LINEマンガのオリジナル作品「入学傭兵」のポップアップストアが、2月7日から25日まで、東京・LINE FRIENDS SQUARE SHIBUYAで開催される。これはLINEマンガとLINE発のグローバルキャラクターブランド・LINE FRIENDSのコラボレーション企画第1弾として展開されるもので、これまでマンガの中でのみ触れ合うことができたキャラクターたちが、今回のコラボによって特別感あふれる商品として誕生した。会場では100点を超えるグッズの販売や、作品の世界に没入できる体験型空間メディアゾーンが設置される。
体験型空間メディアゾーンで流れる映像には、主人公・帯刀壮馬の声として斉藤壮馬が出演。主人公と同じ名前を持つ斉藤が、臨場感たっぷりに「入学傭兵」の“壮馬”を演じている。コミックナタリーは、その映像のアフレコ現場を取材。台本に自らの解釈を加え、収録に真摯に向き合う斉藤の様子をレポート形式でお届けする。またアフレコ直後の斉藤にインタビューを実施。アニメの収録とはまた異なる、短い映像のアフレコで工夫するポイントや、「入学傭兵」の魅力などについて語ってもらった。
取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / ヨシダヤスシ
原作:YC 作画:rakhyun
幼少期に遭った飛行機墜落事故で奇跡的に生き残り、異国の地で傭兵として育った帯刀壮馬。10年の時を経て故郷に戻った壮馬は、2歳年下の妹と一緒の高校に編入する。しかしその高校で、妹は女子たちの僻みからいじめられていた。壮馬は「俺の家族に手を出すヤツはタダじゃおかない」と、妹を取り巻く不良たちに立ち向かっていき……。LINEマンガによる年間ランキングで2023年、2024年と2年連続1位(※)を獲得した。
※「LINEマンガ2023 年間ランキング」第1位
※「LINEマンガ 2024 年間ランキング(連載)」第1位
©YC・rak hyun/LINE Digital Frontier
「入学傭兵-THE PERFECT SOLDIER- POP-UPストア」概要
LINEマンガとLINE発のグローバルキャラクターブランド・LINE FRIENDSのコラボレーション企画第1弾。2月7日から25日まで、東京・LINE FRIENDS SQUARE SHIBUYAで開催される。入場は無料で、特設ページより事前予約が必要だ。
会場には作品の世界に没入できる体験型空間メディアゾーンを設置。約40坪の広々とした空間に、本編のコマを使用した映像が、壁と床を駆使して立体的に投影される。鬼気迫る音楽も相まって、まるで自分自身が主人公やナンバーズに救出されているようなドキドキ感を全身で味わうことが可能だ。帯刀壮馬の声は、TVアニメ「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」の緋村剣心役などで知られる斉藤壮馬が担当。偶然にも同じ“壮馬”という名前を持つ斉藤のキャラクターボイスとともに展開される、臨場感たっぷりの映像をお楽しみに。
また会場では「入学傭兵」の世界にLINE FRIENDSの商品開発力が加わった特別感あふれるグッズを多数販売。壮馬らが着用しているSW Corp.のジャージやSW Corp.のロゴ入りキャップといったファッションアイテムから、壮馬の学生証や社員証、傭兵時代の壮馬たちの描き下ろしイラストを使用したアクリルスタンドやキーホルダーなど、100点以上のアイテムが揃う。さらにグッズを購入した人には、原作者のYCと作画担当のrakhyunによるサインプリント入り“サンクスポストカード”を1枚プレゼント。購入品は先着順で限定デザインショッパーに入れて渡される。さらに、8000円以上の購入で見る角度で絵柄が変わるレンチキュラーポストカードを全4種の中からランダムで1枚配布。購入特典はすべて数量限定で、なくなり次第終了となるため、気になる人は早めにゲットしよう。
期間:2025年2月7日(金)~25日(火)
会場:東京都 LINE FRIENDS SQUARE SHIBUYA B1F
※入場は無料で、事前予約が必要。
LINEマンガ入学備兵©YC・rak hyun All rights reserved.
本格的な冬の訪れを感じさせる、凍てついた空気が頬を刺し始めた12月のとある昼下がり。都内のスタジオにて「入学傭兵」ポップアップストアの告知用プロモーション動画および会場で上映されるイマーシブ映像の音声収録が行われ、主人公・帯刀壮馬のキャラクターボイスとナレーションを務める斉藤壮馬がアフレコに臨んだ。
コミックナタリー取材班がスタジオに足を踏み入れたとき、斉藤はすでにブースに入って入念に台本をチェックしている最中だった。ほどなく収録開始予定時刻を迎えると、ブース内の斉藤のもとにLINEマンガスタッフと音響スタッフが現れ、今回の企画趣旨や演出方針についてのブリーフィングが行われた。
「ナレーションは斉藤さん本人というよりはキャラクターの延長線上という感じで、すごく差をつける必要はないです」などの指示が伝えられ、斉藤はその言葉1つひとつに注意深く耳を傾ける。時折ちょっとした確認事項などについて斉藤からも意見が出され、特に問題なく意識のすり合わせが完了したようだ。そしてマイク位置が手早くセッティングされるとブースには斉藤1人だけが残り、スタッフは調整ルームへ移動。各自が持ち場へつくと、さっそく収録が開始された。
まずは約30秒尺の告知用プロモーション動画に斉藤の声を収録していく。この映像は、「入学傭兵」序盤のシーンを抜粋して作品の大まかな内容を伝えつつ、ポップアップストアの開催を告げるためのもの。内容確認のためスタジオ内に映像がひと通り再生されると、ブース内で台本を手にした斉藤は本番さながらにマイク前に立ち、タイミングを計りながら、読みあげるセリフや文言をぽつぽつと声に出してモニターに視線を集中させる。その表情はまるで物陰から獲物を狙う獰猛な獣のように真剣そのものだ。
映像が終わると、斉藤から調整室へ向けて「セリフとナレーション、分けたほうがいいですかね?」との声が飛んだ。言葉が重なるタイミングはないものの、明らかにテンション感や距離感が異なる表現になることもあり、別々に録るほうが自然だろうという判断だ。もちろんその場で瞬時に演じ分けることなど彼にとっては造作もないだろうが、この日は時間的にも比較的余裕があり、わざわざスリリングな収録方法を採用する必然性はどこにもない。効率よく最善の結果をもたらすであろうことが容易に想定できるその提言はスタッフにも受け入れられ、壮馬のセリフを先に録ってキャラクター像をしっかり固めてからナレーション録りへと進める方向で現場の方針がまとまった。
次は、早くもテストを兼ねた本番だ。再び映像が再生されると、斉藤はナレーション文言を省略してセリフ部分のみを読みあげていき、画面上の壮馬に命を吹き込んでいった。するとLINEマンガスタッフから「重厚でキレのある“クールな壮馬”と、妹に語りかけるときの“優しい壮馬”のコントラストがもっと明確でもいいのでは」との見解が示される。それを踏まえたリテイクが行われ、斉藤の声帯からはリクエストどおりのニュアンスへと装いを変えたセリフが発せられる。調整ルームで耳をすましていたスタッフらは感嘆の表情を浮かべ、セリフパートのリテイクはあっという間にOKの判断が下された。
続くナレーションパート収録も滞りなく進行。セリフ録りの段階ですでにキャラクター像が固まっていたこともあり、“クールな壮馬”が読みあげる体のナレーションには一切の非の打ちどころがなく、結果として一発OKという順調すぎる進行をもたらすこととなった。
完成PVはこちら!
続いて、イマーシブ映像の収録へ。こちらはポップアップストア内に設けられる4面スクリーンで上映される没入型の映像コンテンツで、壮馬の壮絶な戦いが描かれる。言うまでもないが収録スタジオに4面スクリーン設備が用意されているはずもないため、ここでは簡易版の映像が使用された。先ほどと同様、内容確認のため映像がひと通りモニターに流されると、斉藤はセリフのタイミングをうかがいながら画面を注視。ひと通り確認を終えると、とあるセリフのニュアンスについて「台本には『!』がついているんですけど、映像を観る限りでは淡々と言っている感じにも思えまして……」と自身の解釈を述べ、スタッフと認識のすり合わせを行った。
協議の結果斉藤の案が採用されることとなり、すぐさま本番へ。収録はいたって順調に進み、ちょっとしたニュアンス表現の部分で2カ所ほどリテイク要望が出たものの、さほど難航することもなく完了。長尺のムービーではあったが、終わってみれば1本目の映像とそう変わらない所要時間で録り終える結果となった。もともと余裕を持たせたスケジューリングではあったものの、実際に予定時刻よりも大幅に巻いて進行しているのはさすがのひと言だ。
そして最後に、ポップアップストア来場者に呼びかける諸注意のナレーション音声を収録。これはイマーシブ映像の上映前、フォトタイム、上映後に使用される案内音声で、斉藤本人として読みあげる通常パターンと、壮馬として語りかけるキャラクターバージョンの2種類が録音された。後者のニュアンスの出し方に若干苦戦する様子も見せた斉藤だったが、総じてスムーズに進行。調整ルームでは、スタッフの口から「壮馬が恥ずかしそうに『写真を撮らないか』って言う感じがリアルでかわいいですね」などの賛辞が飛び交う。リテイクが入ることもなく、これにてすべての音声収録がつつがなく終了した。
※ナレーション音声による案内は上映前、フォトタイム、上映後の計3回。2月7日から13日までは斉藤壮馬が読み上げるパターン、14日から25日までは帯刀壮馬が語りかけるパターンが流れる。
“映像の力”を信じることが大事
──今回の「入学傭兵」ポップアップストアに関連した映像に斉藤さんが起用されたのは、以前にコミックナタリーで行った「ヨコ読みマンガ愛好家はタテ読みマンガにもハマれるのか?」という企画(参照:斉藤壮馬はwebtoonにハマれるのか?ヨコ読みマンガ愛好家がタテ読みマンガを読んでみたら…LINEマンガで大検証)で斉藤さんがお気に入り作品に「入学傭兵」を挙げてくださったことがきっかけだと伺いました。
ご縁がつながって非常にありがたいなと思いました。やっぱり好きなものとか面白いと思ったものについてポジティブな感想を言葉にして発信していくというのはとても強い力があるんだなと。言霊というものは間違いなくあると常日頃から思っているんですけど、それがまた実感できるような出来事になりましたね。
──斉藤さんは普段から好きなものをよく発信されているイメージがありますが、それがお仕事につながるというのはやはりうれしいことですよね。
そうですね。もちろん、なんでもかんでも仕事につなげたいと思ってやっているわけではないですけど(笑)。以前は“マンガ好き”という観点で記事に関わらせていただいて、そこから今度は本業である声優としての領域でまた作品に関わることができて、非常にありたがたいことだなと思っています。
──改めてになりますが、「入学傭兵」という作品のどんなところに魅力を感じていますか?
最初に思ったのが、まず非常に絵が美しいなというところ。プラス、序盤からかなりヘビーな話の展開がなされていく中で、主人公の壮馬くんが10年ぶりに妹とおじいちゃんに再会するという心温まる日常パートも描かれていて、いろんな角度から楽しめるストーリー性を持った作品だというところですね。いろんな読者がそれぞれに好きな点を見つけることができる、複合的な魅力があるのではないかと感じています。
──今日はそんな作品の魅力を伝えるための映像2本に音声を収録されました。映像の出来栄えについてはどんな印象を持たれましたか?
まずイマーシブ映像から言うと、僕個人としてはこれまでイマーシブ映像に声をあてる機会というのがまだそんなになかったので、シンプルに新鮮で楽しかったです。実際の会場では4面スクリーンに囲まれて鑑賞できるってことなんですよね? すごく没入感を味わえることは間違いないですし、多くの方に楽しんでいただける迫力の映像になっていると思います。もう1つの告知映像のほうは物語の冒頭部分が凝縮されていて、壮馬くんのクールな部分と妹思いな兄としての優しさがどちらも描かれていたので、これをきっかけに作品を読んでみようと思ってくださる方がまた増えそうだな、増えてくれたらうれしいなという映像でしたね。
──こういう単発の映像に声を入れる仕事というのは、続きもののアニメやゲームなどの収録とはだいぶ勝手が違うんじゃないかと想像します。その面白さや難しさはどんなふうに感じていますか?
面白さと難しさが表裏一体なのかなと思っています。例えばアニメーション作品で継続して役を演じていく場合、エピソードがいくつも描かれていく中で自分が実際に感情を動かして芝居をしていくことでキャラクターとのシンクロ率が自然に増していくんですけども、こういう単発映像の場合に要求されるのは瞬発力なんです。尺もそこまで長くはないので、与えられた時間が限られている中でいかに作品やキャラクターとシンクロして魅力をお届けできるか。そこが難しくもあり、非常にやりがいのある部分でもあるなと感じていますね。
──野球で言えば、スタメンで4打席5打席立つのと代打で1打席だけ立つのとではまったく向き合い方が違ってくるみたいなことですよね。
そうですね。やはりその分プレッシャーというか、背負うべきものはより感じます。ただ今日もすごく思ったんですけど、こういうプロモーションビデオって、数十秒から数分程度の限られた時間の中でその作品の世界観が無理なく掴めるよう、そもそも練り込まれて作られているんですよ。なので映像を観て感じたことや自分の中に生まれた感情を素直に受け入れながら、その映像に自分を適応させていくことが大事なのかなという気はしました。映像の力を信じると言いますか。
──なるほど。いい意味で自分だけで背負い込まずに、いわば僕ら受け手が映像を観て感じるのと同じようなものを感じながら、役者としてできることを上乗せしていくような感覚?
おっしゃるとおりで、受け手としての感覚も大事にしながら臨んでいる感覚はありますね。
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壮馬は決して一面的な人間ではない