長編アニメーション「
本作は、いじめられっ子の孤独な少年が父親の背中を追ってアイドルを目指す物語。蔑称や源氏名などあらゆる呼称で呼ばれた彼の生涯が、数々の社会問題を背景に全10章で描かれる。ラッパーのACE COOLが主人公の声を担当した。
本作で長編監督デビューを果たした鈴木。「本作の着想はどこから?」と尋ねられると、「これまでいろいろな短編を作って映画祭を回り、次は長編映画を作りたいと思っていました。まずは『無名の人生』というタイトルがパッと浮かんだんです」と答える。歌舞伎町のバーで雇われ店長をしていたことも説明し「(酒を飲む場所では)本名ではない“飲み屋ネーム”があったりしますし、SNSでも匿名で発信するので、名前をテーマにするのは面白いなと思いました。それにある男の一代記を作ってみたいというところもあったので、それらが合わさってスタート地点になったんです」と伝えた。
脚本やコンテを用意せずに描き進めていったという鈴木は「面倒くさがりというか、手っ取り早く作りたくて。説明書を読まずに家具を組み立てるようなタイプなんです。だから1年半で本作を作れたということもあります。前の短編2本も同じやり方でしたが、脚本もコンテもキャラクターデザインもカットして思いつくままに進めました。最後のほうまでびっちり固めてしまうと飽き性な自分には無理だなとわかっていたので」と振り返った。また「(ストーリーを説明しすぎないよう)毎回ちょっと飛ばしながらカットを描いていくことに喜びを感じていましたし、それを延々とやった集合体という感じですね」とも話す。
10章仕立てにすることは初めから決めていたそうで、「『わたしは最悪。』という映画が好きなんですが、同じようにいくつかの章で構成されていて、(章の長さが)バラバラなのがいいと思いました」と言って、「このあたりで眠くなってくるだろうなというタイミングで、パンパンパンとテンポをよくしました」と章の長さに強弱を付けたと説明した。
岩井澤は「短編がいろんな映画祭で上映されていたので、作品から鈴木さんのことを知っていました。アニメーションは動きでまず魅せるというところがあると思うんですが、鈴木さんは構成で魅せているというか。そしてこれは褒め言葉ですが、鈴木さんは止まった画で魅せるうまさがあるんです」と作風をたたえる。また岩井澤がトークイベントで登壇するときに自ら鈴木に出演を打診し、初めてきちんと顔を合わせたと回想した。
それを聞いた鈴木は「制作に入る直前にトークショーでお話しして、そのあとは1年くらい誰にも会わずに描いていたんですが、ふとキャスティングも考えていないしキャラクターもとんでもない数になっていてどうしよう……と思うように。それで岩井澤さんにお声がけしてみました」と述懐。岩井澤は「連絡をいただいたときには、70分くらいできていたんです。鈴木さんが面白いのは、まずラフをつなげて作っていくのではなく、1つずつカットに色を付けて積み重ねていくところ。観たときは途中段階でしたが、世界観がしっかりあったし、短編の延長ではなく長編としての強度もありました。自分がプロデューサーという形で入れば、きっかけとして劇場公開まで行ける道筋ができるんじゃないかと思って参加したんです。音周りで協力はしましたが、内容は関わっていません」と語った。
鈴木が「岩井澤さんが『俺がプロデュースします』と言ってくれて『やったー! 大人が味方に付いた』と思いました(笑)。『劇場でやれるクオリティだから、音を強くしていこう』といった話をしていただきましたね」と言うと、岩井澤は「映画館は音響がやっぱり特別なので。インディペンデントの作品でも予算を音響に掛けることでクオリティを上げられるんです」と意識した点を挙げる。
最後に岩井澤は「面白い作品が1つでも多く世に出てくれたらと思い、協力させてもらいました。公開は来週ですが、すでに話題になっているようです。思いのほか反応がいいので楽しみですね」と笑顔で挨拶。鈴木はグッズTシャツを見せつつ「自分は恵まれているということを忘れず、(サポートしてくれた人たちへの)恩返しのためにもどんどん作品を広めていきたいです」と観客に語りかけた。なお100ページ程度のパンフレットが作られていることも明かされ、鈴木は「もう1つ作品を作ったというくらいのパンフレットです。ぜひ読んでください」とアピールした。
アヌシー国際アニメーション映画祭の長編コントルシャン部門に出品される「無名の人生」は、5月16日より全国で順次公開。田中偉登、宇野祥平、猫背椿、鄭玲美、鎌滝恵利、西野諒太郎(シンクロニシティ)、中島歩、毎熊克哉、大橋未歩、津田寛治も声のキャストに名を連ねた。
映画「無名の人生」予告編
鈴木竜也の映画作品
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