コミックナタリー PowerPush - ナタリー×an 教えて!センパイ~あの頃のバイト生活~

東村アキコの場合

1年間にわたってお届けしている、アルバイト・求人情報サイト「an」とナタリーとのコラボレーション連載企画「教えて!センパイ~あの頃のバイト生活~」。第5弾には、「メロポンだし!」「海月姫」「かくかくしかじか」など、多くの人気連載を抱える東村アキコが登場してくれた。大学時代から多くのアルバイトを経験してきたという彼女の、作家としてのルーツが垣間見えるエピソードが満載だ。

なおanの特設サイトでは、事前に寄せられたバイトに関する質問や悩み相談への東村による回答が掲載されているので、こちらも併せてチェックしてほしい。

取材・文/岸野恵加 撮影/小坂茂雄

レジを担当したら、マイナス3億円になっちゃった

──東村さんとアルバイトといえば、自伝的作品「かくかくしかじか」に登場した古本屋でのバイトをまず思い出すのですが、ほかにはどんなお仕事をしてきましたか。

東村アキコ

高校はバイト禁止だったので大学生からですが、いろいろやりましたよ。割烹のお運びさんから似顔絵描き、おじいちゃんたちが集まる絵画サークルのモデルとか……。美大だったこともあって、ちょっと変わったところばかりでしたね。

──その中で一番印象に残っているのは?

刺激的だったのは割烹ですかね。道場六三郎のお弟子さんのお店で、松井秀喜選手もよく来るような高級なところでした。もともとは着物に憧れて、着付けをタダで習いたいっていう動機で始めただけだったんですが。和食の本式の食べ方から器の並べ方まで、礼儀作法や日本女性としての美学を叩き込まれたのはいまでもすごく役に立ってます。おかみさんが超怖かったですけどね。「アキちゃんこの皿割ったら30万やぞ」って脅されたり(笑)。

──いまでも覚えてる、おかみさんに怒られたこととかありますか?

ありますあります! 接待なんかだと、4万円もする超高いコースを出してるのに、全然料理に手を付けずに帰る人って結構いるんですよ。あんまりだなあと思ってたら、閉店後に先輩が「いいよ!捨てるのもったいないじゃん、メロン食べちゃいなよ」って言ってきて。個室でバイト仲間みんなで食べまくってたら、めっちゃ怒られるって大事件がありました(笑)。

──気持ちはわかりますけどね(笑)。

あと失敗したことだと、古本屋でバイトしてたときにどうしても人手が足りなくて、1回だけレジに入ったことがあるんですね。そしたらレジ締めのとき、収支がマイナス3億円になっちゃって。

──えっ!?

私、機械がすっごい苦手なんですよ(笑)。そのデータがチェーンのほかの店舗に飛んじゃうみたいで、もう大騒ぎ。店長と副店長が徹夜で直してくれましたが、「マイナス三億円事件」として語り継がれて、私は2度とレジに触らせてもらえなかった(笑)。でも古本屋で出会ったバイト仲間やお客さんの要素は、私のマンガに出てくるオタクキャラに結構活きてますね。

人間観察力が一番マンガの役に立ってる

──「海月姫」の尼~ずとかですか?

そうそう、まややとか。あとはマニアックですけど、「主に泣いてます」のまさやのお父さん。

──3巻の表紙で強烈なインパクトを残した人ですね。

あの人ね、私が古本屋でバイトしたときに来てた、別の古本屋の店長がモデルなんです。顔や動きもあんな感じで。うちの店で買った本にちょっと金額乗せて、自分のところでまた売るっていうすごい人だったんです。

──それって、いわゆるせどりですよね……。

うちの店長がブチ切れて、「スパイに行ってこい!」って偵察に行かされたりしてました(笑)。

──きっと、強烈な人ほどマンガキャラクターにアレンジしやすいんでしょうね。

東村アキコ

そうですね。バイトしてる間に身に付いた人間観察力が、マンガを描く上でいちばん役に立ってる気がします。ちょっとだけバーでバイトしてたこともあるんですけど、40代くらいのおじさんがいっぱい来るお店だったんですね。そこでおじさんのノリを掴んだから、私おじさん描くの得意なんですよ。女のマンガ家さんって実はおじさん描けない人が多くて。イケメンにシワ入れただけ、みたいなのよくあるじゃないですか。

──確かに。

メガネのフレームや髪のカット具合ひとつとっても、おじさんらしさってあるんですよね。

──なるほど。それでいうと、東村さんはおじいちゃんおばあちゃんも、ディテールまで凝って描いてる印象がありました。「主に泣いてます」のトキばあとか、「かくかくしかじか」の児玉さんとか。

そうでしょ? それも絵画サークルのじいさんばあさんと散々遊んでたからなんですよ。土日のたんびに呼び出されて、そば打ち体験に植木市、社交ダンスのサークルにまで連れていかれたこともあります。友達が「アキコ、キャンプ行こうよ」って誘ってくれても、「ごめん私、その日おじいさんたちと一緒に温泉行くから……」と言って断ったり。

──そういうときに友達を優先しないのが素敵ですね。

いや、なんか断れないんですよ!(笑) 完全に孫扱いで。いま思うと、いろんな大人の世界を覗かせてもらった貴重な体験でしたね。モデルのバイト自体はもう絶対やりたくないですけど。20分同じポーズとってるのって本当にキツくて、私貧血で何度も倒れちゃったんです……。でも時給が5000円くらいですごく良かったから辞めるのは惜しくて、大学4年生のときは若くてカワイイ子たちをスカウトしてマージンもらってましたね。女衒みたいに(笑)。

ナタリー×an 教えて!センパイ~あの頃のバイト生活~

「an」特設サイトではナタリーとの連動企画として、一般ユーザーから寄せられたバイトに関する悩みや相談にゲストが答えるコーナーを掲載。東村アキコにはインタビューとあわせて、さまざまな質問に答えてもらった。

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東村アキコ(ヒガシムラアキコ)

東村アキコ

1975年10月15日宮崎県生まれ。1999年、ぶ~けDX NEW YEAR増刊(集英社)にて「フルーツこうもり」でデビュー。2001年、Cookie(集英社)で「きせかえユカちゃん」の連載を開始。ファッショナブルな登場キャラクターとライブ感のある話作りで人気を集める。2006年、モーニング(講談社)にて自身がデビューするまでの様子を家族のエピソードとともに描いた「ひまわりっ~健一レジェンド~」の連載を開始。代表作には、「ママはテンパリスト」「主に泣いてます」などがある。Kiss(講談社)にて連載している「海月姫」は第34回講談社漫画賞を受賞し、同誌では「BARAKURA」「東京タラレバ娘」も連載中。またCocohana(集英社)にて「かくかくしかじか」、モーニングにて「メロポンだし!」を連載している。ナタリーのマスコットキャラクター「ナタリー信子」と「マシュー」は同氏による描き下ろしである。