ジョン・ウー「この人の音楽が好きだ!」、新作の音楽手がける岩代太郎と対談

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「レッドクリフ」シリーズで知られるジョン・ウーと、同作で音楽を担当した作曲家・岩代太郎の対談が、本日1月20日に東京都内にて行われた。

ジョン・ウー(左)と岩代太郎(右)の対談の様子。

ジョン・ウー(左)と岩代太郎(右)の対談の様子。

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左からジョン・ウー、岩代太郎。

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この対談は、ウーの監督作「THE CROSSING / 太平輪(原題)」の音楽を岩代が手がけたことを縁に実現したもの。同作は1949年に起きた中国の旅客船・太平輪号の海難事故をもとに、3組の男女の愛を前後編2部作で描き出す。キャストには金城武、チャン・ツィイー、ソン・ヘギョ、ホアン・シャオミン、長澤まさみが名を連ねる。

「太平輪(原題)」より、左から金城武、長澤まさみ。(写真提供:China Film Group / Allstar Picture Library / ゼータ イメージ)

「太平輪(原題)」より、左から金城武、長澤まさみ。(写真提供:China Film Group / Allstar Picture Library / ゼータ イメージ)[拡大]

まず岩代が「THE CROSSING / 太平輪」のテーマについて尋ねると、ウーは「人と人のつながりがメインテーマです。生きる力と勇気、愛情など。世の中のいろいろなものはいつかは消えてしまうけれど、人間性と愛だけは消えずに続いていくと感じています」と、時折深く考えながら真摯に言葉を紡いでいく。

岩代が手がけた「THE CROSSING / 太平輪(原題)」のサウンドトラック「THE CROSSING / Original Scores CD Album」ジャケット。

岩代が手がけた「THE CROSSING / 太平輪(原題)」のサウンドトラック「THE CROSSING / Original Scores CD Album」ジャケット。[拡大]

現在、日本公開は未定だという本作。岩代は印象的なシーンについて「ススキが風になびく場面ですね。風に揺れながらもしなやかに動いていくそのショットが、映画を象徴するイメージショットになっていると思いました。人が運命に翻弄されながらも必死に生きていく姿が表現されていました」と言及し、「それをピアノで表現しなさいというのが(ウーからの)最初のオーダーでした」と当時を懐かしむ。ウーは「あのシーンは、とても詩的で映画の中の女性たちを象徴していると思います。ロマンスや愛情は、戦争や混乱の中では弱くて砕けてしまうものですが、倒れそうになってもまた立ち上がる。そしてもう一度生きようという思いが伝わるのではないかと。愛の象徴として描きました」と話し、「この作品は船の沈没シーンがあるので『タイタニック』を連想されやすいのですが、“愛”を『タイタニック』よりも重要なテーマとして扱っています。中華圏ではコメディ映画が流行っていますので、みんなに見落とされている部分があるのではと感じています。この作品も3Dで公開されたりとか……まあ冗談ですが(笑)。もし日本で公開される場合は、迫力のある3Dではなく、普通の2Dで大丈夫です(笑)」と続けた。

ジョン・ウー

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話題は、ウーが現在制作準備中の次回作「Manhunt(原題)」へ。高倉健主演で映画化された小説「君よ憤怒の河を渉れ」をもとにした本作に関して、岩代が「メインスタッフの多くは日本人なんです。美術が種田陽平さん、音楽は僕が担当します」と明かす。ウーは「『Manhunt』は、作品の一番大事なところは日本で撮るつもりです。私は日本を舞台にして、(登場人物たちが)日本語をしゃべる映画がずっと撮りたかったんです!」とにっこり。またウーは「1人の中国人と日本人が出会い、戦い、理解し合ってお互いを大事にする過程を描写する映画です。両国のチームが一緒に仕事をすることによって、勉強し合いながら作品に力を注いでくれたらうれしい」と力強く語った。

さらに岩代が「(自身が音楽を手がける)高倉健さんのドキュメンタリーフィルムを今作っているのですが、そのインタビューを(ウーが)受けられたんですよね? 妙なご縁を感じます」と、2014年に逝去した俳優・高倉健について話し出す。それを受けてウーが「高倉健さんにはずっと憧れていました。私がハリウッドにいた時期にはたまに電話をくださって。『大変なことがあったら言ってくださいね』とおっしゃっていましたね。他界されたときは本当に悲しくて、高倉さんを悼んで何かを作りたいと思っていたら『Manhunt』の企画が上がってきたので、『早く私によこせ!』と言いました(笑)。『駅・STATION』も撮りたかったんですよね……」と思い出話に花を咲かせる場面も。

岩代太郎

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終盤に「岩代の音楽のどのような部分が好きか?」と質問が飛ぶと、ウーは「最初に(岩代が音楽を担当した)『殺人の追憶』を観たときに、『この人の音楽が好きだ!』と思いました。『レッドクリフ』の作曲家を探していて、岩代さんと食事をしたときには辛いものを食べたのですが、気が合うなとすぐに感じましたね。どんな音楽を作りたいかを聞くこともなく、食事が終わったらすぐ契約をしたんです。あと、彼のように作曲家が撮影現場に来て雰囲気を感じてくれる人はこれまでいなかった」としみじみと述べる。岩代は毎日2千人ほどが動いていたという「レッドクリフ」の撮影現場に何度も足を運んだとのことで、「とにかく人数が多かったですね。ただ穴を掘っただけの場所がトイレだったり(笑)。現場の雰囲気、空気感を味わっているかどうかが、僕にとっては音楽を熟成させる上で重要なんです」とエピソードを披露した。

左から岩代太郎、ジョン・ウー。

左から岩代太郎、ジョン・ウー。[拡大]

最後に岩代が「『THE CROSSING』日本公開への弾みになれば。まずは音楽から楽しんでほしいです。ウー監督から『Manhunt』に関する衝撃発言もあるかもしれません」と3月27日に開催される自身のコンサートへの意気込みを述べる。そして同コンサートにゲスト出演を予定しているウーは「岩代さんの音楽の魅力を感じたい。映画を撮ったときのいい記憶を思い出すきっかけになると思います。新しいアイデアも浮かぶかもしれませんね」と晴れやかな表情で語った。

※記事初出時より一部内容に変更があり、修正しました。

あっっという間の生誕50周年記念コンサート 岩代太郎とアルスラーン戦記×アジア映画音楽

2016年3月27日(日)東京都 サントリーホール
開場 13:30 / 開演 14:00
料金:S席 7500円 / A席 6500円 / B席 5500円 / P席 5500円
※未就学児入場不可
<出演>
作曲・指揮:岩代太郎
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
ピアノ:三舩優子
ボーカル:矢井田瞳
トークゲスト:ジョン・ウー(予定)

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読者の反応

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promax @PROMAX_Inc

【岩代太郎 あっっという間の生誕50周年記念コンサート】
岩代太郎氏とジョン・ウー監督(「M:I-2」「レッドクリフ」)の対談が行われました。
コンサート(3/27サントリーホール)にも出演予定の監督との貴重な対談!
映画ナタリー https://t.co/w0jntJTydd

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