湯浅政明の短編特集、監督処女作から「アドベンチャー・タイム」まで制作背景明かす

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湯浅政明監督の特集上映「湯浅政明とアニメーションの動き 短編特集」が、本日3月16日に新潟・新潟日報メディアシップ日報ホールにて実施された。これは「第2回新潟国際アニメーション映画祭」のイベント上映の1つで、上映前後には湯浅監督が登壇し、各作品に関する制作の背景や観客からの質疑応答に答えた。

左から数土直治プログラムディレクター、湯浅政明監督。

左から数土直治プログラムディレクター、湯浅政明監督。

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「なんちゃってバンパイヤン」より。 (c) 1999 Production I.G

「なんちゃってバンパイヤン」より。 (c) 1999 Production I.G[拡大]

上映された作品は「なんちゃってバンパイヤン」「夢みるキカイ」「キックハート」「『アドベンチャー・タイム』 フードチェーン」「スライム冒険記 ~海だ、イエ~~」の5作品。1999年にTVシリーズ企画用として制作された「なんちゃってバンパイヤン」は湯浅監督の初監督作品だ。湯浅監督は当時を振り返り「いろいろ怒られたりしながら作りました」と笑いながら話し、上映後には「ネットで観るのと音が違っていいですね。(今観れば)いろいろとやばい内容がいっぱいあった(笑)」と感想を述べる。

湯浅政明監督

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同じく1999年に上映された「スライム冒険記 ~海だ、イエ~~」は、ゲーム雑誌・Vジャンプ(集英社)で連載されていたかねこ統「スライム冒険記」を原作としたアニメ。湯浅監督にとって最初で最後のフィルム作品だとのことで、セルと背景絵を使って撮影していたと言い「そのアナログ感、手作り感は楽しかったですね」と話した。また作品は「Vフェス’99」というイベントでの上映が決まっていたため劇場で見せることを意識して作っていたそう。久方ぶりの大画面での上映を楽しみにしている様子をにじませた。

「夢みるキカイ」より。(c)Genius Party

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「夢みるキカイ」はアニメスタジオ・STUDIO4℃の映像作家7人が集結したオムニバス「Genius Party」の一編。あたたかい家や優しいお母さんがからくり人形だったことに気づいた赤ん坊が、殺伐とした荒野に投げ出されるところからスタートする同作だが、その抽象度の高さについて「素で作るとこうなる」と湯浅監督は答える。「『マインドゲーム』のあとにエネルギーをテーマに自由に作ったのがこの作品です。子供の頃に自由でいられたのは世界を作っている大人たちがいてこそだったと思っていて、成長すると自分がその環境を作る側になっていくと感じていたので、その気分を投影していました」と述懐した。

「キックハート」ビジュアル(c)2012 湯浅政明・Production I.G

「キックハート」ビジュアル(c)2012 湯浅政明・Production I.G[拡大]

ドMの売れない覆面レスラーと、ドSの売れっ子覆面レスラーを描いた“SMプロレスコメディ”が「キックハート」。クラウドファンディングでの制作となった同作は、当時湯浅監督含む3~4人で制作していたと明かされる。また海外でのウケのよさには湯浅監督自身も想定外だったと述べた。またゲスト監督として参加した「アドベンチャー・タイム」では、食物連鎖の様子を描写。制作に至った過程としては「アメリカのスタジオに行ったタイミングで、なにかと話していたら制作に加わることになりまして。制作中もスタッフが僕の作品を観てくれていたみたいで、オープニング映像は『夢みるキカイ』に出てきた足の長い生き物を意識して作ってくれていたと聞きました」と当時の交流を振り返った。

「『アドベンチャー・タイム』フードチェーン」より。 (c) 2024 Warner Bros. Discovery, Inc. or its subsidiaries and affiliates. All rights reserved.

「『アドベンチャー・タイム』フードチェーン」より。 (c) 2024 Warner Bros. Discovery, Inc. or its subsidiaries and affiliates. All rights reserved.[拡大]

聞き手を務めた数土直治プログラムディレクターから、短編作品、シリーズ作品、長編作品の作り方の違いを聞かれた湯浅監督は「短編には短編の、シリーズにはシリーズの、映画には映画のよさがありますよね。短編だって1本の映画を作るくらいの気持ちが必要になってきますし」と答える。また手がけるジャンルも幅広さについても「特別意識しているわけではなくて。企画が外から来ればそれに答えるという楽しみがあったりしますね」と話した。

「犬王」ポスタービジュアル (c)2021 “INU-OH” Film Partners

「犬王」ポスタービジュアル (c)2021 “INU-OH” Film Partners[拡大]

音楽については、監督を務め始めた当初に四苦八苦していたことも告白。「『なんちゃってバンパイヤン』のときは発注の仕方もわからなくて(笑)。その後の『スライム冒険記 ~海だ、イエ~~』のときの梶浦由記さんだったり、『マインドゲーム』のときの渡辺信一郎さんから、発注の仕方や曲の出し方のアイデアを学びました」と述べる。また「犬王」での琵琶とロックの融合というアイデアは、作品に沿ってのものだったのか、それとも音楽表現としてが先だったのかと聞かれると「結果的にああいう音楽になりました」と回答。「大友さんとは音楽の感じでぶつかることもありました。最後に犬王がお面を取るシーンでは、大友さんとの意識の差もあったりしたのですが、直してもらって今の形になりました」と述懐した。

その後観客を交えた質疑応答が行われる。「監督として参加している湯浅監督は各工程にどれほど関わっているのか」と聞かれると、湯浅監督は「基本的には原画は持たないようにしています」と回答。「もともとアニメーターが監督をするのは嫌がられてしまいますし(笑)。めちゃくちゃ直したいときもありますけど、できるだけ自分がやるとは言わないようにしていますね」と話す。また湯浅監督の作品には動物が重要なキャラクターとして描かれることが多い印象だが、動物という存在をどのように捉えているのかと質問されると、「基本的にはカテゴリーにこだわっていないです。例えば男か女か、大人か子どもか、とかそういった部分ですね。なので“動物だからこうである”という表現はしないようには心がけています」と答えた。

最後に「アニメーションの楽しさは?」と問われた湯浅監督。「全然わからない(笑)」としながらも「(アニメを制作していて)楽しい瞬間も、めんどくさくて大変だという瞬間もあります。でも人がつくったものは何かしらを表現できるはずだと思っていますし、絵や音や色などいろんなものを使って表現できるところがいいと思っています」と話しイベントは締めくくられた。なお、本日3月16日は湯浅監督の誕生日ということもあり、湯浅監督が来場者に向けてお菓子をプレゼントする場面も見られた。

「第2回新潟国際アニメーション映画祭」は3月20日まで開催中。本日3月16日の18時40分からは「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」の上映が行われ、上映前には富野由悠季と出渕裕のトークショーが開催される。同イベントは現地観覧チケットが発売日に即時完売するほどの注目ぶり。その影響もあり、急遽イベントのオンライン配信が行われる運びとなった。

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