大橋裕之が主演映画で「ギャラもらってない」と、いましろたかしら制作陣にぼやく

大橋裕之が主演を務めた映画「あなたを待っています」の先行上映イベントが、去る8月31日に東京・ポレポレ東中野にて開催。会場には大橋をはじめ、原案・企画のいましろたかし、監督・脚本のいまおかしんじ、プロデューサーの松江哲明と山下敦弘が登場した。

まず壇上ではこれまでマンガ家として活動してきたいましろの、映画制作に至った経緯が語られる。いましろは、松江に「かねてより映像制作に興味があり、制作会社を作りたい」と相談を持ちかけていたという。松江は「山下くんと僕は、絶対にやめたほうがいいから説得しようとした。そしたら今まで描いたマンガを原作に使っていいからと言われて、それはすごいなと。『山田孝之の東京都北区赤羽』の監督印税が入った頃だったので、山下くんと2人でお金を出し合おうということになった」と明かす。続けて山下は「いましろさんには予算が集まったらそこからお金を抜いて東京を出るという邪な野望や、お金がもうかるんじゃないかという思いがあった」とコメントし、笑いを誘う。

いましろは「劇中のような『あなたを待っています』という言葉ではなかったけれど、街でああいうメッセージが書かれたプラカードを掲げている人が実際にいて、そこから話を組んでみようかなと思った。『タクシードライバー』が元ネタで、かわいそうな女の人を勝手に助けたら自分が気持ちよくなるかなって」と、創作秘話を披露。そして「自主映画を作るには、誰かが1歩前に出ないと始まらないと実感した。映画が完成したのは、松江くん、山下くん、いまおかくんの交渉力のおかげ。3人がいなければできていない」と感謝の念を示した。

また昔から、いましろのファンだったといういまおかは「マンガの『デメキング』を勝手にパクって、1998年に怪獣物のピンク映画『痴漢電車 弁天のお尻（別題『デメキング』）』を作った。初めていましろさんに会ったときに結構怒られたんだけど、いましろ原作を映画化できるなんて」と感慨深げな様子。松江は「いましろさんのマンガ『原発幻魔大戦』のように、いましろさんが今一番出したいメッセージやエネルギーがふわっと出ている映画でとても好き」と感想を語ると、山下も「いまおか＆いましろコンビの映画が観たかった」と話し、次々にいましろ愛を炸裂させる。

そして最初は出演を断っていたという大橋からもコメントが。撮影を振り返り、「大変だったけど楽しかった。3万円を出資して、撮影最後の日に封筒に入った2万7000円とヒートテックをもらった。僕だけギャラをもらっていない（笑）」とぼやくと、すかさず制作陣から「3万円は別に返します」とフォローが入った。

舞台挨拶の後半は、壇上にキャストらが加わる。いまおか作品常連の川瀬陽太は「1日3000円で現場に呼ばれて、年末の飲み会で会費は3000円ですって言われた」とおどけると、柳英里紗は「私の好きな面白いアダルトたちが、面白いことをやるなと思って参加させてもらった」と喜びを語り、アットホームな雰囲気でイベントは幕を閉じた。

「あなたを待っています」は、東京から地方に脱出するため質素な生活を送り、日々バイトに時間を費やす男・西岡を主人公にしたヒューマンドラマ。マンガ家である大橋が映画初出演にして初主演を飾り、その脇を山本ロザ、吉岡睦雄、柳、川瀬らが固める。映画は9月24日よりポレポレ東中野にてロードショー。