映画の2024年の年間興行収入、邦画は新記録 洋画はコロナ前から半減 アニメ比率は最高に

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日本映画製作者連盟(映連)が本日1月29日、2024年の映画の年間興行収入を発表。前年比93.5%、144億円減の2069億8300万円という結果になった。これは現在の興収での集計が始まった2000年以降では11番目の数字。邦画は過去最高の1558億円を積み上げ、「君の名は。」や「シン・ゴジラ」が大ヒットした2016年の1486億円を上回る新記録となった。

映連による新年記者発表会見の様子。左から高橋敏弘(松竹)、松岡宏泰(東宝)、島谷能成(映連 / 東宝)、吉村文雄(東映)、夏野剛(KADOKAWA)。

映連による新年記者発表会見の様子。左から高橋敏弘(松竹)、松岡宏泰(東宝)、島谷能成(映連 / 東宝)、吉村文雄(東映)、夏野剛(KADOKAWA)。

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映連は東京都内で記者会見を開き、2024年の全国映画概況を発表した。邦画が過去最高を記録した一方で、洋画は前年比69.8%の511億円と落ち込みが顕著に。2069億円の構成比は邦画75.3%、洋画24.7%となっている。映連の代表理事および東宝代表取締役会長を務める島谷能成は「洋画は数字を大きく落としました。非常に厳しい数字」とコメント。北米も前年から興収を落としていることに触れ「北米は94%、日本は93.5%。だいたい不調が合っている」と見方を示した。

興収10億円以上の番組における実写とアニメの興収比率も明かされ、邦画は42対58、洋画は47対53といずれもアニメのシェアが高い結果に。2000年以降、アニメの比率が一番高い年となったという。

コロナ前の2019年からさかのぼる5年間の中位平均値と比べ、邦画の1558億円はおよそ120%、洋画の511億円は51%、トータルの2069億円は90%という数字。島谷はこの数字を理由に「コロナ前、洋画は中位平均で年間1001億円あったので、去年は500億円ほど落としている。洋画がコロナ前の平均値であれば、2600億円近い数字になって大変な活況だったのではないか」と仮定。洋画が落ち込んだ要因として2023年にハリウッドで発生した俳優と脚本家によるストライキに触れ、「そのときの停滞が2024年に及んだ」と話し、そのうえで「ストライキの影響から脱して、順調に回復しており、旺盛な作品制作に向かっている」「大作が戻ってくる。今年は期待できるのではないか」と続けた。

興収10億円以上の番組に関して、邦画は前年から3作品減らして31本。アニメが好調で、「名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)」「劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦」の2本が興収100億円を突破した。東宝はこの2作品を含め、上位5作品をすべて配給。邦画31本のうち18作品が東宝配給で、好調が続いている。実写映画は「キングダム 大将軍の帰還」が80.3億円で1位。これに59.6億円の「ラストマイル」、50.7億円の「変な家」、45.4億円の「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」が続いた。

洋画の10億円以上は前年から5作品減らして10本。53.6億円の「インサイド・ヘッド2」がトップとなった。2023年は15作品で483億円を積み上げたが、2024年は10作品で252億円と本数・興行収入ともに数字を落としている。

会見では洋画の不調に関して、出席した各社の代表がコメントする場面もあった。松竹の高橋敏弘は「昨年は洋画のファンが映画館に来ている様子がなかった。今年は洋画がバランスよくラインナップされているので、戻って来るといい」と期待し、東映の吉村文雄は続編やシリーズものなどフランチャイズ作品が多いことに触れ、「一般の方からすると、ある種の目新しさが薄れている傾向があるのでは。昨年で言うと『シビル・ウォー』のような、毛色の変わったもの、多様なものが増えてくれば、回復基調になるのでは」と持論を語る。KADOKAWAの夏野剛は、日本の作品は原作やメディアミックス展開がある作品が多いことを指摘し、「邦画のほうがイメージがしやすいので、そちらに流れているのでは。邦画のほうが魅力的に映ってしまった結果なのではないかと思います」と話した。

また東宝の松岡は、ストライキの影響を認めつつも、北米では昨年後半からは大ヒットの作品が続いていたことに言及。「そういった作品が日本ではなかなかヒットしなかった。ハリウッド映画がうまくいかない地域は、世界的にアジアを中心にいくつかありますが、そのうちの1つが日本。これは私の知見ですが、コロナの最中に日本は映画業界が一緒になって、なんとか映画館で映画を観てもらおうという習慣を継続していた。その最中、ハリウッド映画はほとんど公開されることがなかった。そのあとも勢いを取り戻せていない。その意味で言うと、洋画を観たい、洋画を観に行こうという視聴習慣に多少なりとも影響があるのではないか。今年強い作品が公開され、洋画ファンが帰ってくることが映画業界の復活につながるんじゃないかと思います」と述べた。

ライブビューイングのコンテンツなどを含むODS関連の興収は246億円。前年比82%の数字だが、島谷は「2012年は47億円だったのが、去年は246億円と5.2倍に。定着してきており、日本中のシネマコンプレックスが映画館であるというだけではなく、ある種の“映像の館”に少しずつ近付いている。これはまだまだ伸びていく思われます」と補足した。また劇映画のソフトのメーカー売上は457億円(前年比98.5%)で、内訳はセルが394億円(前年比102.1%)、レンタルが63億円(前年比80.5%)。セルは堅調だが、レンタルは配信への移行が進み、前年比で大きく落とした。

このほか全国映画概況の数字や、興収10億円以上の番組一覧は以下の通り。

※高橋敏弘の高ははしごだか、橋は異体字が正式表記

全国映画概況(2024年・令和6年)

  • 入場人員 :1億4444万人(92.9%)
  • 興行収入:2069億8300万円(93.5%)
  • 平均入場料金:1433円(100.6%)
  • 公開本数:1190本(42本減)
  • 邦画:685本(9本増)
  • 洋画:505本(51本減)
  • スクリーン数:3675(22増)

※()内の数字は前年比

劇映画のビデオソフトによる販売額・推定(2024年・令和6年)

  • メーカー売上:457億円(98.5%)
  • セル:394億円(102.1%)
  • レンタル:63億円(80.5%)

※日本映像ソフト協会統計調査報告書より、映連・ホームエンタテインメント部会に関連する項目について集計し推定算出したもの

興行収入10億円以上番組(2024年・令和6年)

邦画

  1. 名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)158.0億円(東宝)
  2. 劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦 116.4億円(東宝)
  3. キングダム 大将軍の帰還 80.3億円(東宝 / ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)
  4. 劇場版 SPY×FAMILY CODE: White 63.2億円(東宝)
  5. ラストマイル 59.6億円(東宝)
  6. 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM 53.8億円 *(バンダイナムコフィルムワークス / 松竹)
  7. 変な家 50.7億円(東宝)
  8. あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。 45.4億円(松竹)
  9. 映画ドラえもん のび太の地球交響楽 43.1億円(東宝)
  10. 僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト 36.0億円(東宝)
  11. ゴールデンカムイ 29.9億円(東宝)
  12. 映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記 26.9億円(東宝)
  13. 「鬼滅の刃」 絆の奇跡、そして柱稽古へ 23.1億円(東宝 / アニプレックス)
  14. ルックバック 20.4億円(エイベックス・ピクチャーズ)
  15. Mrs. GREEN APPLE // The White Lounge in CINEMA 19.0億円 *(松竹ODS事業室)
  16. 室井慎次 敗れざる者 18.9億円 *(東宝)
  17. 劇場版ブルーロック -EPISODE 凪- 18.1億円(バンダイナムコフィルムワークス)
  18. スオミの話をしよう 17.7億円(東宝)
  19. 室井慎次 生き続ける者 17.0億円 *(東宝)
  20. 帰ってきた あぶない刑事 16.4億円(東映)
  21. ディア・ファミリー 14.7億円(東宝)
  22. 劇場版「進撃の巨人」完結編 THE LAST ATTACK 14.5億円 *(ポニーキャニオン)
  23. 劇場版「ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉」14.1億円(東宝)
  24. PERFECT DAYS 13.3億円(ビターズ・エンド)
  25. わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー! ドキドキ ゲームの世界で大冒険!12.4億円(東映)
  26. もしも徳川家康が総理大臣になったら 12.0億円(東宝)
  27. 四月になれば彼女は 11.9億円(東宝)
  28. あのコはだぁれ? 11.6億円(松竹)
  29. 陰陽師0 11.0億円(ワーナー ブラザース)
  30. 九十歳。何がめでたい 10.4億円(松竹)
  31. 劇場版「オーバーロード」聖王国編 10.3億円 *(KADOKAWA)

合計 1050.1億円

洋画

  1. インサイド・ヘッド2 53.6億円(ウォルト・ディズニー・スタジオ)
  2. 怪盗グルーのミニオン超変身 45.3億円(東宝東和)
  3. ウィッシュ 36.1億円(ウォルト・ディズニー・スタジオ)
  4. ウォンカとチョコレート工場のはじまり 23.7億円(ワーナー ブラザース)
  5. デッドプール&ウルヴァリン 21.1億円(ウォルト・ディズニー・スタジオ)
  6. オッペンハイマー 18.7億円(ビターズ・エンド)
  7. ゴジラxコング 新たなる帝国 17.4億円(東宝)
  8. ヴェノム:ザ・ラストダンス 15.1億円(ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)
  9. ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ 11.6億円(ワーナー ブラザース)
  10. マッドマックス:フュリオサ 10.0億円(ワーナー ブラザース)

合計 252.5億円

※*印は現在上映中

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