大宮浩一のドキュメンタリー「そして、アイヌ」予告公開、宇梶剛士や森達也のコメントも

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「ケアを紡いで」の大宮浩一が監督を務めたドキュメンタリー映画「そして、アイヌ」の予告編がYouTubeで公開。あわせて俳優・劇作家の宇梶剛士ら著名人からコメントが到着した。

「そして、アイヌ」メインビジュアル

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「そして、アイヌ」場面写真

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「そして、アイヌ」場面写真

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東京・大久保のアイヌ料理店「ハルコロ」店主でアイヌ文化アドバイザーの宇佐照代を中心とした本作。北海道・釧路市生まれである宇佐の家族のライフヒストリーを紐解きながら、文化の継承やアイデンティティといった問いに向き合っていく。宇佐のほか、美術作家・奈良美智、評論家・太田昌国、写真家・宇井眞紀子、朝鮮 / 韓国民謡奏者・黄秀彦、カムイノミ祭司 / 縄文造形作家・平田篤史らも出演した。

予告編は、宇佐が奏でるアイヌ民族に伝わる楽器・ムックリの音色に、奈良をはじめ出演者の言葉が重なっていく内容となっている。

「そして、アイヌ」場面写真

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アイヌ民族にルーツを持つ宇梶は「アイヌ語で『アイヌ』は『人間』という意味。この言葉に自分を問われながら生きてきた。アイヌ(人間)とは? 『そして、アイヌ』に登場する人たちの穏やかな顔、顔、顔につられて、僕も微笑んだ」と本作の感想をつづった。また「小さいおうち」で知られる小説家・中島京子、「FAKE」「福田村事件」を手がけた映画監督・森達也らも本作を称賛。すべてのコメントは以下に掲載している。

「そして、アイヌ」は3月15日より東京・ポレポレ東中野、神奈川のシネマ・ジャック&ベティ、大阪・第七藝術劇場、京都・京都シネマほか全国で順次公開。

※「ハルコロ」の「ロ」は小文字が正式表記

映画「そして、アイヌ」予告編

宇梶剛士(俳優・劇作家)コメント

悲しみを見つめたことのある人が、優しさを知る人となる。アイヌ語で「アイヌ」は「人間」という意味。この言葉に自分を問われながら生きてきた。アイヌ(人間)とは? 「そして、アイヌ」に登場する人たちの穏やかな顔、顔、顔につられて、僕も微笑んだ。

中島京子(小説家)コメント

オープニングの口琴の調べに、まず心をつかまれる。縄文文化につながるアイヌの伝承、ニュージーランドの先住民マオリとの類似性、朝鮮音楽継承者たちとの連帯など、時間も空間も縦横につないでいくアイヌの存在が圧倒的。偏見の中、力強く文化を守ってきた女性たちの歴史にも魅了された。「ハルコロ」で、奈良美智さんが食べる鮭チャーハンがなんともおいしそうだった。

安田菜津紀(メディア NPO Dialogue for People 副代表 / フォトジャーナリスト)コメント

「痛みに時効はない」──照代さんが語った言葉が、心の中を巡り続ける。「差別なんて過去でしょ」と決め込む前に、人の姿に、声に、この映画を通して触れてほしい。

寺尾紗穂(文筆家・音楽家)コメント

白い服をきて日本語のおかしな
祖母を恨んだと
在日の音楽家が語る。
軽んじられる側の苦しみを、
世代間にいつの間にか生まれる断絶の悲しみを
同化を強いる側は想像できない。
アイヌと銘打たれるも
アイヌばかりの話ではない。
帝国日本統治下のあちこちの植民地で、
アイデンティティの苦悩は生まれた。
その一つ一つ、等しく
耳を傾けられるべきものだが
せめて最も近しい隣人たちの悲しみを想像する人間性を保てよと、映画は伝える。

ピーター・バラカン(ブロードキャスター)コメント

アイヌ語で言うアイヌは「人間」という意味です。
この映画はアイヌに関するものであると同時に、植民地主義、同化政策、文化の抑制など、普遍的に響く負の歴史に触れるところが多いです。それでも、差別を受けながらも今尚力強く生き延びるアイヌの儀式、文様、歌などの文化はここにあります。

キニマンス塚本ニキ(翻訳者・ラジオパーソナリティー)コメント

ムックリの音色やトンコリの旋律、照代さんのヤイサマがすーっと身体に染み込む感覚がたまらなく心地よい。
奪われた物語を取り戻し、かき消された声を響かせる人々の祝いと抵抗に胸が震える。
先祖から受け継いだものを偽らずに語り、愛せることが「特権」であってはならないと気付かされた。

森達也(映画監督、作家)コメント

差別の根源は何か。多数者が少数者を標的にする。それは群れることをDNAに刷り込んだ人の性(サガ)。ある意味でなくならない。でも減らすことはできる。どんな人たちなのか、どのような文化でどれほどの差別や迫害を受けてきたのか、それを知ること。見ること。聴くこと。
大宮浩一監督はアイヌを軸に、被差別部落や在日コリアンなど、多くの被差別者たちにフォーカスする。ムックリの音色がずっと消えない。多くの人に観てほしい。

じょいっこ(セカイめし愛好家)コメント

難しいことじゃない。
料理を食べて文化を知る、それだけで民族間の垣根は消える。
その先にあるのはきっと差別や争いのない優しい世界。

金井真紀(文筆家・イラストレーター)コメント

舞台は東京の片隅にある小さなアイヌ料理屋さん。そこからどんどん広がって「ないもの」にされてきた人たちがつながっていく。被差別部落の人、旧植民地の人、世界の先住民…。あぁ、みんな笑顔で歌っているのに、観ているこちらはなんだか涙が出る。

三浦哲哉(映画研究者)コメント

アイヌは「人間」という意味だ。私たちのすぐそばで暮らし、自文化の風を今も吹かせている。その風は、ムックリの音となり、踊りとなり、郷土料理の匂いとなり、いくつもの他民族文化と反響し合いながら、この国のさまざまな街をカラフルに彩っている。この事実に気付かせてくれる本作の貴重さは計り知れない。

石原真衣(北海道大学 アイヌ・先住民研究センター 准教授)コメント

1997年のアイヌ文化振興法以来、「アイヌ文化」は脱政治化され、多数派(和人)のエンターテイメントを担わされた。
国や社会がアイヌ文化伝承を称揚する裏側には、「抵抗運動はさせねーぞ」という根性がすけてみえる。集団としての人権の回復と、先祖から引き継いできた文化を大事にすること。断絶されたふたつを、照代さんがつなぎ、文化は集団としての権利回復の糧になる。「痛みに時効はない」と照代さんはいった。問われているのは京都大学だけではない。日本の社会で今日までずっと収奪と差別を傍観してきた一人ひとりの日本人でもある。照代さんのまなざしと言葉に、あなたはこたえる言葉をもっているか。

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(c)大宮映像製作所

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