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「金曜ロードSHOW!」×「午後のロードショー」局またぎプロデューサー対談

金ローで「ミスト」は実現可能?午後ローもファミリー層を狙いたい?テレビで映画を放送する意味とは

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動画配信サービスの普及により、観たいときに観たい映画を視聴することができるようになった現在。テレビで映画を観る機会が少なくなってきている中で、今も根強い人気を誇る番組がある。日本テレビの「金曜ロードSHOW!」とテレビ東京の「午後のロードショー」だ。

映画ナタリーでは「金曜ロードSHOW!」のプロデューサー・北條伸樹と、「午後のロードショー」のプロデューサー・岡本英一郎の局をまたいだ対談をセッティング。今の時代にテレビで映画を放送する意味について聞いた。また「金曜ロードSHOW!」で「ミスト」は放送可能か、「午後のロードショー」とは無縁そうなしっとりしたラブストーリーを岡本プロデューサーは観ることがあるのか、といった素朴な疑問もぶつけてみた。両番組が来年予定している取り組みも紹介している。

取材・/ 小澤康平

個人の番組ではない

──北條さんと岡本さんは面識はあるんでしょうか?

北條伸樹 公的な場で会ったことはあるんですが、ガッツリお話させていただくのは初めてです。

岡本英一郎 そうですね。ほぼ初対面です。

──わかりました。まず最初に伺いたいんですが、現在のプロデューサーという役職にはどのような経緯で就いたんですか?

北條 私の場合はもちろん映画が好きなんですが、正直そこまで映画通ではないんです。もともとはバラエティ志望で日本テレビに入って、ずっと制作をやっていました。人事異動の流れで今の仕事をするようになりまして、実は希望してなったわけではありません(笑)。

岡本 あ、そうなんですね!

北條 前任のプロデューサーはものすごく映画に詳しくて、私がそのあとを引き継ぐ形で。今年4年目に入りましたけど日々勉強しています。

岡本 僕は昔から映画が好きで、このポジションには希望して就きました。僕よりもよっぽど映画に詳しい先輩はおりますが、自分なりにたくさん映画を観て、蓄積は作るようにしてきました。そんな中、うまくタイミングが合って今の部署で担当しております。

──お二方はどんな映画が好きなんですか?

北條 子供の頃に観た思い出深い作品は「スター・ウォーズ」「E.T.」です。あとは「ロッキー」や「ドランク・モンキー/酔拳」とか、70年代から80年代の作品が好きですね。「金曜ロードSHOW!」を担当してから一番好きになったのはディズニー&ピクサーの「リメンバー・ミー」で、マニアックなものよりは王道の作品をよく観てきました。

岡本 僕は歴史がもともと好きなので、史実をベースにしている映画が好きです。メル・ギブソンが主演と監督を務めた「ブレイブハート」とか。あとは「007」シリーズのようなスパイ映画も好きです。

「ブレイブハート」(写真提供:ICON PRODUCTIONS / Allstar Picture Library / ゼータ イメージ)

「ブレイブハート」(写真提供:ICON PRODUCTIONS / Allstar Picture Library / ゼータ イメージ)

──自分の好きな作品を番組で放送したいという思いはありますか?

岡本 それはないですね、個人の番組ではないので。邦画の時代劇は視聴率がよかったりするんですが、「ブレイブハート」のような洋画の時代劇はあまり数字が見込めなかったりしますし。趣味と放送は切り分けて考えてます。

北條 私も岡本さんと一緒で、自分の趣味で選んではいけないという思いがあります。「金曜ロードSHOW!」にふさわしいものをと考えているので「これを放送したい」という欲はないですね。月曜25時59分からの「映画天国」では、もう少し自由に幅広く放送していますが。

20作まとめ買いした「007」

──民間放送なので視聴率を最優先に考えないといけないとは思うのですが、それだけを基準に放送作品を選んでいるわけではないですよね? 視聴率以外に大切にしていることを教えてください。

北條 「金曜ロードSHOW!」は金曜21時からの放送で、まだ働いている方や飲みに行っている方がいる時間です。なので、家にいる方が子供と一緒に観られるファミリー向けの作品を重視しています。ワンパターンだと飽きられてしまうので、去年は話題になった「カメラを止めるな!」を流したりしました。あとはラグビーワールドカップの開催に合わせてクリント・イーストウッド監督の「インビクタス/負けざる者たち」を放送したり。その時々でオンエアする意義のあるものにはチャレンジしたいと思っています。

岡本 「午後のロードショー」は平日13時35分から週5回放送なので、メインの視聴層は定年退職された60代以上の男性です。そういった方々の好みを考えるとやはりアクションが多くなるんですが、ずっとアクションしか流していないと「この番組ってアクション映画しか流さないよね」というイメージになってしまうので、サスペンスなども入れて緩急を付けるようにしています。夏休みの時期は視聴層が変わるので、若い方が観ても楽しめるものを意識していますね。

──今年は新型コロナウイルスの影響で家にいる方が増えたと思いますが、放送作品を選ぶうえで考えが変わったことはありますか?

北條 やはり世の中は元気になれるポジティブな作品を求めていると思うので、明るい作品を多く流したいと考えています。5月に「天使にラブ・ソングを…」を放送したんですが、これは番組の公式サイトで行った「みたい映画リクエスト」で多くのリクエストをいただいたことがきっかけです。オンエア後の反響も大きかったので、ハッピーな作品を選んでいこうという思いも強まりました。

岡本 僕も同じです。観終わったあとに気持ちが明るくなるようないい映画をかけたいと思っています。昔は、過激なシーンがあっても子供は学校に行っていて観ないという理由でそのまま流すことがあったんですが、最近はカットしたほうがいいかなと意識することがあります。ただ週5回放送していて、年間200本以上のラインナップを組まないといけないので、最後に正義が勝って気持ちが晴れやかになる勧善懲悪の作品だけを集めるのは難しくて。

北條 そうですよね。同業としていろんな作品を世に出せるのがうらやましいと思う一方、大変なんだろうなという気持ちもあります(笑)。

岡本 はい(笑)。僕からすると、「金曜ロードSHOW!」はゴールデン帯なので予算が多く、大作を扱えるのがやっぱりうらやましいです。テレビ局に勤めるうえでは視聴率を取ることが重要なので、ファミリー層に刺さる映画をラインナップしたい気持ちはあります。ただ、もし予算的にそれが可能になったとして、ファミリー向けの映画を放送したら今の視聴者の方々が逃げてしまう可能性もあって。

──確かに、例えば「午後のロードショー」でハッピーなアニメ映画が流れたりしたら、今の番組ファンはぎょっとするかもしれません。

岡本 そうなんですよね。

──普段とは毛色の違った作品で言うと、去年「金曜ロードSHOW!」で「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」が放送されたのは意外でした。

「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」(写真提供:NEW LINE CINEMA / Allstar Picture Library / ゼータ イメージ)

「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」(写真提供:NEW LINE CINEMA / Allstar Picture Library / ゼータ イメージ)

北條 あれはチャレンジでした。ベースは家族視聴ですが、たまには攻めた作品をやりたい気持ちもあるので。「IT」は劇場公開時はR-15だったのでちょっとマイルドになるよう編集して、ホラーの入り口として子供たちにも観ていただきたいという思いでした。ホラーファンの方からは「なんでそこ切るんだよ!」という声もありましたが。

岡本 ははは(笑)。

北條 賛否両論ではありましたが、やってよかったなと思います。

──岡本さんはチャレンジ作として何かを放送した経験はありますか?

岡本 北條さんとは違った文脈でのチャレンジになるんですが、今年の1月から4月にかけて「007」シリーズ20作を一挙放送しました。新作の「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」に合わせた企画だったので、公開延期になって残念でしたが。海外の権利元としても「007」の中の人気作だけ売れたら困るので、「買うならまとめて買って」という感じだったんです。

北條 ああ、なるほど。

岡本 うちは権利などの問題でダニエル・クレイグ版は購入できず、ピアース・ブロスナン版までを一気に買って放送することになったんですが、早々に視聴率が取れないことがわかったりしたら「買った残りの作品どうするんだ」という事態になっていた可能性もあるので。そうはならなかったのでよかったですが、チャレンジでしたね。

──それでは、作品選定からオンエアまでにすごく苦労した作品はありますか?

北條 それはあまりないです。ただ今年はコロナの影響で、先々まで考えていた放送作品を8割くらい変更しました。アニメ版「美女と野獣(1991年)」のあとの枠が2週分空いてしまったことがあって、ディズニーさんに相談して「塔の上のラプンツェル」「トイ・ストーリー3」を放送したんですが、“3週連続ディズニーアニメ”と逆手に取っていい結果を得られたことがありました。あとは追悼放送も記憶に残っていて、去年モンキー・パンチさんが亡くなったときは「ルパン三世/ルパンVS複製人間(クローン)」、一昨年に高畑勲さんが亡くなったときは「火垂るの墓(1988年)」を放送しました。もともとその日にオンエア予定だった映画が、なぜか両方とも「コナン」(「名探偵コナン 天空の難破船(ロスト・シップ)」「名探偵コナン から紅の恋歌(からくれないのらぶれたー)」)だったりもして。

岡本 (笑)

北條 もちろんたまたまですけど(笑)。大変でしたけどすぐに放送の対応をして、多くの方に1つの作品を観ていただけたというのは地上波ならではだと思います。

岡本 「午後のロードショー」でも追悼放送はやっていて、今年エンニオ・モリコーネさんが亡くなった際には追悼文を入れて「夕陽のガンマン」をオンエアしました。直近だとショーン・コネリーさんの死去を知ったとき、11月3日に「レッド・オクトーバーを追え!」をオンエアすることが決まっていたので、編集でテロップを加えて追悼放送としました。

「金曜ロードSHOW!」で「ミスト」が観られる日は来るか?

──「金曜ロードSHOW!」では今年から人工知能(AI)を使った個人視聴率の予測を始めたというニュースを拝見しました。

北條 はい。去年8カ月くらい試行錯誤して誤差を詰めていって、個人視聴率で誤差1%以内になったので4月から本格的に活用しています。もちろんすべての作品で誤差1%以内になるわけではないんですが、平均としてそれくらいになっています。

岡本 それすごいですね。どうやったらそんなシステムを作れるんですか?

北條 興行収入はもちろんなんですけど、過去に放送したときの視聴率、SNSでの反響、映画サイトのレビュー、前番組からの流れ、新作の劇場公開合わせの放送かどうかなど、いろいろな要素をもとにしてます。

岡本 おお……すごくうらやましいシステム(笑)。

北條 それを放送作品の決定基準のすべてにはしないですが、1つの参考としては役に立ってます。

──岡本さんは視聴率が取れる作品と取れない作品を、どう判断していますか?

岡本 たくさん映画を観て、実際の視聴率と自分の感覚をすり合わせていくしかないと思っています。視聴率と感覚の誤差は常々発生しているので、ドンピシャで当たったときはうれしいですね。逆になんでこんなに視聴率がよかったのかなと思うこともあります。

──理由はよくわからないけれど、毎回視聴率がいい作品ってありますか?

岡本 スティーヴン・キング原作の「ミスト」です。得体の知れない生き物がたくさん出てきて、人も死にますし、何よりエンディングがあまりよろしくないですよね(笑)。楽しいストーリーではないんですが毎回数字を取るんです。

「ミスト」(写真提供:Weinstein Company / Photofest / ゼータ イメージ)

「ミスト」(写真提供:Weinstein Company / Photofest / ゼータ イメージ)

──なるほど。ちなみに「金曜ロードSHOW!」で「ミスト」を放送するのは厳しいでしょうか?

北條 バッドエンディングだからといって可能性がゼロというわけではないです。後味のいいものが番組に合っているとは考えてますが、そうではない作品がスパイスになったりもするので。

──ではいつか「ミスト」を観られる日が来ますか?

北條 (反応に困りつつ)……ゼロではないです。ただ可能性は高くはないかもしれませんね。

岡本 ふふ(笑)。

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