映画作家・
ドキュメンタリー作家として20世紀の日本人を見つめてきた野田。本特集では、かつての人々の暮らしと祭りの様子を記録した野田作品8本を4プログラムに分けて上映する。今回、鎌倉の奇祭「面掛行列」を捉えた「異形異類の面掛行列」が新たに上映作として発表。また「ゆきははなである 新野の雪まつり」のカットを使ったアザービジュアルが到着した。
またアーティストで詩人の
特集上映「野田真吉特集―ゆきははなである」は、12月6日より東京・ポレポレ東中野ほか全国で順次開催される。
1913年愛媛県に生まれた野田は大学在学中、中原中也に師事し詩作に勤しむ。卒業後にP.C.L.映画製作所に入社し、その後東宝文化映画部に所属する。農村の記録映画などを撮るが、第2次世界大戦によって活動を休止し従軍した。敗戦後、復職し児童映画などを手がけ、東宝争議を経たのちに退社。フリーになってからは、社会運動を記録し、企業・産業PR映画や実験映画を作り、松本俊夫らと新しい映画とその方法を唱え、芸術運動に関わっていく。1970年代以降は、以前から興味を持っていた民俗誌の映像化に本格的に取り組み、日本人の意識構造の深部を映し出そうとした。1993年に77歳で死去。
特集上映「野田真吉特集―ゆきははなである」予告編
瀬尾夏美(アーティスト、詩人)コメント
「発展」から取り残された村の暮らし
戦争が残した痛みとともに生きる人びと
里に神々を迎える祭りの歌声、行列
そのすべてが、たしかにそこにあったものとして映されている
記録はきっと、それが喪失される予感とともに始められ、
時が経てば、それがたしかに失われたことを実感させる
昭和。激しい時代とどこか距離を置くように、
野田真吉は、静けさと息遣いを映した
あらたな激しい時代がはじまりつつあるいま、
このフィルムは何を問いかけるだろう
松村圭一郎(文化人類学者)コメント
日本の近代化は、庶⺠が抱く「希望」のなかを進んできた。野田真吉の映画には、日本列島の農山漁村で暮らす人びとがあらたな近代世界へと足を踏み入れる、その瞬間のリアルな姿が活写されている。何がどう変わり、変わらなかったのか。そこに、私たちが〈いま・ここ〉へとたどりついた道のりの分岐点がある。
三浦哲哉(映画研究・評論)コメント
暮らしと労働と儀礼を最大限の敬意とともに捉えた
野田真吉の詩情豊かな映像を見つめていると
どこか体の奥底がざわざわとし
自分が何を忘れていたかに気づかされる。
わたしたちは進歩して、何を得て何を失ったのか。
もう一度自分の体に問いかけたくなる。
島﨑奈央(「暮しの手帖」編集⻑)コメント
「暮らし」が映る映画は、ずっとずっと見ていられる。住まいや煮炊きの様子、生業のあり方。垣間見える、人と人との関係性。眺めながら、そこにある一日を、人生を、想像する。野田真吉が捉えた暮らしはもはや、時代とともに失われてしまったものも多い。その痕跡とまみえたくて、私はきっと何度も劇場に足を運ぶと思う。
特集上映「野田真吉特集―ゆきははなである」開催概要
開催日時・開催場所
2025年12月6日(土)~ 東京都 ポレポレ東中野
上映作品
Aプログラム「農村住宅改善」「谷間の少女」
Bプログラム「機関車小僧」「
Cプログラム「異形異類の面掛行列」「
Dプログラム「ゆきははなである 新野の雪まつり」
野田真吉の映画作品
タグ
映画ナタリー @eiga_natalie
映画作家・野田真吉の特集ラインナップそろう、鎌倉の奇祭「面掛行列」を捉えた1本も上映(予告編 / 推薦コメントあり)
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