奉納式後には秋本と瓶子編集長、「こちら葛飾区亀有公園前派出所」担当編集の山中陽氏による、記者会見も実施。秋本は絵巻物制作について「両さんの子供の頃から今に至るまでの風俗とか流行を描いたら記念にもなるし、『こち亀』の歴史にもなる。それがずっと後世にも残るっていうのはすごいことだなと思って、やってみたんです」と解説する。連載と並行しての制作は大変だったと回想しながらも、「実際できあがってみると、引き受けてよかったです」と満足気に語り、「マンガというジャンル(の絵巻物)が、神田明神に奉納されて残るというのは、マンガにとってもうれしいことです。今日は本当に取材に来ていただいてありがとうございます」と謝辞を述べた。
質疑応答では、作中でも何度も登場する神田という地域の話題に。秋本は「(浅草生まれの)両さんの活動の場所を動かしてみようと思って、お寿司屋さんを舞台にすることに決めたんです。どの地域がいいかなとなったときに、下町情緒もあってすごく好きな場所だから神田にしようと。神田では浅草での両さんとは違った、家庭の両さんが描けるんです。纏が奥さん、檸檬が子供みたいな感じで。それまでのこち亀とはちょっと違う形で描けて楽しかったですね」と振り返った。また「今後どれくらい連載を続けて、2020年の東京オリンピックを迎える際にはどのような話を作りたいですか」との質問には、「日暮(熟睡男を)出したい感じですよね。今年は無事出たのでね(笑)。その辺のことはあとでゆっくり話したいと思います」とコメントした。
その後瓶子編集長から、9月17日発売の週刊少年ジャンプ42号で「こちら葛飾区亀有公園前派出所」が表紙と巻頭カラーを飾り、同作の連載第1話がオールカラーで再録されること、および同号にて「こち亀」の連載が終了することが明らかにされた。瓶子編集長は連載終了の経緯を「もちろん秋本先生は健康面にまったく問題はございませんし、『こち亀』を描きたくなくなったということもございません。ただ40周年とコミックス200巻を『こち亀』のよい区切りとして、新作に取り組みたいという秋本先生のお気持ちがありました。編集部としてもまだまだ『こち亀』を読みたいという気持ちは読者の皆さんと同じですが、最終的に先生の新たなチャレンジに敬意を表しまして(連載終了を)決めさせていただきました」と説明する。
瓶子編集長の発言を受け、秋本は「びっくりさせて申し訳ありません。さっきも『いつまで続きますか』と聞かれて本当に心苦しいんですけど。少年誌で作品が40年続くっていうのはありえないんですね。青年誌だと(読者が)大人の方なので、読み続けてくれる方がいらっしゃるんですけど、少年誌は読んでくれる方がどんどん変わるので」と語り始める。40周年、単行本200巻刊行というタイミングでの完結に対し「200冊も単行本を出させてくれた集英社と週刊少年ジャンプ編集部には、作家としていくら頭を下げても足りないくらいで、勲章のようなものです。両さんはお祭りごととかお祝いが大好きなので、40周年でみんなに祝っていただいているときにスッと消える感じが、作者というより両さんの引き際としていいと思って決めました」と思いを吐露。連載終了を意識し始めたのは1年ほど前だと振り返り、「そのころには『終わるかな』『どうするかな』と思いながら描いていて。この機会を逃すと両さん的にすごい中途半端になっちゃうかなと思っていました」と告白した。
また自身の言葉で連載完結の理由を伝えたかったという秋本。「最近では作品が完結しそうになるとネットでバーっと流れちゃいますよね。幸い『こち亀』は1話読み切りで、いつ終わるかはわからないので、よかったなというところはあります」「以前、嘘の最終回を描いたことがあったんですが、そのときは本当に読者に泣かれて。200冊描けば(1日1冊で)200日楽しめますし、読者も納得してくれるかなと思って、今日のおめでたい日に作者の声で『こういう理由で』と話そうということになりました」と会見を開いた理由を明かした。
「こちら葛飾区亀有公園前派出所」は週刊少年ジャンプにて1976年に連載がスタート。以降1回も休載することなく同誌に掲載され、テレビアニメ化やドラマ化、舞台化などさまざまなメディア展開がなされてきた。週刊少年ジャンプ42号と同日発売の単行本200巻には最終話までが収録され、それぞれに秋本から読者へのメッセージも掲載される。
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