「マンガは過程を評価されるもの」長崎尚志が原作者を志す人へ心構え語る

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マンガ原作者・長崎尚志による講座「本気でマンガ原作者を目指してみないか?」が、去る7月30日に小学館にて実施された。

長崎尚志による講座「本気でマンガ原作者を目指してみないか?」の様子。

長崎尚志による講座「本気でマンガ原作者を目指してみないか?」の様子。

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これは小学館によるカルチャースクール「小学館カルチャーライブ!」の企画の1つとして行われたイベント。ビッグコミック、少年サンデー、ビッグコミックオリジナル、ビッグコミックスペリオール、ビッグコミックスピリッツ(いずれも小学館)などの編集者や編集長を務め、その後独立して「MASTERキートン」「PLUTO」「BILLY BAT」「ディアスポリス-異邦警察-」など、数多くのヒット作の原作やプロデュースを務めてきた長崎が、マンガ原作者を志す人へ向けたトークを展開した。

長崎尚志

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マンガ原作者になる素質として「小説や映画を中毒のように見続けられるのが苦痛でないか」「面白い作品に接したときに、『これより面白い作品を書きたい』と思えるか」「創作をすることが楽しいか」などを挙げ、「数ある物語を自分の中で分類して、数式として捉えられるかがマンガ原作者の条件」とも話す。「『南極物語』と『キリング・フィールド』が同じ物語だとわかる人」など、具体的な例を交えながら説明が続けられる。

「創作は模倣」と語る長崎は、「ゼロからものを考えた人って、僕は見たことがない。レオナルド・ダ・ヴィンチがゼロからものを考えたんじゃないかと言う人がいるけど、彼の伝記をちゃんと調べると、彼の前にも彼と同じものを考えた人っていっぱいいるんですよ。彼には師匠も居るから、進化させているだけ」と述懐。そして「自分で『すごい話を思いついた、天才だ』と思う人がいるかもしれないけど、それよりうまい話が絶対あると思わないと原作者としてはやっていけない」「創作は模倣の先にある進化。ゼロから物語を思いつくことはあるけど、知っていて模倣するか、知らなくて模倣するかの差でしかない」と考えを語った。

そのほか原作者になるために大切なこととして「読者の心が読めるかどうか」を挙げる。「だいたいの読者は1話目を読むと最終回を予想するんです。そして自分の思った通りの展開に話が進んでいくと作品をバカにする。ところが、自分の思った通りの展開に進まず、自分の思った通りのラストにならないとその作品を嫌いになるんです。一番好きなのが、予想外の展開で話が進み、最後だけ自分の思った通りになる作品」と述べ、「マンガは小説と違って、過程を評価されるもの。小説は書き終わった1冊の本に賞が与えられるけど、マンガは物語の途中で面白い作品に賞が与えられる」と“マンガの宿命”を口にした。

長崎尚志による講座「本気でマンガ原作者を目指してみないか?」の様子。

長崎尚志による講座「本気でマンガ原作者を目指してみないか?」の様子。[拡大]

ヒットマンガの法則については、「はっきり言いますが、ないです」ときっぱり。「当たるも当たらないもマンガ家のおかげです。我々にとってマンガ家は神様みたいな人で、すごく面白いシナリオを書いてもマンガ家がつまらなくすることもある。すごくつまらないシナリオが、あるマンガ家にかかると100万部いったりすることもある」とコメント。「テレビや映画で例えると、原作者は脚本家。編集者はプロデューサーで、残りの監督、俳優、カメラ、音楽を全部マンガ家がやっている。主役はマンガ家」と論じた。

また長崎は「何かを持っている人より、持ってない人のほうがいい原作を書く。弱者がどう成長していくかがマンガの基本」と述べ、「自分を過大評価して『偉い』と思ったら負け。『自分はすごい』と思うと絶対にダメになるというのは、恐怖のように持っていてください」と受講者に語りかける。最後に「これは本気で受け取らないでほしいんだけど、性格がいい人よりも悪い人のほうが原作者に向いている。なぜかというと、物語では悪意を持つ人を書かないといけない。社会生活において性格の悪い人はいい人の振りをするから、いい人のことは書ける。だけどいい人は悪い人のふりをすることがないから、悪い人のことがわからない。だから自分で性格がいいと思う人は、原作者に向かないと思います」と説明した。

そのほかにも講座では編集者との付き合い方などが語られ、受講者からの質問にも答えられていった。

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読者の反応

野田草履P @nodasori2525

「読者の思った通りの展開に話が進んでいく漫画はバカにされる」
「読者の思った通りのラストにならない漫画は嫌われる」
「一番評価されるのは、予想外の展開で話が進み、最後だけ読者の思った通りになる漫画」
https://t.co/eipv4yPZeK

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