尾上松也をはじめ花形ずらり「初春大歌舞伎」に向け「めでたくご覧いただきたい」と意気込み

「壽初春大歌舞伎」が1月2日に東京・歌舞伎座で開幕する。これに先駆け、第1部「壽浅草柱建（ことほぎて はながたつどう はしらだて）」出演者の囲み取材が、昨日12月30日に同劇場内で行われた。

「壽浅草柱建」は、曽我十郎・五郎兄弟の敵討ちを描く“曽我もの”の舞踊を、新たに再構成した作品。本作には、尾上松也、中村歌昇、坂東巳之助、坂東新悟、中村種之助、中村米吉、中村隼人、中村莟玉、中村鶴松が出演する。なお彼らが例年出演していた「新春浅草歌舞伎」は、毎年1月に東京・浅草公会堂で上演されていたが、2021年は中止になった。

曽我五郎時致役の松也は「新春浅草歌舞伎」の中止について、「今まで年始の大きな目標としてやってきましたので、寂しい気持ちもあります」と触れつつ、「今回歌舞伎座で、こういう形で『浅草』メンバーで上演することを、演目の外題にも入れていただけてすごくありがたい。“曽我もの”の舞踊として、お正月にめでたくご覧いただきたいですね。この中では年齢も上なので、みんなを引っ張っていけるような五郎をやれたら」と言葉に力を込めた。

工藤左衛門祐経役の歌昇は「工藤といえば、大先輩方が勤められてきた大きな大きなお役。五郎と十郎をしっかりと受け切る度量の大きさが少しでも出せるようにしたい」と意気込みを述べ、「1月を浅草で迎えられないのは寂しいですが、歌舞伎座に出させていただけること、そして何よりこうして舞台に立てることが、本当にありがたいことだと感じています」とコメント。巳之助は「歌舞伎座で、この“壽浅草”という外題、そしてこの面々で上演させていただけることがありがたいですし、つたないなりにも、我々が何か1つのものを築き上げてこられたのかなと思います」と感慨を語り、自身が演じる小林朝比奈役を「道化の役として、ちょっとしたおかしみの振りもあります」と表現した。

小林妹舞鶴役の新悟は「舞鶴というお役は、女方でありながら、男勝りな部分もあるお役。お客様に心から楽しんでいただけるよう、おおらかに華やかに勤めたい」と思いを述べ、茶道珍斎役の種之助は「みんな個性の違ったお役で、演目自体が華やかですので、『お正月の歌舞伎座で歌舞伎を観たな』とお客様に明るい気持ちになっていただけたらいいなと思います」と話す。

大磯の虎役の米吉は「大磯の“虎”ということで、来年は丑年なので干支を先取りしてしまったな、というような感じがありますが（笑）」とほほ笑みつつ、「いわゆる立女方というお役ですから、大きさ、風格を出せるよう、少し背伸びをして先輩方の背中が見えるようなところに行きたい」と述べる。曽我十郎祐成役の隼人は「新春浅草歌舞伎」中止に対する寂しさを語り、「しかし、『この浅草メンバーでいつかは歌舞伎座で何かできたらいいね』という話をしたこともありましたので、ある意味夢が叶ったという思いもあります」と前向きな姿勢を見せた。

化粧坂少将役の莟玉は「今回こういった形で、歌舞伎座の舞台にお兄さん方と出演できるのは、大変うれしい。化粧坂の少将は、2013年の『新春浅草歌舞伎』で勤めさせていただいたお役。そのとき、私は『浅草』初参加でしたので、こうして同じ役に挑戦できることも、またご縁だなと思っております」と話し、喜瀬川亀鶴役の鶴松は「この中では『浅草』に出ている回数が1番少ないのですが、松也のお兄さんにお声がけいただき、お正月から歌舞伎座の舞台に立てるのを本当にうれしく思っています。浅草でお正月を迎えられないのは寂しいですが、私たちがやることは、どこの劇場に行っても同じ。お客様に楽しんでいただけるよう、しっかり勤めたい」と意気込みを述べた。

「壽初春大歌舞伎」には、「壽浅草柱建」のほか、第1部に市川猿之助らによる「猿翁十種の内 悪太郎」、第2部に中村鴈治郎らが出演する「夕霧名残の正月」と、中村吉右衛門が大星由良之助、中村梅玉が寺岡平右衛門を勤める「仮名手本忠臣蔵」、第3部に松王丸役の松本白鸚、梅王丸役の松本幸四郎、桜丸役の市川染五郎が登場する「菅原伝授手習鑑」、そして中村芝翫らが出演する「らくだ」がラインナップされている。公演は1月27日まで。