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南木佳士による同名小説をもとに、末期のがん患者・山中静夫と信州の病院に勤める内科医・今井俊行の姿を描いた本作。余命宣告された山中の姿を通して、人間が死んでいくこと、最期まで生き抜くことの意味を問う。梅雀が山中、津田が今井、高畑が山中の妻・つね子、田中が今井の妻・早智子、小澤が研修医の中田治を演じている。
本作のために体重を6kg減量したという梅雀は「肺腺がんというのは発見されてから亡くなるのが早く、健康体な様子のまま亡くなっていくらしいんです。監督も『死んでいく人間が死に向かってポジティブになっていくさまを描きたい』と言っており、痩せる必要がなかった。でも映画を観てる人は、こいつ死なねえだろうなと思うだろうから、最初に6kg落としました」と冗談交じりに役作りを述懐。本作を「不思議な映画」と語る津田も「がん患者がどんどんふくよかで健康的になっていき、主治医がどんどん痩せていくんです」と笑って同意した。
撮影期間中は母親が危篤だったこともあり常に死について考えていたという梅雀。「母の死について考え、肺炎で亡くなった父の息遣いを思い出していました。自分はどんなふうに死んでいきたいのか?と思いながら、毎日、宿でじっと温泉に浸かっていましたね(笑)」と回想する。高畑は妻役の視点から「山中は仕事でも家庭でも一度も我を通したことがない人生なんです。でもそんな彼ががんになって……という物語。映画の中ではあまり描かれない夫婦生活なんですが、ぜひ注目してみてください」とアピールした。
津田が「僕ぐらいの歳になると、先輩が現場にいることが少なくなってきた。でも今回はかなり歳上の方が多かった」と尊敬の念を込めて明かすと、「かなりか?」とおどける梅雀。津田は「だから演じていると圧巻されてしまう。この仕事は未経験の方がすごい芝居をされることもあるんですが、積み重ねたものにはやっぱり勝てないんだなと思いました。気が付くと観客のように皆さんのお芝居を受けるだけでした」と振り返る。梅雀との共演シーンで思わず涙を流したこともあったそうで「テストだったんですが、聞いてるうちにポロポロ涙がこぼれてくる。そしたら監督が『この映画は登場人物が誰一人泣かない映画なんですよ』と。本番では自分を戒めて涙をこらえました」と明かした。
「山中静夫氏の尊厳死」は2月14日より東京・シネスイッチ銀座ほか全国で順次ロードショー。
矢口晶一 @tamagawajyousui
「山中静夫氏の尊厳死」登場人物は誰一人泣かない、完成披露に中村梅雀や津田寛治ら https://t.co/OS7KOqNjNT