まず本作のためにシルヴェスター・リーヴァイが書き下ろした2曲を披露。浦井と新妻は、反発しあっていたキャロルとメンフィスが惹かれ合うようになり、自分自身の気持ちに気付くナンバー「Where I Belong」をしっとりと歌い上げる。続いて浦井に加え、新妻に代わってWキャストでキャロルを演じる宮澤、イズミル役の宮野と平方、アイシス役の濱田めぐみが、4人の思いが交錯する楽曲「Unrequited Love」のハーモニーを響かせると、会場は大きな拍手に包まれた。
そして登壇者がステージ上に集合し、順に挨拶をしていく。まず細川がマイクを握るが、なかなか音声が出ないハプニングが発生。ここにすかさず伊礼と山口が駆け寄り、サポートするというひと幕に、早くも和やかな空気が流れる。細川は「私たちは、読者の皆様、特に少女の皆様に、愛や、思いやりや、優しい心、そして勇気を、作品を通じてお送りしたいと思い、生涯をかけて描いてまいりました。『王家の紋章』も連載40年になりまして、東宝ミュージカルにしていただけることになり、私たちとても喜んでおります。皆様の作られるミュージカルを楽しみに待ちたいと思います」と初のミュージカル化への喜びを語った。
また妹の芙~みんも、「長年姉と共に連載を描き続けてまいりまして、今年40周年となりました。この作品をミュージカルにしていただけることになりまして、大変幸せに思っております。最高のキャストの方たち、スタッフの方々に恵まれました。皆さん是非8月は帝国劇場にお越しいただければと思います。エジプトとヒッタイトを舞台に、素晴らしい音楽に乗せて、愛が、夢が、嫉妬心や欲望が、揺らめいて、皆さんのお心が満足していただけると存じます」と続ける。
思いの込められた原作者の言葉に、演出家の萩田は「少女マンガの王道といいますか、金字塔といいますか、愛と夢に溢れている作品。8月、帝劇をあまーい夢でいっぱいにしたいと思います。この愛らしい先生方のような、純真無垢な乙女心をきっと会場の皆様にも抱いていただけると思います」と意気込む。また「SF的な要素は魅力のひとつですが、キャロルとメンフィスが、お互いを求め合って広い世界を巡る物語。ちょっと神話的ですよね。リーヴァイさんがとてもロマンチックな曲を書いてくださいますので、2人の愛のさすらいに、無理なく連れてってくれるのではと思っております」と語った。
主演の浦井は「先生方のお話を聞いていて感極まった部分があって。本当に生涯をかけて紡いでいらしたこの作品が、初の舞台化ということ、これこそがロマンであり奇跡だと思います」と感動を口にしつつ、今作で帝劇初主演を果たすことについて「今はド緊張しています(笑)。たくさんの方の愛や支えにしっかりと応えていけるようにがんばりたいと思いますし、僕がミュージカルを初めて帝国劇場でやらせていただいたときなど、いつも優しく側で支えてくださった祐さん(山口)がいてくださることが、本当に光栄だと思っております」と山口を見ながら述べ、2人は向かい合って深々と礼を交わした。
今作がSKE48を卒業して以来初の舞台となる宮澤は、「今回ご一緒させていただくキャストさんの中でも、特に自分は一番がんばらなきゃと思っております。夢にも思わなかった素晴らしい場所に自分が立てることに感謝して、キャロルという可愛らしい女の子をしっかり、私らしく演じたいと思っております」とコメント。原作の大ファンだという新妻は「幼い頃から『王家の紋章』が大好きで、先生方の生声を聞けただけでさっきから武者震いをしております。私にとっては奇跡でして、作品に、お客様に失礼のないよう、キャロルとなって『王家の紋章』に命を捧げたい」と興奮した様子で、原作の魅力を問われると「語りだすと止まらないのでいかに手短にお話できるか……。キュンキュンできるポイントに的を絞っていいですか?(笑)」と語り出す。「私思うんです、メンフィスは少女マンガの歴史における、元祖俺様男子なんですね。強引で、でもちょっと優しくて、そして権力があり美しい容姿、女性の理想が全部詰まってる。壁ドン、顎クイとかありますけど、メンフィスは腕折っちゃいますからね。壁ドン、顎クイ、腕ポキですよ(笑)。手短にまとまらないな、これ。どうしよう。好きすぎて……まとめてきます、今度」と言うと、その原作愛の大きさに拍手が起こった。
帝劇初出演となる宮野は、「ガキンチョの頃から劇団ひまわりに入っておるんですが、この歳になって帝国劇場に立てるという。本当に、感無量です。夢見てた舞台ですし、今の自分がそれからどんな挑戦ができるのか、これから切磋琢磨してやっていくと思うのですが、今は楽しみで仕方ないですし、最後にはメンフィスに勝ってやろうと思います、そのくらいの気持ちで戦っていきたいなと思います!」と宣言し、浦井も負けないぞとばかりに拳を握ってみせた。また平方は原作の印象を「とても五感をくすぐるマンガだなと思った。温度だったり質感だったり感触、そういうものを丁寧に表現していきたい」とコメントする。
古代エジプトと現代を舞台とする本作で、ただ1人現代の人物として登場するライアンを演じる伊礼は「キャロルとメンフィスとラブラブしてるとき、僕はアイシスに求愛しようと思います。新しいドラマが生まれるのでは」と、アイシス役の濱田の肩に触れて笑いを誘う。濱田は「古代エジプトの作品に携わることが多くて、今回この作品をいただいた時に、すごく運命的なものを感じた。彼女の中にある神性、スピリチュアリティ、1人の人間として女性としての思い、苦しみ、そのような生々しい彼女の生き様を舞台上で演じられたらな、そして生き抜けたらなと思います」と思いを語った。そしてこれまでのそれぞれの発言を受けて、山口は「愛とロマンスが溢れる舞台を皆様とご一緒できる……わー素敵だなー!と思ってお話を聞いておりました。しかしふと我に帰ってみると、僕は(愛やロマンスには)何も関係ない、そういう役なんだと改めて感じました。皆様とワクワクしながら、この作品の誕生を待っていたいと思います」と述べ、キャスト陣からも思わず笑いが溢れていた。
ドラマCDを除くと初のメディア化となる「王家の紋章」。細川は「若い頃にテレビドラマとかをやりましたときに、テレビドラマのお話とマンガを描くスピードが違い、すごーく苦労したことがございまして。だから『王家の紋章』の場合は一切(メディア化の)お話があってもお断りしてきまして、誠心誠意マンガのほうに力を注ぎました。ですからこれだけ40年続いたんだと思います」とその理由を語りつつ、今回のミュージカル化を受けたのは「4巻までだったらどうかと言われまして、それなら……と。そしてプロデューサーの方がとても素敵な方で、ちょっとそっちのほうに参ってしまいまして、お話をお受けいたしました」と舞台裏を明かした。芙~みんも「いざキャストの方が扮装なさいますと、こっちが出演するようなドキドキ感があります。とても幸せです」と、自分が生み出したキャラクターに囲まれた心境を語る。
またリーヴァイの楽曲の魅力について、細川は「実はリーヴァイさんが手がけた『エアーウルフ』の音楽が好きで、いつも絵を描きながら聴いていたもんですからね、勇壮な音楽を描く方が、私の『王家の紋章』ではどういう音楽ができるのかと、すごく楽しみにしておりますの。(もらった音源では)メロディだけで言葉が入ってなかったりするから、これに言葉が入ればどんなにロマンチックになるかしらねって妹と話したところです。つい昨日も送ってくださった曲を妹と徹夜で聴きまして、今日は寝不足なんです(笑)。あんな勇壮な曲を作られる方がとても繊細な曲を作ってくださいますので、妹も私も、とても楽しみにしております」と期待に満ちた胸のうちを明かした。
最後に浦井は「世界初演として花開く『王家の紋章』のミュージカル、この夏帝国劇場にて大きく花火が打ち上がると思います。今先生方、各役者がおっしゃったことがすべてだと思いますし、それぞれのキャラクター、役者、関わってくださっているスタッフさん、たくさんの熱い思いがこもった熱い熱い作品になると思いますので。1人ひとりの心の中に素敵なメッセージが届いて、この夏の素敵な経験となるように。このカンパニーならではのミュージカルにできればと思っております」と挨拶し、記者会見は幕を閉じた。
その後行われた囲み取材には、浦井、宮澤、新妻、宮野、平方が出席。この日細川智栄子あんど芙~みんと顔を合わせ、喜んでもらえたという浦井は「原作者の方に喜んでいただけるのはこの上ない幸せ」と微笑んだ。宮野はオラオラ系のイズミルという役について「私生活から誰に対してもドSで行こうかな(笑)」と笑わせつつ、「普段は声をあてるほうなので、自分が扮装して演じるというのは不思議な感じですね」と、声優ならではの心境を口にする。そして初の帝劇出演となる宮澤と宮野に、浦井、新妻、平方が周囲でオススメの飲食店を紹介したり、「帝劇は楽屋が畳だからベッドは持ち込まなくて大丈夫だよ」とアドバイスをするなど、早くも和気あいあいとしたカンパニーの雰囲気をうかがわせていた。
「王家の紋章」は古代エジプトにタイムスリップした少女キャロルと、古代エジプトの王メンフィスの壮大な愛を描いた物語。ミュージカル版は、8月5日から27日まで東京・帝国劇場にて上演される。
ミュージカル「王家の紋章」
期間:2016年8月5日(金)~27日(土)
会場:帝国劇場
原作:
脚本・作詞・演出:荻田浩一
作曲・編曲:シルヴェスター・リーヴァイ
キャスト
メンフィス:
キャロル:
イズミル:
ライアン:伊礼彼方
ルカ:
ウナス:木暮真一郎
ミタムン:愛加あゆ
ナフテラ:出雲綾
アイシス:
イムホテップ:
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