会場にはバンド・デシネに造詣の深い藤原、「モンプチ 嫁はフランス人」などのエッセイマンガで知られるじゃんぽ~る西、ユマノイド・ジャパン代表のフレデリック・トゥルモンドが登壇。まずトゥルモンドが「いま『MANGA』は共通語に近いですが、フランスで日本のマンガのことを『日本のバンド・デシネ』と呼んでいた時代もあります。『タンタンの冒険』が一番有名なバンド・デシネなので子供向けのイメージがあるかもしれませんが、70年代半ばに大人向けのものという意識の転換が起こりました」とフランス語圏のマンガであるバンド・デシネについて説明した。
続いて藤原は「個人的な思い入れが入っているし、不完全ですが」と前置きをしながら画家・伊藤彦造らを根に、手塚治虫らを幹に据え、そこからさまざまなマンガ家の派生を記した手作りの樹形図をスクリーンに映し出す。GAROと書かれた枝の中腹にあるメビウスを指し、バンド・デシネの雑誌をアメリカで翻訳出版したHeavy Metalでメビウスの作品に出会った際のエピソードを語った。
じゃんぽ~る西がバンド・デシネを読み始めたのは1990年代前半。「当時、モーニング(講談社)がバンド・デシネを紹介し始めて、衝撃を受けました」と話す。そして持参した自身のコレクションを観客に見せながら「ブレとかを絵の具で表現していて、写真の表現に近い。日本のマンガでは思いつかない発想」と解説。
おすすめのバンド・デシネ作品を問われるとじゃんぽ~る西はホドロフスキー作、メビウス画による「アラン・マンジェル氏のスキゾな冒険」を挙げる。「タイトルどうなのって思いますけどね」と笑いを誘いつつ「すごく読みやすくて、手塚治虫のマンガを読んでいる感覚で読める。主人公は哲学者で崇高なことを考えているんですが、女好きなんです。実はホドロフスキー自身がモデルみたいなんですが、彼ほどの巨匠でもこんな煩悩があるんだなと勇気付けられます」と感想を述べた。藤原はジェリー・フリッセン「ルチャドーレス・ファイブ」を手に取り、「アニメ化してほしい作品。絵が親しみやすくて、線も鉛筆で書いたような、勢いのあるラインなんです」と絶賛。このほか3人は「ブラックサッド」や「時の鳥を求めて」などについてトークを展開した。
最後に藤原は「バンド・デシネは1枚絵のための手法で描かれていて、日本のマンガは映画のようにカット割りをする。バンド・デシネの文法に慣れるまで、ちぐはぐな印象を受けるかもしれないが、慣れてしまえば読みやすい」と読書を勧めた。なお電子書店のeBook Japanではユマノイド社のバンド・デシネ作品を販売中。藤原とじゃんぽ~る西おすすめの「ルチャドーレス・ファイブ」や「アラン・マンジェル氏のスキゾな冒険」もラインナップされているので、興味のある人はチェックしてみよう。
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菊池健 - MANGA総研 @t_kikuchi
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