日台のろう者が出会う「黄色い子」 グー・ユーシャン、人夢、今井彰人ら手話でトーク

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第38回東京国際映画祭にて、映画「黄色い子」のジャパンプレミアが本日10月28日に開催。監督の今井ミカ、キャストのグー・ユーシャン(顧玉山)、人夢今井彰人が東京・角川シネマ有楽町で行われたQ&Aに参加した。

「黄色い子」ジャパンプレミアのQ&Aの様子。左からグー・ユーシャン(顧玉山)、今井ミカ、人夢、今井彰人。「黄色」を意味する手話のポーズを取っている

「黄色い子」ジャパンプレミアのQ&Aの様子。左からグー・ユーシャン(顧玉山)、今井ミカ、人夢、今井彰人。「黄色」を意味する手話のポーズを取っている

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俳優・制作陣の大半がろう者、映画「黄色い子」とは

「黄色い子」場面写真

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台湾・台北に暮らすろう者のチェンは、旅行中に迷子になった日本人のろう児と出会う。子供を台湾ろう協会に届けるものの、その子はチェンと離れたがらない。チェンは日本統治時代の影響で日本手話が理解できるため、彼から親の手がかりを聞き出すことに。次第にチェンはろう児と心を通わせていき、埋もれていた自身の記憶と向き合い始める。一方、迷子の父親は慣れない環境の中で必死に息子の行方を追っていた。グー・ユーシャンがチェンを演じ、人夢が迷子のろう児、今井彰人がろう児の父に扮した。

高齢者が使う台湾の手話の60%が日本手話の影響を受けている

イベントでは今井ミカ、今井彰人、人夢、グー・ユーシャンがそれぞれ手話を使ってトークを展開。今井ミカはまず「聴者、ろう者、たくさんの方に観ていただけて感謝の気持ちでいっぱいです」と感慨深そうに挨拶をする。

今井ミカ

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グー・ユーシャンは「『黄色い子』というタイトルではありますが、私のような年配者が主役です(笑)」と冗談混じりに話し、今井彰人は「昨年から父親役が多いのですが、 35歳なので年相応なんでしょうか? 父親顔ということなのか、少し複雑です」と笑いながら「今までにないチャレンジの役でした」と述べた。

グー・ユーシャン(顧玉山)

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今井彰人

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劇中で、チェンとろう児は多くの時間をともに過ごす。「グー・ユーシャンさんと人夢さんはどのようにコミュニケーションを取りましたか?」という質問にグー・ユーシャンは、「大戦の背景もあって、台湾で日本手話が教えられていた歴史があります。私のような高齢者が使っている台湾の手話の60%が、日本手話の影響を受けています。今の若い人が使っている手話は40%くらいが似ているようです。なので私は昔の日本手話を思い出しつつコミュニケーションを取ったのでうまくできたと思います。例えば父母兄弟といった手話は日本と台湾で同じなんですよ」と語る。

左からグー・ユーシャン(顧玉山)、人夢

左からグー・ユーシャン(顧玉山)、人夢 [拡大]

手話は言語の1つ

物語の中でチェン、ろう児、台湾ろう協会の人々は警察と連携せずに、ろう者同士のネットワークで解決しようと奮闘していく。「なぜ警察を頼らないのか?」と観客から聞かれた今井ミカは「迷子の男の子は、第一言語が日本手話という設定。台湾には日本語が話せる人もいると思いますが、日本語と日本手話は別の言語です。そして彼は異国を訪れたろう者であり、コミュニケーションに大変な不安がある状態だと思います」と話す。劇中では聴者がろう者に戸惑い、うまくコミュニケーションが取れないシーンもある。日本手話と台湾の手話は異なるものではあるものの、類似性があり対話がある程度できることから、今井ミカは「手話は言語の1つであるという理解を広めたいと思ってこのようなストーリーにしました」と説明した。

子役の人夢、泣くためのコツを伝授

人夢への演技指導について尋ねられた今井ミカは「ディスカッションを重ね、本人の気持ちを引き出すことにかなりの時間を掛けました。ストーリーを手話で説明した動画を事前に共有しましたが、現場に入ってみて、その雰囲気に合わせて物語を適宜修正しました」と伝える。予告編にも収められている、ろう児が「警察やだよ」と話すシーンを引き合いに出して「ここもその場で話し合って作ったんです。『もし台湾で本当に迷子になって、警察に行けと言われたらどうする?』と人夢に問いかけたら、彼は『怖い。言葉が通じないから』と答えた。そういった形で『こうだったらどうする?』と、1つひとつの状況を彼に想像してもらいながら演技をしてもらいました」と振り返った。

「黄色い子」より、人夢演じる迷子のろう児

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「撮影はどうだった?」という問いには人夢が「少し難しいこともありました。泣くお芝居のときに、最初は涙がなかなか出なかったんです。でも(乗り越えるための)コツが2つありました。1つは練習、もう1つは想像力を働かせること。何を想像したかは内緒です」と茶目っ気たっぷりに答えて、会場を和ませる一幕もあった。

手話で感謝を示す人夢

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聞こえる人はろう者をどのようにサポートできるのか

また「(ろう者の子供が異国で迷子になるような)このようなことが実際に起きたら、どうすればいいのか」という現実的な質問も。今井ミカは「警察に連絡していただくのはもちろんなんですが、それだけでは足りなくて。ろう者協会が世界中にありますから、そこに相談もしてほしいです。サポートにすぐ入ってもらえます。聞こえる人だけでは解決がなかなか難しいと思います」と真摯に答える。

最後に今井彰人は「みんなにとって、第一歩となる作品だと思います。みんなと一緒に亀の歩みでがんばっていきたい」と挨拶し、笑顔でイベントを締めた。

左から人夢、今井彰人

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第38回東京国際映画祭は11月5日まで東京の日比谷・有楽町・丸の内・銀座エリアで開催。

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映画「黄色い子」予告編

©サンドプラス

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日本と台湾のろう者が出会う「黄色い子」
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