コミックナタリー PowerPush - ナタリー×an 教えて!センパイ~あの頃のバイト生活~

押切蓮介の場合

初めての辞表提出事件

──では逆にいままでで一番つらかったバイトは?

人間関係が大変な職場が一番つらかったです。結局そこなんですよ。4tトラックにぎっしり詰まった折り畳み机を運ばされる仕事とか、体力的にほんときつかったけど、気持ち的には全然楽でしたね。試験官洗いの後、IT関係の企業で働いたんですけど、それはもう社員いびりがすごくて。だから母親は嘘つきですよ。あんなに円満退社だったのに、全然次につながってない。

──ディスカウントショップのときと同じく、またも社員さんのトラブル……。

押切蓮介

新入社員のいじめがもうすごくて、それを横目に仕事をしてました。人間ってこんなにひどいことができるんだなと思いましたよ。「お前はゴミだ!」って罵声を浴びせて、朝から夕方まで1日中ずっとゴミ掃除させられてたり。この人の母親がこの状況を見たら、死にたくなるんじゃないかってくらい。いろいろキツい現場は見てきましたけど、4、5カ月でこれはもうダメだと思って辞表を提出しようと思ったんです。辞表なんて出したことなかったんですけど、カバンに入れて出勤してね。そしたらその日、アルバイトが全員呼び出されて「すいませんけど、今日で辞めてください」って。

──えー!

僕以外の人は「生活があるのに困る!」って言ってましたけど、僕はほんとにうれしくて、スキップしながら帰りましたよ。

──結果的に円満退社(笑)。でも押切さん、本当にいろんな経験をされているので、もう耐性が付きすぎて鋼の体になっているのでは。

いやいや、弱まる一方ですよ。ビビりまくってます。

──もし読者でそういう職場に行ってしまった人がいたら、どうしたらいいと思いますか?

あっ、いい思い出になるからいいんじゃないですか?

マンガ家志望は絶対バイトしたほうがいい

──完全に人ごとじゃないですか(笑)。ではバイトの経験でマンガに生かされていることってありますか?

そりゃあ、いっぱいありますよ。マンガ家って、嫌なこともいいことも、全部作品にできるんで。マンガ家志望は絶対バイトしたほうがいいと思います。

──確かに社会経験があったほうが、マンガのネタには困らなそうですし。

押切蓮介

そうですね。あとね、ちゃんと働くっていうのは大事だなと思います。いろんな人に会ったりとか、嫌な思いもキツい思いもいっぱいしたほうがいいと思うし。僕はいまだにバイト時代の悪夢を見たりしますから。

──どんな夢を見るんですか?

いまマンガでちゃんと暮らせてるのに、連載しながらバイトに行くという夢を見るんですよ。シフト表っていうか、タイムカードが頭に残ってるんです。だいたいディスカウントショップかスーパー、IT企業あたりの夢を見ますね。楽しかった試験管洗いの夢は一切見ないです(笑)。つらいほうが記憶に残るんですかね。起きたとき「あー、夢でよかった」って思いますよ。でもつらくてもバイトはしたほうがいいし、働かないよりは働いてる人のほうが僕は好きです。あえてバイトしないっていう人もいっぱいいますからね。

──ああ、芸術家タイプは特に。

単純なことですけど、お金を稼ぐことが大事だって知らなきゃダメですよ。30過ぎても親からお金もらえるから平気って思ってる人、いっぱいいるじゃないですか。まあ稼ぐことが大事だと思いつつ、朝起きるとバイトに行くのがホント嫌だったりしますけど。

──では最後に、これからバイトしようとしている読者にエールをお願いします。

そうですね、お金を稼ぐということはカッコいいことだということを言いたいですね。僕は昔、母親に「ゲームしたいから100円くれ」って言ったら、「その一瞬でなくなる100円を稼ぐのがどれだけ大変か」って言われたんですよ。時給いくらで何分働いたら100円が稼げるのか、ってね。まあ結局その当時は計算できなかったんですけど(笑)。

押切蓮介
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「an」特設サイトではナタリーとの連動企画として、一般ユーザーから寄せられたバイトに関する悩みや相談にゲストが答えるコーナーを掲載。押切蓮介にはインタビューとあわせて、さまざまな質問に答えてもらった。

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押切蓮介「新装版でろでろ(1)」 / 2013年12月25日発売 / 905円 / 講談社
押切蓮介「新装版でろでろ(1)」

2003年から2009年までヤングマガジンにて連載されたホラーギャグマンガが新装版として復活! 霊感体質のため、奇っ怪現象に出くわしやすい悪ガキ中坊・耳雄が、なぜかオカルト耐性 が異常に高い耳雄の妹・留渦と、お化けに弱い耳雄の愛犬・サイトーさんとともに、悪霊や妖怪をバッタバッタとブッ倒していく。各巻に描き下ろしも収録。

押切蓮介(オシキリレンスケ)

押切蓮介

1979年9月19日生まれ、神奈川県川崎市出身。1998年に、ヤングマガジンにて「マサシ!!うしろだ!!」でデビューし、「でろでろ」などホラーギャグの分野で人気を博す。代表作に「ミスミソウ」「椿鬼」「ピコピコ少年」など。現在は月刊少年シリウス(講談社)にて「ゆうやみ特攻隊」、漫画アクション(双葉社)にて「焔の眼」を連載。月刊ビッグガンガン(スクウェア・エニックス)では、格闘ゲームを題材にした青春作品「ハイスコアガール」を連載している。6月16日発売のヤングマガジン29号では、ヤンマガ創刊34周年を記念して8ページの読み切りマンガ「はじめての担当(ヒト)」を掲載。押切と新人時代からの初代担当との関係が描かれる。


2014年12月26日更新