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福本伸行描くリラックマにざわ……クセ者揃いの画力対決

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西原理恵子と有名マンガ家が観客の前でイラストを描き、その出来映えを競う公開ライブイベント「西原理恵子の人生画力対決」が、新宿ロフトプラスワンにて9月15日に開催された。ゲストは三田紀房国友やすゆきかざま鋭二福本伸行の4名。

今回の対決には「首寝違えSPECIAL」との副題が付けられている。「首寝違え」とは顔の微妙な角度が描き分けられず、キャラクターが首を寝違えたようなポーズになってしまうマンガ家を指して、サイバラが揶揄した言葉だ。

拍手に迎えられて入場してきたサイバラと、司会進行役を務める担当編集者の八巻和弘氏は開口一番、「みんな下手ですからね、今日のゲストは」「わざわざ今日を選んできたお客さんは意地悪ですねえ」と悪態を吐き、ゲストを挑発。

AKB48「会いたかった」をBGMに招き入れられた1人目のゲスト三田は、乾杯もそこそこに、自身の持ちキャラを下描きなしで描く恒例の「ナマ描き」を求められる。三田は代表作「ドラゴン桜」より桜木建二を執筆。眉毛、目と素早く描いていく三田を見て「あれ、ここまではまともだぞ?」と感心するサイバラだったが、鼻を描き入れた途端に顔の向きが寝違えを起こし、一気にイラスト全体が三田ワールドに染まった。

これは「首寝違えSPECIAL」の名に恥じぬ試合が繰り広げられるはず、と期待が高まったが、最初のお題「借りぐらしのアリエッティ」で、三田は思いのほか可愛げのあるアリエッティを披露。一方のサイバラは洗濯バサミの髪留めなどディテールでは勝っているにもかかわらず、まったく似ていない。純粋な画力で三田がリードするという、予想しえなかった事態に場内はどよめいた。

続く「花形満と左門豊作」「織田裕二」「マジンガーZ」も、三田は器用に描いてみせる。予想外のクオリティに、背中にチャックがあり別人が入ってるのではないかと訝しがるサイバラ。連載マンガでは不自然なポージングが続出することを指摘して、「能率重視で、顔はハンコで押してるんでしょ」と詰め寄るも、三田はにやりと笑って「いいシャチハタがあるんですよ」と余裕の受け流しだ。

三田の勝利が続く中、2人目のゲスト「寝違え軍団の影の総帥」こと国友が参戦するも、1発目のお題「玉置浩二と青田典子」から大苦戦。「ラムちゃん」「カイジと和也」とお題が変わるたびに「描けない」と頭を抱えた。一方で絶好調の三田、「ちょっともう、浦沢さんを呼んで」と過去最強のゲストを指名し、もはやサイバラと国友は自分の敵ではないとアピール。第1部は三田の圧勝で幕を閉じた。

休憩時間を挟みスタートした第2部、「風の大地」でおなじみ、マンガ界の重鎮かざまがステージに上がる。なんでこんな不名誉な集いに呼ばれたのかと不満顔のかざまに対し、サイバラは「だって福本さんがアシスタントだったんでしょう」「あんな人を輩出してしまった責任というものがある」と召喚の理由を明かした。かざまも福本のことを言われてはグウの音も出ず、ようやく対決はスタート。

しかし待ち時間で酔っ払ってしまったかざま、サイバラの嘘を真に受けて、パンチパーマの「島耕作」を描いてしまう。さらにはパンチパーマを描くのに飽き、サイバラに手伝わせる始末。またお題「キティちゃん」では、不肖の弟子・福本が過去の画力対決で描いた壮絶な答案がモニターに映されると、「な! 俺があいつをクビにした理由がわかるだろ!」と全力で吐露した。

お題に福本の代表作「カイジ」がコールされると、「俺にあんな下手くそなの描かすつもりか」と言うや、かざまは皮肉をこめて左手でイラストを描き出す。しかし「左手で描いてもあいつより上手い」と宣言したとおり、出来上がったイラストは、迫力あるなかなかの仕上がりだ。サイバラも「やっぱり上手い人が描いたらダメだ」「お里が出ちゃう」と、かざまの画力を全面肯定。

ここで4人目のゲスト、福本が登場。かざま・サイバラの前で「カイジ」のナマ描きを行い、圧倒的オリジナリティで場内を沸かせた。「『ベルサイユのばら』のオスカル」で火蓋が切って落とされた師弟対決だが、師匠かざまは「なんでそんなに時間がかかるんだ!」と福本を叱りつけながら、ものの2、3分で描き終えてしまう。そんなかざまが披露したのは、まさかの「カイジ風オスカル」という反則技。ざわ……ざわ……という声が客席にこだました。

対決の終盤では第1部のゲスト三田・国友が呼び戻され、豪華すぎる大混戦が展開された。しかしお題に対する理解不足に技量的な問題が加わり、全員がアナーキーな回答を連発。中でもゲスト陣を困らせたのがお題「リラックマ」だ。「リラックスしたクマ」というぼんやりした認識しか共有されないまま、執筆に突入してしまった。

珍回答が続く中、やはり異彩を放ったのは天上人・福本。スクリーンに映し出されたジャンプするカピバラ風クリーチャーに、会場は阿鼻叫喚の坩堝と化す。「なんでジャンプしてるの!」と問われると、「リラックスを表現した」と主張。「マンガでジャンプは驚いたときの表現!」「リラックスしてる様子描いて、って言われたら飛ばすんだ?!」と総突っ込みを受ける。

そしてエンディング。三田の意外な実力が絶賛される中、最初は「首寝違えSPECIAL」に難色を示していた重鎮かざまも「描いてみたら結構、俺も寝違え軍団だな」と苦笑い。一方、今日こそ絶対勝てると踏んでいた西原は、「更なるもっと描けない人を開拓します」と宣言。「首寝違え軍団」を超えるクセ者は現れるのか。今後の対決への期待を高めつつ、イベントは閉幕した。対決の一部始終は、後日ビッグコミックスペリオール(小学館)の「人生画力対決」にて、数回にわたり掲載される。

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