瀧内公美の主演作「
ドキュメンタリー番組のディレクターとして女子高生の自殺事件を取材する由宇子を主人公にした本作。テレビ局の方針と対立しながらも事件の真相に迫っていく由宇子だが、学習塾を経営する父が起こした”ある行動”を知ってしまう。ドキュメンタリー作家として常に“真実”に突き動かされてきた由宇子は、究極の選択を迫られる。
コロナ禍により3月に一度オンライン開催され、現在はドイツ・ベルリンで上映イベントが行われているベルリン国際映画祭。「由宇子の天秤」は、現代社会を独自の視点で切り取った作品を数多く選出するパノラマ部門に正式出品された。上映ではエンドロールにて拍手喝采が起き、春本たちに感想を熱心に伝える観客も見られたという。
物語を着想したきっかけを問われた春本は「数年前に、いじめ自殺事件の加害者の父親と同姓同名のまったく関係のない人が、一般人からSNSで誹謗中傷を受け日常を破壊される事件がありました」と述懐。そして「驚いたことに誹謗中傷をした人たちは、私たちの周りにいるごくありふれた人たちでした。私は、他者を容易に攻撃してしまう人とそうでない人を分けるものはなんなのか、こうした社会の先に何があるのか掘り下げてみたいと思ったのです」と語った。春本の印象を聞かれた梅田は「監督は撮影前から頭の中に役のイメージが強くあるのですが、何よりも俳優個人を大事にされる方。役者の個性とその表現力を尊重してもらえるので、とても演じやすい現場でした」と振り返った。
「この世界の片隅に」の監督として知られ、本作が自身初のプロデュース作品となった片渕は「私はアニメーション監督をしていますが、6年や8年と長い時間を掛けて制作をしています。常々、自分たちの後輩に当たる若い監督たちにはもっと作品を作りやすい環境であってほしいと考えていました」とコメント。友人であり本作のプロデューサーの1人でもある松島哲也から春本を紹介された際のことを回想し「彼の脚本は、社会的事件を取材している主人公が陥っていく問題について書かれていました。“真実”というものがどのように伝えられるべきなのか。伝える側も人間である以上はいびつな形になることもあり得る、そういった人間の普遍性を秘めた作品であることに同調しました」と製作に参加した理由を明かした。
第71回ベルリン国際映画祭は6月20日まで開催。「由宇子の天秤」は9月より東京・ユーロスペースほか全国で順次公開される。
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