしてみたい」と話し、シェ・インシュエンは「私は今、44歳。40歳から50歳にかけて、次の段階に入るべきだと思っているんです。休みたいわけじゃないんですが、別の充電が必要」と述べ、アーティスト・イン・レジデンス(アーティストが一定期間ある土地に滞在し、普段とは異なる環境で作品制作などを行うこと)に応募したことを明かした。

またアリエル・リンは「私は子供の頃から、お話を聞くのも観るのも好きで、大人になってからは物語を語る側に参加するようになりました。今は頭の中で語りたいストーリーが構築されています」と言い、脚本を準備中であると伝えた。また、Q&Aにて「仕事と生活のバランスをどう取っているか?」と観客に尋ねられたアリエル・リンは「ちゃんと生活をして、他人を思いやれば、道は広がる。なのでバランスはあえて見つけなくてもいいんじゃないかと思います」と回答。観客たちは、時に笑い、大きくうなずきながら彼女たちの話に聞き入っていた。

なお、台湾IP(知的財産)を世界に届けるコンテンツビジネスの祭典「2023 TCCF クリエイティブコンテンツフェスタ(Taiwan Creative Content Fest)」では、このほかにも、映画、ドラマ、出版、ゲームなどさまざまな業界のプロフェッショナルが自身の経験をシェア。コロナ禍が明けた今回は、世界29の国と地域から数千人のゲストが参加し、コンテンツ業界のプロフェッショナル241人が台北に集まった。

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