HYDEが“後輩”THE ORAL CIGARETTESとタイマン、互いへの愛とリスペクトにあふれた福岡公演

HYDEが6月より開催している対バン形式の全国ツアー「HYDE LIVE 2022 RUMBLE FISH」の福岡公演が、7月2日と3日にZepp Fukuokaにて開催された。

HYDEにとって約3年ぶりのスタンディング形式のライブハウスツアー「RUMBLE FISH」には、ベテランバンドから注目の新鋭までの幅広い世代の9組がゲストとしてラインナップされている。ゲストはいずれもライブに定評のあるアーティストだが、“4戦目”となる福岡公演の相手としてHYDEが指名したのは、かねてからL'Arc-en-Cielおよび彼の影響を受けたことを公言するTHE ORAL CIGARETTES。この記事では先輩後輩対決が展開された2日間の公演のうち、初日の模様をレポートする。

赤い照明がステージを染める中、先攻として登場したTHE ORAL CIGARETTES。HYDEと同じ金髪姿で現れた山中拓也（Vo, G）は「THE ORAL CIGARETTESと申します」と恭しく挨拶をすると、まずはライブで恒例の“四本打ち”を始める。冒頭こそいつもの調子だった山中だが、途中から「（自分にとって）神様のライブに……ただのファンがやって来ましたの回」とガッツポーズを決め、憧れのアーティストと同じステージに立てる喜びを噛み締める。しかし、その佇まいに浮ついた様子はなく、鈴木重伸（G）、あきらかにあきら（B, Cho）、中西雅哉（Dr）が爆音を鳴らした瞬間に表情を変え、攻撃的なモード全開の「Red Criminal」でたちまちフロアを飲み込んだ。

英語のスラングで「ケンカ」を意味する「RUMBLE FISH（闘魚）」というツアータイトルに応じるように、オーラルが用意したのは自分たちの武器を凝縮したセットリスト。「懐かしい曲をやります」という山中の言葉に続いたのは、イベントやフェスではあまり披露されることのない「MIRROR」だった。自らのファンをも驚かせる1曲をライブの序盤に据え、激しいステージングを展開していた4人だったが、歌い終えるや否や山中が「気合い入りすぎて、ペグが折れたわ」と早々にギターを壊してしまったことを告白。そのチャーミングな発言で、オーラルファンはもちろんのことHYDEファンをも和ませた。

楽器隊のトリッキーなアンサンブルに乗せて、山中がハンドマイクで挑発的なリリックを繰り出す「ENEMY feat. Kamui」や、妖しくスリリングなサウンドでオーディエンスを惑わせる「PSYCHOPATH」といったナンバーを自由奔放にプレイしたオーラルの面々。後半に差しかかる前、山中は「最高……ああ、幸せ」とつぶやき、過去のHYDEとの競演を振り返る。過去にフェスでデュエットしたことや、自分たちの対バン企画に参加してもらったことを口にしつつも、この数年は声がかからなかったことを「（自分たちの）片想いですか？ おかしいなあ……」と小さな声で不安そうに口にする。しかし次の瞬間、「今日、ようやく呼んでいただきました！」と破顔。「我々も神とはいえ、神のあとを追う者としてかましていきたいと思います」と宣言すると、過去にHYDEが好きな曲として挙げていた「BLACK MEMORY」をはじめとするキラーチューンを間髪をいれずに轟音で奏で、オーディエンスを狂騒状態に導いた。この日オーラルが最後に届けたのはコロナ禍の中で発表されたバラード「Slowly but surely I go on」。山中はバンドを代表して、ファンや自分たちを支えてくれる人たち、敬愛するHYDEへの感謝の思いを述べつつ、これからもロックシーンを牽引する一員として飛躍していくことを誓う。そして4人は夜明けを感じさせるオレンジの光の中、「Slowly but surely I go on 照らしていくはずさ これがFirst Day」と未来への希望を込めたナンバーを丁寧に奏でた。

今回のツアーでは毎公演セットリストや演出を変え、公演ごとに異なるステージを見せているHYDE。オーラルの気迫のこもったパフォーマンスを受けて現れた彼は、怪しげな白いマスクを被り、CO2を撒き散らしてライブの狼煙を上げた。さらに、マスクを剥ぎ取ったあとは「LET IT OUT」「AFTER LIGHT」とダークサイドを打ち出したロックチューンを矢継ぎ早に投下。戦いの場であるステージを縦横無尽に動き回りながら、艶やかで貫禄のある歌声をライブハウス中に響かせた。

「（オーラルのライブを）ずっと観てましたが、なんてかわいらしいんでしょう彼らは。今回はライブがヤバい人たちを呼んでいるんですが、一番ヤバいバンドだと思ってます」。そう口にしたHYDEだったが、山中が勢い余ってギターを壊したことについて触れ、ステージの機材に視線を向け「傷はここかな？ 請求しよ（笑）」といたずらっぽく口にする。続けて「（今回のツアーの中で）一番緊張しなくてアットホーム……それが福岡でよかった。修学旅行に来たかのような気持ちでうれしい」と少年のように無邪気な表情を浮かべた。さらに、HYDEはなかなか収束しないコロナ禍に対しての率直な思いを口にしつつ、制限された環境の中でもライブを楽しむスタイルを提案。スピーカーの上に登ると拡声器を手にあらんかぎりの声でアジテーションし、すさまじい熱気でフロアを圧倒していく。

フェスシーズンにぴったりなBPMの高い新曲を経て、HYDEは「なかなかカオスですね。素晴らしい！ 本当に来てよかった」と笑う。そして、「奈良県からお越しの山中拓也くん」と山中をステージに呼び込んだ。軽やかにステージに足を踏み入れ、「かわいい後輩です」と挨拶する山中をHYDEは両手を広げて歓迎。力強く抱き締め合った2人は、L'Arc-en-Cielの代表曲「HONEY」を歌い出す。盛大なクラップが起きる中で、HYDEと山中は顔を寄せ合ったり、視線を重ね合わせたりしながら熱唱。相思相愛とも言えるセッションをたっぷりと披露したのち、2人は互いのパフォーマンスを讃えるように固い握手を交わした。その後、弾むような足取りで去った山中に向けて、HYDEは「最高でしょ？ でもステージに上がったら戦わないといけない。よきライバルです」と自身の背中を追ってきた後輩に賞賛を送り、「まだ知らない僕へと会いに行きたい」というフレーズが耳に残る「BELIEVING IN MYSELF」を全身全霊で歌い上げた。

なお、今後HYDEは「HYDE LIVE 2022 RUMBLE FISH」を大阪、愛知、北海道の3カ所のZeppで展開し、ツアー中の7月27日にライブ映像作品「HYDE 20th Anniversary ROENTGEN Concert 2021」をリリース。8月から10月にかけて「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022」「SUMMER SONIC 2022 TOKYO」「氣志團万博2022 ～房総魂～」「THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL 2022」といった大型フェスやライブイベントに出演する。またTHE ORAL CIGARETTESは、8月31日にライブBlu-ray / DVD「Hall Tour 2022『SUCK MY WORLD』」を発表し、10月22、23日に埼玉・さいたまスーパーアリーナで主催イベント「PARASITE DEJAVU 2022 ～2DAYS ARENA SHOW in SAITAMA～」を行う。