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佐木隆三の小説「身分帳」をもとにした本作は、人生の大半を獄中で暮らした実在の男性をモデルに、出所後に社会で必死に生きる男を描く物語。13年の刑期を終えて出所した元殺人犯の三上正夫に役所が扮し、彼にすり寄る若手テレビディレクター・津乃田を仲野太賀、やり手テレビプロデューサーの吉澤を長澤が演じた。
佐木のファンだった西川は、2015年にその訃報を目にしたことから「身分帳」を読む機会を得たそう。「犯罪を犯すまでの話ではなく、犯罪者が刑務所から出てきたあとの話。私は基本的に、一度失敗した人が人生をやり直す話が好きで。主人公が相対するのは大きな敵ではなく、仕事を得ることや人間関係についてのこと。これはすべての人に共通すると思いました」と、原作に惹かれた理由を語った。
本作は2020年10月に第56回シカゴ国際映画祭で観客賞に輝き、役所もベストパフォーマンス賞を受賞。このイベントでは、アメリカから届いたトロフィーと盾の授与も行われた。役所は「作品の力があってこその個人賞。できるならこれを切り刻んでみんなで分けたいくらいなんですが、もったいないので僕が預かっておきます」とはにかむ。そして西川は、コロナ禍によって各国の映画祭がオンライン開催になったことに触れ「でもおかげで、その都市の人だけではなく、その国に住む人々が世界のあらゆる新作を観る機会を発見できました」とコメントした。
イベント後半には、テレビマン役の仲野と長澤が、役所に公開取材をすることに。2人は「えー、リポーターの仲野です」「リポーターの長澤です」という演技から入って笑いを誘う。西川とのエピソードを聞かれた役所は、長回しのあとに三上がカップラーメンを投げつけるシーンを回想。「本番を撮って、部屋中が麺だらけになったのに、監督は『もう1回お願いします』って言うんですよ。3回目の本番で、カメラ横の監督のほうにラーメンが飛んでいった。『この俳優、OKを出さないから私のほうにカップラーメンを投げつけたんじゃないか』と思っているかなあ」と話す役所に、西川は「投げてほしいところに来たので、足にラーメンをかぶせられながらOKを出しました(笑)」と返した。
さらに“リポーター”の仲野から「ぶっちゃけ、仲野太賀はどうでしたか?」と聞かれた役所。「出てたっけ? ああ、あの俳優さんね」とジョークで返した役所は「彼は映画小僧ですね。映画が大好きで、カメラが大好き。なかなか素晴らしい俳優さんだと思いますよ。かわいがられるタイプの人間を、普段から演じてますね」と笑う。「それに便乗させてもらって、長澤まさみは……」と質問した長澤に、役所は「きれいですよ、あの人は。ものすごくきれい。彼女がディレクターに啖呵を切るシーンがあるんですが、僕は試写で観たとき思わず『その通り!』って拍手したんです」と答えた。
最後に役所は「この映画は、観ていただくとホッとして、どこか晴れ晴れした気持ちになるんじゃないかなと思います」と作品をアピール。西川は、映画冒頭の「まだまだやり直しが可能だ」というセリフを紹介し「その言葉を作品の軸にしようと思って作りました。奇しくも世界がこんな状況になって、たくさんの方が不安になっていると思う。この作品がそんな不安に寄り添って、みんなで“やり直しができる社会”に向けて歩いていければ」と挨拶した。
「すばらしき世界」は2月11日に全国公開。なおこのたびYouTubeでは、津乃田と吉澤が三上に取材するシーンの本編映像が解禁された。
※記事初出時より情報を追加しました。
渡部亮平 @RyoheiWatanabe
ちゃんと試写会やったんだなぁ、うらやましい。。その決断をした人は何も悪くない。
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