コミックナタリー PowerPush - ナタリー×an 教えて!センパイ~あの頃のバイト生活~

押切蓮介の場合

1年間にわたってお届けするアルバイト・求人情報サイト「an」とナタリーとのコラボレーション連載企画「教えて!センパイ~あの頃のバイト生活~」。第2弾には「でろでろ」「ハイスコアガール」などで知られる押切蓮介が登場し、マンガ家を目指しながらアルバイトをしていた頃の思い出など、貴重なエピソードの数々を披露してくれた。

なおanの特設サイトでは、事前に寄せられたバイトに関する質問や悩み相談への押切による回答が掲載されているので、こちらも併せてチェックしてほしい。

取材・文/坂本恵 撮影/小坂茂雄

高1にして社会の縮図を見る

──押切さんはエッセイマンガ「猫背を伸ばして」で、ディスカウントショップや清掃の仕事など、いろいろなアルバイト経験を描かれていましたよね。

ディスカウントショップは15歳か16歳くらい、高校1年生になってすぐに始めた初めてのバイトでした。

──それが初めてのバイトだったんですね! マンガでは社員さんからかなりいじめられてましたが、いきなり最初からつらい経験を……。

「猫背を伸ばして」新装版より。

はははは。いや、自分の中ではかなり印象に残ってるバイトだったんですよ。社員さんが体育会系の体制でね。僕は当時ヒョロヒョロだったんですけど、何kgもある重い猫砂を何度も運ばせたりして。そりゃあ楽しかったでしょうね、あの人たちは(笑)。社員さん同士の派閥争いとかもすごいんですよ。社員さん同士殴りあったりしててね。そういう社会の縮図を高校1年生のときに早々に見てしまって……。マンガに描いたのは全部実話です。

──当時の社員さんに読まれたら気まずくないですか。

いやあ、誰も読んでないでしょ(笑)。まあそんな職場だったんで、3日で辞めた人とかもいたし。「神ちゃん」って僕のあだ名なんですけど、友達がみんな「神ちゃんができるバイトだったら俺たちもできるだろう」って言って入ってくるんですよ。

──周りからナメられてたんですね(笑)。

でもね、そうやって友達もどんどん入ってきたんですけど、入っては辞め、入っては辞め。僕も社員さんに、すぐ辞めるだろうと思われてたみたいです。

──どれくらい続けてたんですか?

押切蓮介

1年ちょっとですかね。高校生にしては長く続いたほうだと思いますよ。そもそもは接客をしたくないという気持ちでやり始めたバイトだったのに、まさにこのディスカウントショップは接客仕事だったんですよ。

──お客さんからいろいろ聞かれたり。

そう。死ぬほど聞かれるんですよ! 後にも先にもこんなに接客したことはないってくらい。日曜大工の部門にいたんですけど、電動ノコギリのこと聞かれたりしてね。高校1年生の男の子がそんなのわからないじゃないですか。その度に嫌な社員さんに「すいません、あのお客さんが……」って聞きに行ったりして。つらかったですねー。

──そのディスカウントショップが一番つらいバイトでしたか?

いや、それが意外にそうでもないという。一番つらかったのは後で話しますけど。ディスカウントショップでは、最後は「君、社員になれよ」みたいに言われてたから買われてたんでしょうか。僕、商品を陳列するのがうまかったんですよ、妙に器用だったから。売れない商品をあえて周りに出して、真ん中に売れる商品を出したりしてピラミッドみたいに積んだり。そしたら「君は妙にセンスがいい」って言われてね。初めて社会的に褒められた経験ですよ。

「猫背を伸ばして」新装版より。

──悪いことだけじゃなかった。

あ、一番嫌だったのは、バイトに行くまでに自転車で40分くらいかかることですかね。知り合いに働いてるところ見られたくなかったので、わざと遠いところを選んだんです。そしたらその40分間で不良に絡まれたりとか、暴走族に追いかけられたりとか(笑)。僕は今日1日頑張って働いてきたのに、なんでこんな仕打ちを受けなきゃいけないんだ、と。がんばってもこういう報いがあるんですね、世の中。だからなるべくバイトは近いところでやったほうがいい、というのが教訓です(笑)。

専門学校の入学金が貯まらないからマンガを投稿

──ディスカウントショップの次はどんなバイトを?

次はまたスーパー。しかもディスカウントショップのときと同じく、日曜大工部門でした。それは5年くらいやってましたね。高校生のときから、卒業してからも。

──1週間にどれくらいの割合で働いてたんですか?

ほぼ毎日ですよ。週5、週6……、うん、相当やってましたね。高校が3時半くらいに終わって、5時から9時くらいまでバイト。って言っても4時間しか働いてないですけど。それで5、6万稼げたとしてもその半分を家に入れなきゃいけないんですよ。とにもかくにも家が貧乏だったんでね。高1で家に3万入れるって、結構大変ですよ。精神的にもね。

──そうだと思います。

押切蓮介

まあ残りの3万はほとんどゲームに費やしてましたけど(笑)。で、高校卒業してから絵の勉強をしたいと思って、デッサンの専門学校に行こうと思ったんです。でも専門学校行くにもお金がかかるじゃないですか。だからスーパーを午前中から夕方というシフトでバイトやりながら、マンガで賞金をもらおうと投稿し始めるんです。あべこべなんですよね。……わかります?

──えーっと、マンガを描くために専門に行こうとしてるのに……。

そうそう。マンガを描くために専門学校へ行こう、その学費を作るためにマンガ描いて賞金をもらおうと。超遠回りしようとしてたんですよ。結局気付いたらマンガ家になってたんで、専門学校には行かなかったんですけど。ちょうどヤンマガでギャグマンガがブームだったんで、絵が下手くそでも簡単にデビューできたという素晴らしい時代でした。

──もちろん才能あってのことなので、それだけではないと思いますけど(笑)。ではスーパーでのバイトが終わってから、家でマンガを描いてたんですか?

そうですね。でもスーパーだけじゃキツくなってきて、朝の5時から8時くらいまでのバイトも入れましたね。「でろでろ」に収録されている「漫画日記」に描きましたけど、宅配野菜を仕分けるバイトを始めたんです。家に入れないといけないお金も3万から5万に増えたし。

──あ、増えたんですね。

その頃、親父が出ていっちゃったことによって、母親と2人で切り盛りしていかなきゃならなくて。もう専門学校行くのに何年かかるんだろうと思ってましたよ。まだ入学金にも足りてない(笑)。

ナタリー×an 教えて!センパイ~あの頃のバイト生活~

「an」特設サイトではナタリーとの連動企画として、一般ユーザーから寄せられたバイトに関する悩みや相談にゲストが答えるコーナーを掲載。押切蓮介にはインタビューとあわせて、さまざまな質問に答えてもらった。

ゲストの“格言”色紙をプレゼント!ユーザーQ&Aページヘ

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押切蓮介「新装版でろでろ(1)」 / 2013年12月25日発売 / 905円 / 講談社
押切蓮介「新装版でろでろ(1)」

2003年から2009年までヤングマガジンにて連載されたホラーギャグマンガが新装版として復活! 霊感体質のため、奇っ怪現象に出くわしやすい悪ガキ中坊・耳雄が、なぜかオカルト耐性 が異常に高い耳雄の妹・留渦と、お化けに弱い耳雄の愛犬・サイトーさんとともに、悪霊や妖怪をバッタバッタとブッ倒していく。各巻に描き下ろしも収録。

押切蓮介(オシキリレンスケ)

押切蓮介

1979年9月19日生まれ、神奈川県川崎市出身。1998年に、ヤングマガジンにて「マサシ!!うしろだ!!」でデビューし、「でろでろ」などホラーギャグの分野で人気を博す。代表作に「ミスミソウ」「椿鬼」「ピコピコ少年」など。現在は月刊少年シリウス(講談社)にて「ゆうやみ特攻隊」、漫画アクション(双葉社)にて「焔の眼」を連載。月刊ビッグガンガン(スクウェア・エニックス)では、格闘ゲームを題材にした青春作品「ハイスコアガール」を連載している。6月16日発売のヤングマガジン29号では、ヤンマガ創刊34周年を記念して8ページの読み切りマンガ「はじめての担当(ヒト)」を掲載。押切と新人時代からの初代担当との関係が描かれる。


2014年12月26日更新