WOWOW「劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season月 下弦の月」鈴木拡樹 / いのうえひでのりインタビュー|歴代で一番“弱い”かもしれない天魔王?悩みながら作った“超ワカドクロ”

2018年7月にスタートしたWOWOWの「12カ月連続放送!劇団☆新感線『花鳥風月極&名作選』」。この企画では、17年3月から18年5月にかけて東京・IHIステージアラウンド東京で上演された「髑髏城の七人」の6作品と、「劇団☆新感線 ゲキ×シネ」から選りすぐりの6本が12カ月にわたってオンエアされている。

3月23日には、若手メンバーが多数出演した“超ワカドクロ”こと「Season月」より“下弦の月”を放送。“下弦の月”にフィーチャーした本特集では、WOWOWの人気番組「2.5次元男子推しTV」の顔として知られ、“下弦の月”で天魔王役を務めた鈴木拡樹、そして演出を手がけた、いのうえひでのりのインタビューをお届けする。

[鈴木拡樹インタビュー]文 / 興野汐里
[いのうえひでのりインタビュー]文 / 熊井玲

「劇団☆新感線『髑髏城の七人』“花・鳥・風・月・極”」とは?

「劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season月」“下弦の月”の公演より。©︎2017『髑髏城の七人』月/TBS・ヴィレッヂ・劇団☆新感線、【撮影:田中亜紀】
「劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season月」“上弦の月”の公演より。©︎2017『髑髏城の七人』月/TBS・ヴィレッヂ・劇団☆新感線、【撮影:田中亜紀】

「髑髏城の七人」は、1990年の初演以降、さまざまなキャスト、演出で上演されてきた劇団☆新感線の代表作の1つ。東京・IHIステージアラウンド東京のこけら落としとして、2017年3月から18年5月にかけて5つのSeasonに分けて上演され、“基本形”となった“Season花”には捨之介役の小栗旬、無界屋蘭兵衛役の山本耕史、天魔王役の成河らが出演した。歌や踊りの要素を盛り込んだ“Season鳥”では捨之介役を阿部サダヲ、天魔王役を森山未來、無界屋蘭兵衛役を早乙女太一が務め、松山ケンイチが捨之介 / 天魔王の2役を務めた“Season風”には、無界屋蘭兵衛役の向井理らが出演。Wチーム制を採用した“Season月”では、福士蒼汰ら“上弦の月”チームと、宮野真守ら“下弦の月”チームが交互に公演を行い、話題となった。そして、5つのシーズンのフィナーレを飾った“Season極”こと「修羅天魔」は、捨之介も蘭兵衛も登場しない完全新作で、極楽太夫役を天海祐希、天魔王役を古田新太が務めた。

WOWOWが実施している「12カ月連続放送!劇団☆新感線『花鳥風月極&名作選』」には、これら5つのシーズンに加え、「劇団☆新感線 ゲキ×シネ」より「阿修羅城の瞳2003」「朧の森に棲む鬼」「蜉蝣峠」「蛮幽鬼」「シレンとラギ」「蒼の乱」の6作品がラインナップされている。

鈴木拡樹(天魔王役)インタビュー| “下弦”の魅力はチームワーク、仲間と共に導き出した答え

早乙女太一さんはこうやって魅せるんだ

鈴木拡樹

劇団☆新感線初となるWチーム制を導入した「劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season月」。“上弦の月”では初舞台の福士蒼汰、“下弦の月”では宮野真守がそれぞれ捨之介役を務め、鈴木拡樹は宮野率いる“下弦の月”で天魔王役を演じた。小栗旬、森山未來、早乙女太一らが出演した2011年上演の「ワカドクロ」よりもさらに若い出演者が多いことを受け、演出のいのうえひでのりは“Season月”を“超ワカドクロ”と表現している(参照:福士蒼汰&宮野真守が捨之介に!「髑髏城の七人」来春には新バージョンも)。また“下弦の月”には、天魔王役の鈴木、無界屋蘭兵衛役の廣瀬智紀、霧丸役の松岡広大ら2.5次元舞台で活躍するキャストが多数出演したことから、創客面でも新感線作品に新たな風を吹き込んだ。

鈴木は当時を振り返りながら、「稽古はいつも“上弦”から始まって、“下弦”のメンバーがその様子を見て、『なるほど、こういうふうに動くのか。じゃあ、こうしていこう』という流れで動いていたんです。“上弦”の稽古が先、というスタイルで始まったからかもしれないですけど、僕は比較的、先にやるよりあとのほうがいいかなって思っていて。というのも、もう一方のキャストが早乙女太一さんだったので、『ああ、こうやって魅せるんだ』って勉強になったんです」と、以前「ワカドクロ」で無界屋蘭兵衛を演じ、“上弦の月”で天魔王役を務めた早乙女を讃えた。

歴代で一番“弱い”かもしれない天魔王

「劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season月」“下弦の月”の公演より。©︎2017『髑髏城の七人』月/TBS・ヴィレッヂ・劇団☆新感線、【撮影:田中亜紀】

“Season月”で鈴木と早乙女が演じた天魔王は、髑髏城の主で、関東髑髏党を率いる首領。この天魔王は、かつて仕えた主君・織田信長に成り代わり、天下を手中に収めるという野望を抱いている。金の甲冑に身を包み、鬼気迫る演技で観客の視線を釘付けにした鈴木だが、もともとは蘭兵衛役で出演予定であったと、新感線のエグゼクティブプロデューサー・細川展裕はのちに語っている(参照:少年社中20周年 毛利亘宏×生駒里奈×松田凌 座談会 / 毛利亘宏×細川展裕 対談)。また1月に公開された「映画 刀剣乱舞」にて、17年の“Season花”で無界屋蘭兵衛を演じた山本耕史、そして鈴木の2人が、奇しくも織田信長と刀剣男士・三日月宗近として共演を果たしたことも記憶に新しい(参照:「映画刀剣乱舞」ビジュアル解禁、追加キャストに山本耕史&八嶋智人)。

鈴木は天魔王という役どころについて、「歴代の名優さんたちが演じてきた天魔王に引っ張られないように、ということを考えた時点で、すでにもう引っ張られているような気がするんです。僕も最初はそうだったかもしれないんですが、稽古や本番を重ねるたびに、『自分らしさは何だろう?』ということを考えました。脚本の変更によって生まれた部分でもありますが、例えば、揺らめく炎にかどわかされたかのように狂っていく姿や、鎧を着ることによって存在を大きく見せるところは、今までの天魔王とは違った描き方ができたんじゃないかなと思います。そういう部分では、歴代で一番“弱い”かもしれない天魔王という表現にたどり着けたことをうれしく思いますね」と手応えを見せた。

さまざまな可能性を感じた「髑髏城の七人」

若手からベテランまで、さらには新感線作品初参加の俳優から出演経験のあるキャストまで、さまざまな経歴を持つ出演者が集結した“下弦の月”。同チームのキャストにはこのほか、09年の「いのうえ歌舞伎☆壊<PUNK(パンク)>『蜉蝣峠』」に出演した木村了や、1990年の「髑髏城の七人」初演で極楽太夫役を演じ、新感線の本公演には17年ぶりの出演となる羽野晶紀、08年の「いのうえ歌舞伎☆號『IZO』」、09 年の「INOUEKABUKI SHOCHIKU-MIX『蛮幽鬼』」に出演した千葉哲也らが配された。鈴木いわく、「“下弦の月”の魅力の1つはチームワーク」。「稽古中、追い込まれて『このまま本番が来ちゃうのかなあ』と感じていた時期もあったんですが、役者同士で話し合う時間を持つことができたので、このチームのよさを実感できましたし、自分にとっても“最高の出演”になったと思います」と、苦楽を共にした仲間に信頼を寄せる。

鈴木拡樹

また鈴木は「髑髏城の七人」を通してさまざまな可能性を感じたといい、「先輩方がたくさんいらっしゃったので、『こういう役者になっていきたいな』という目標ができましたし、自分のこれからの可能性を感じることもできました。“花・鳥・風・月”、そして最後に“極”と、1つのテーマをもとに短期間で何作も上演できるという“可能性”は、『髑髏城の七人』ならではなのではないでしょうか」と改めて「髑髏城の七人」の魅力を説明。そして、「『12カ月連続放送!劇団☆新感線 花鳥風月極&名作選』、いよいよ“Season月”です。それぞれのSeasonを観た方も、新たな『髑髏城』を楽しんでください」と結んだ。

WOWOWライブ「劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season月 下弦の月」
2019年3月23日(土)19:00~

作:中島かずき

演出:いのうえひでのり

出演:宮野真守、鈴木拡樹、廣瀬智紀、木村了、松岡広大 / インディ高橋、中谷さとみ、中村まこと、伊達暁、肘井美佳、安田栄徳 / 羽野晶紀 / 千葉哲也 ほか

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WOWOWライブ「劇団☆新感線 ゲキ×シネ『蒼の乱』」
2019年3月12日(火)21:00~

作:中島かずき

演出:いのうえひでのり

出演:天海祐希 / 松山ケンイチ / 早乙女太一 / 梶原善、森奈みはる、粟根まこと、高田聖子、橋本じゅん / 平幹二朗 ほか

鈴木拡樹(スズキヒロキ)
1985年大阪府出身。2007年に放送されたテレビドラマ「風魔の小次郎」でデビュー。08年に「最遊記歌劇伝 -Go to the West-」で主演を務め、以降、「舞台『刀剣乱舞』」シリーズ、「舞台『弱虫ペダル』」シリーズ、「劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season月 下弦の月」「No.9-不滅の旋律-」「映画刀剣乱舞」などに出演。19年の「どろろ」では、テレビアニメ版・舞台版共に百鬼丸役を務める。4・5月に「舞台 PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice」、6月には「最遊記歌劇伝-Darkness-」に出演予定。