ユーロスペース(スクリーン2)内観

映画館、前で観るか?後ろで観るか? 第2回 [バックナンバー]

ユーロスペース:劇場スタッフに聞いた“ベストポジション”

中央派、通路側派──同じ劇場で働く人々のそれぞれの答え

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映画館ではどこに座る? 劇場スタッフが教えるとっておきの座席は? “一番見やすい”位置ってあるの? そんな座席にまつわるあれこれを、映画に関わる人々に聞いていく本連載。第2回は東京・渋谷にあるミニシアター、ユーロスペースのスタッフへ聞き込み調査を行った。支配人・北條誠人が“ユーロスペースの座席”についてのみ語るインタビューも!

取材・/ 金須晶子

ユーロスペースのロビー。

ユーロスペースのロビー。

受付スタッフ編

Q. 映画館の席選びの基準は?

スクリーンがちょうど目線の高さになる列を受付に聞いて、そのエリアの真ん中から右左どちらかに少しずれた場所に座ります。見上げるより普通の姿勢で観られる位置がいいです。家のテレビも真正面ではなくちょっと斜めから観ているので、映画館でも真ん中にはあまり座らないです。

Q. ユーロスペース(スクリーン2)で鑑賞する際のお気に入りの席は?

F列かG列の真ん中から少しずれたあたりですね。自分的にベストなのは【F12】です。

ユーロスペース(スクリーン2)F12の席からの見え方。

ユーロスペース(スクリーン2)F12の席からの見え方。

Q. お客さんにおすすめの席を聞かれたとき、どのようにご案内していますか?

基本的にユーロスペースはどの席でもわりと見やすいと思いますが、受付で聞かれたときには「F列、G列あたりはスクリーンが目線の高さになります」とお伝えします。映画祭や特集上映だと縦に字幕が入ることもあるので、字幕の位置をお伝えすることもあります。埋まるのが早いのは中央から後方にかけてのセンターブロック、あとは通路側ですね。見づらい席がないとは言え、やはり前列だと多少見上げる体勢になるので。

映写スタッフ編

Q. 映画館の席選びの基準は?

あまり近くに人がいないほうが好きなので、なるべく空いているところを選びます。

Q. ユーロスペース(スクリーン2)で鑑賞する際のお気に入りの席は?

劇場の真ん中より、少し後ろの列の【G9】。ちなみにスクリーン1だと最後列の真ん中あたりがスクリーンの見え方もちょうどいいです。

ユーロスペース(スクリーン2)G9の席からの見え方。

ユーロスペース(スクリーン2)G9の席からの見え方。

Q. ずばり、映写目線で考えるユーロスペース(スクリーン2)のベストポジションは?

スクリーンの見え方もそうだけど、音響を均等に味わえるほうが気持ちよく鑑賞できると思います。もちろんスピーカーは劇場全体に音が行き渡るように設置されていますが、音が集まってくる中央エリア。やっぱり【G9】や【F9】あたりになると思います。

岡崎真紀子(運営、配給、編成など)編

Q. 映画館の席選びの基準は?

絶対に通路側。人が固まっている環境で観るのがあまり好きじゃなく、片方は空いているほうがいいので。それに一番大きい理由は、背が低いので、あまり傾斜がない劇場だと高確率でスクリーンが前列の人の頭に被ってしまうんです。字幕が見えないことも……。左右のブロックの通路側だと目線に抜けが生まれるから、そこ一択という感じです。見上げる姿勢になると眠くなりがちなので、前方は避けています(笑)。

Q. ユーロスペース(スクリーン2)で鑑賞する際のお気に入りの席は?

一番好きなのは【J4】。ここだけ少し足元が広くなっているんです。あとシアター全体を俯瞰で見渡せるのも、劇場が大きく感じられていいです。端っこが好きな人は一定数いると思いますが、穴場という意味では後方3列あたりの壁側もわりと好き。空いていることが多いですし、端でも意外と見づらくないですよ。

※J4はインターネット販売対象外。劇場受付でのみ予約可能。

ユーロスペース(スクリーン2)J4の席からの見え方。

ユーロスペース(スクリーン2)J4の席からの見え方。

Q. ユーロスペースの座席について外部の人から何か感想を言われたことは?

昔、スクリプターの野上照代さんがお越しになったときに「座りやすかった」とおっしゃってくださいました。ユーロスペースは最近オープンした劇場に比べると、間隔が狭いので窮屈に感じるかもしれませんが、体が椅子に沈みすぎない作りなので疲れにくくなっていると思います。

北條誠人(支配人)インタビュー

──本日はユーロスペースの座席に関するあれこれをお聞きできればと思います。まず北條さんは“スクリーンの見やすさ”についてどう考えていますか?

見やすさって本当に人それぞれなので、何が基準かわかりづらい部分はありますけど、ユーロスペースは段差がある座席だからスクリーン自体は見やすいですよね。フラットだとそれだけでストレスになるので。映画館の見やすさは、天井の高さも関係してきます。天井が低いと圧迫感があるけど、うちはミニシアターの中では開放感があるほうだと思います。

──確かにユーロスペースはあまり窮屈に感じないです。

このビル自体もともと映画館仕様に設計されているので。床から天井まで5mあり、そこに3m大のスクリーンを設置しました。それでもユーロスペースとシネコンで同じ作品が上映されていると、シネコンのスクリーンはとてつもなく大きいんだなと改めて感じますね。

──北條さんのお気に入りの座り位置はありますか?

映写室のプロジェクターから伸びる光線の真下に座りたいタイプです。プロジェクターから水平に映し出された映像を真正面から観たいので。ユーロスペースのスクリーン2だと【E9】あたり。後方の真ん中が好きです。ただ音響を基準に考えると、中央に音が集まるように設計されています。映画を音で楽しみたい人は中央エリアに座って、すべてのスピーカーから出てくる情報を受け止めるのがいいんじゃないでしょうか。

ユーロスペース(スクリーン2)E9の席からの見え方。

ユーロスペース(スクリーン2)E9の席からの見え方。

──ユーロスペースはもともと桜丘町で開業し、2006年1月に円山町へ移転してきました。移転にあたって設計でこだわった点は?

一番はスクリーンの大きさです。とにかく大きいサイズへのこだわり。もう1つは、92席(スクリーン1)と145席(スクリーン2)どちらもスクリーンを同じ大きさにしたいと。92席だからって、145席の劇場よりスクリーンを小さくするという考えはありえませんでした。だから92席(スクリーン1)のほうがより大きさを感じられると思います。空間の広さは145席(スクリーン2)のほうがあるから、スピーカーの数も多いので音響がいいです。

──座席についてはどんな意見があったか覚えていますか?

フランスのメーカー・キネット社製で、実際にショールームへ行ってどんなシートにしようか選びました。まず色ですが、ユーロスペースは赤(スクリーン1)と青(スクリーン2)、シネマヴェーラはちょっと珍しい緑。やっぱり落ち着くのはこのあたりの色なんですよね。そして背もたれはプラスチックではなく木製なので、ある種の高級感、重厚感が感じられると思います。

キネット社のパンフレット。

キネット社のパンフレット。

ユーロスペースの座席。

ユーロスペースの座席。

──今から15年以上前のミニシアターにしては、確かに高級感がありますね。

映画館へ来る人たちは、家とは違う体験を求めているはずなので。ユーロスペースでの鑑賞体験が、スクリーンの大きさ・音のシステム・座り心地のすべて1つの記憶となって染み込んでいくのかなと。

──座席にまつわる近年の変化というと、ユーロスペースは長らく自由席制でしたが、2017年にインターネット予約システムを導入して指定席制になりました。常連さんの中には自由席だからこそのよさを感じていた人も少なからずいたかもしれませんが、実際に導入してみていかがでしたか?

劇場としては変更に葛藤がなかったわけではないです。確かに自由席にもよさはありましたが、世の中のニーズはもう指定席。前もって座席を予約できれば時間を無駄にしないという理由が大きいですね。予約なしで自由席の映画館にふらっと来られるのは、時間の余裕がないと難しいですから。

──何かきっかけがあったんですか?

「この世界の片隅に」(2016)の公開時、ユーロスペースはまだ自由席だったんですけど、109シネマズ二子玉川とテアトル新宿は指定席でした。作品がどんどん広まって1つの社会現象にまでなったとき、今は新しいシステムが求められているんだと痛感しました。一部のファン向けのマニアックな映画であれば、その人たちのルールで自由に観てもらえばいいですが、すぐそこのシネコンでも同じ映画を上映しているという状況であれば、自分たち(ミニシアター)が合わせなければ競うこともできない。だから「この世界の片隅に」の反省を生かして指定席を導入したあと、「カメラを止めるな!」(2017)がヒットしたときは本当に助かりました。家族そろって予約してくださるなど、お客さんが映画を観に来やすくなったのは大きいですね。

ユーロスペース外観

ユーロスペース外観

ユーロスペース

現在、「ウクライナから平和を叫ぶ Peace to You All」「裸足で鳴らしてみせろ」「時代革命」などが上映中。8月20日に「みんなのヴァカンス」が公開される。

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