カンヌのパルムドール受賞作、トルコの伊達男が生んだ「雪の轍」まもなく公開

2014年のカンヌ国際映画祭で、コンペティション部門最高賞にあたるパルムドールに輝いた「雪の轍」が6月27日より公開される。トルコ出身の監督ヌリ・ビルゲ・ジェイランからコメントが到着した。

脚本家、写真家、さらにそのルックスを生かして俳優としても活躍するジェイランはカンヌの常連監督であり、これまで「冬の街」「昔々、アナトリアで」でグランプリを、「スリー・モンキーズ」で監督賞を獲得している。彼の日本での劇場初公開作となる「雪の轍」の舞台は、トルコのカッパドキアにたたずむホテル。かつて舞台俳優であったオーナーのアイドゥンは、若く美しい妻、出戻りの妹と共に平穏な生活を営む。しかし家賃を滞納する住民との不和もあり、冬の訪れによって閉ざされゆくホテルの中で、3人の愛憎が浮き彫りになっていく。

カッパドキアの壮大な景色が印象的な本作。ジェイランは「当初はカッパドキアで撮るつもりはありませんでした。この映画にはあまりにも美しすぎたから」と振り返る。しかし世の中から遠く離れた別世界のようでありつつ、冬でも旅行客が訪れるこのホテルを見つけて「ここに登場人物を置きたいと思った」と語り、「その結果、物語が進化した」とロケーションに触発されたことを明かした。

また写真家でもある彼は作品における“色味”に強いこだわりを持つ。デジタルに移行した現代では望む色彩が簡単に手に入るようになったが、ジェイランは「いちいち色をいじることをしないようにしています。私にとって重要なのは影、そして光と影の関係です」と説明。本作については「雪があったおかげでモノクロのようになりました。アイドゥンが去るときに雪がこの地方を覆うという事実は、私にとって非常に重要」とし、「ある関係に終止符を打つとき、世界は違って見え、風景は性質を変える。本作ではここで風景が白く変わるのです」と語った。

カッパドキアの絶景をバックに、深淵なる世界が堪能できる「雪の轍」。6月27日の公開日を楽しみに待とう。