韓国の俳優
資料にない人物を演じた「空と風と星の詩人」
11月22日と23日に神保町エリアで開催された「K-BOOKフェスティバル 2025」。今年は「まじわる」をテーマに、特集企画「文学と映画」として上映会も実施された。パク・ジョンミンは今年俳優業を一時休み、自ら代表を務める出版社MUZEの活動に専念。本人いわく日本での登壇は今回が初めてだという。
2016年公開の映画「空と風と星の詩人~尹東柱の生涯~」は、韓国の国民的詩人・尹東柱(ユン・ドンジュ)を主人公とした伝記ドラマ。パク・ジョンミンは彼に大きな影響を与えた宋夢奎(ソン・モンギュ)を演じ、多くの新人賞を獲得した。最初に台本を手にした際、実は宋夢奎の存在を知らなかったと明かしつつ、「読み進めるうちに胸が熱くなったのを覚えています」と振り返る。人物に関する記録がほとんど残っていない宋夢奎を演じるにあたり、頼れるのは尹東柱の評伝だけだった。「宋夢奎さんが勉強したことを自分も学ぶうちに、もっと知りたいという思いが強くなり、彼らが暮らしていた場所やお墓も訪ねました。自分なりに情熱を懸けて取り組んだ作品です」と力を込めて語る。
立教大学で決心、“ビジネスクラス”で中国へ
尹東柱と宋夢奎の足跡をたどっていく中、2人が過ごした中国の村・延辺にも行こうと決意したのは、偶然にも東京・立教大学を訪れたときだった。尹東柱が通った同大学の前で思いを馳せていたところ、「こんなことをしている場合ではない」と思い立ち、急いで中国の延吉行きの航空券を予約したものの、ちょうど旧正月の時期と重なりエコノミーは満席。ホテルの空きもなかったことから、「人生で初めてビジネスクラスに乗りスイートルームに泊まりました。この作品では、受け取ったお金(出演料)より使ったお金のほうが多かったと思います」と観客を笑わせた。
「これが最後の映画かもしれない」
同作は、自身の俳優人生においても大きな存在になったそう。当時は「これが自分にとって最後の映画になるかもしれない」と切実だったこともあり、「必要以上な行動もしましたが、とにかく自分の中に役を入れたかったんです」と必死に臨んだ理由を明かす。そして「今でも同じ情熱で取り組めているかと考えると、少し恥ずかしいような気持ちです」と吐露し、「もっと一生懸命がんばらなければ。歳を重ねるにつれ、責任感が増してきています。昔は俳優は演技だけしっかりやればいいと思っていましたが、そうではないと感じている今日この頃です」と続けた。
“新感染”をめぐるヨン・サンホとの掛け合い
近況を聞かれると、開幕を目前に控えた舞台「ライフ・オブ・パイ(原題)」に触れ、さらに2026年8月に日本公開予定の映画「The Ugly(英題)」にも言及。「新感染 ファイナル・エクスプレス」で知られるヨン・サンホの新作だと自ら紹介し、監督自身が「自分の作品は日本で公開すると必ずタイトルに“新感染”が付く」と言っていたと伝える。今回は原題が「얼굴(顔)」であることから、ヨン・サンホとパク・ジョンミンの間で「『新感染 顔』になるのかな」「ゾンビは出ないのに?」と冗談めかしたやり取りもあったという。パク・ジョンミンは「監督が『日本では“新感染”と付けたほうがヒットするんだ』とおっしゃっていました。今日、配給会社の方もいらっしゃるので……邦題は『新感染 顔』をお薦めします」と真剣な面持ちで提案。終始ユーモアを交えたトークで観客を魅了し、「また日本に来られるようにがんばります」と約束してイベントを締めくくった。
なお「K-BOOKフェスティバル 2025」で上映されたパク・ジョンミンのインタビュー映像「初めまして、出版社MUZEの代表パク・ジョンミンです」はYouTubeでアーカイブ配信中。
K-BOOKフェスティバル 2025 in Japan 事前収録インタビュー「初めまして、出版社MUZEの代表パク・ジョンミンです」
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Bonafide Brand @everythingfxx
@eiga_natalie パク・ジョンミンさん、来日おめでとうございます!
このモノクロのポートレート、指を口に当てた表情がミステリアスでカッコいい…。
新作の邦題が「新感染」って、ヨン・サンホ監督とのタッグでまたゾンビパンデミック再来?ユーモアたっぷりで語ってくれてありがとう!