東京ドキュメンタリー映画祭2020で特別賞を受賞した「
東京・明治神宮外苑にある国立競技場に隣接した都営霞ヶ丘アパートは、10棟の都営住宅。1964年の東京オリンピック開発の一環として建設され、東京2020オリンピックに伴う再開発により2016年から2017年にかけて取り壊された。住民の平均年齢は65歳以上で、パートナーに先立たれ単身で暮らす人や身体障害を持つ人などさまざま。団地内には小さな商店があり、脚の悪い住民の部屋まで食料を届けるなど、何十年ものあいだ助け合ってきたが、2012年7月、東京都から一方的な移転の通達が来た。
2014年から2017年にかけて霞ヶ丘アパートの人々を追った本作には、五輪ファーストの政策によって奪われた住民たちのつつましい生活や、団地というコミュニティのありさまが収められている。また、移転住民の有志による都や五輪担当大臣への要望書提出、記者会見の様子も記録された。監督・撮影・編集を担当したのは、本作で劇場映画監督デビューを果たした青山真也。連続テレビ小説「あまちゃん」などで知られる
青山は「1964年のオリンピックの際に立ち退きがあったことを私は知らなかった。今回の霞ヶ丘アパートのことも、オリンピックが始まったら歓声と共に忘れられてしまうのではないかという危機感からこの映画を撮り始めた」とコメント。「コロナ禍でもオリンピックを強行しようとする政府の姿勢に対し、twitter等では『オリンピックより命が大切』の声が上がりはじめた。この映画に映るアパート住民の何人かは移転後に亡くなっている。『命よりもオリンピックが大切』にされた結果だということは言うまでもない」と述べている。
なおYouTubeでは特報映像が公開中だ。
青山真也 コメント
1964年のオリンピックの際に立ち退きがあったことを私は知らなかった。
今回の霞ヶ丘アパートのことも、オリンピックが始まったら歓声と共に忘れられてしまうのではないかという危機感からこの映画を撮り始めた。
国立競技場でイベントがあると、歓声がこのアパートの中まで響いた。夜には眠れなくなるほどの音量だったが、ある住民は「耳が遠くなった一人暮らしにはちょうどいい」と言っていた。
コロナウィルスにより歓声をあげられない時代になって、私の危機感は斜め上に逸れていったが、よりタチの悪い状況ではある。東日本大震災からの復興五輪と言っていたのに、いつのまにかコロナを乗り越える五輪にすり替わって、これまでに湧き起こったオリンピックの様々な問題が覆い隠されてしまった。
2021年4月末現在、コロナ禍でもオリンピックを強行しようとする政府の姿勢に対し、twitter等では「オリンピックより命が大切」の声が上がりはじめた。
この映画に映るアパート住民の何人かは移転後に亡くなっている。「命よりもオリンピックが大切」にされた結果だということは言うまでもない。
前田久(前Q) @maeQ
五輪の陰で奪われた生活、「東京オリンピック2017 都営霞ヶ丘アパート」公開(動画あり / コメントあり) https://t.co/EnRjufPOSc
>『命よりもオリンピックが大切』にされた結果だということは言うまでもない