スタジオジブリでの仕事がよく知られる安藤、小西、本田だが、いずれも今監督作品とのかかわりは深い。「千年女優」では本田、「
「千年女優」の参加も飲みの場で誘われたという本田は、「今さんは気心が知れてる人間とやりたい。やっぱりマンガ家なので、人を集めるのは苦労したと思うんです。沖浦(啓之)さんや井上(俊之)さんとか、すでに売れっ子の人たちとは知り合いなんだけど、若手になると知り合いがいないから、自分(本田)を突破口にして若手の層を広げようとしていたのかも」と振り返る。また今との交流について「例えば怒ったりするんですか?」と聞かれると、「怒ります。といっても現場じゃなくて、制作には割とよく怒ってた」と本田。小西も「原画マンには気を使って優しかった」、安藤も「アニメーターに任せてくれる感じは強い」と語り、アニメーターをリスペクトする今の姿勢がうかがえた。
「今さんは意外と『ガンダム』が好き」というエピソードも。今がスタッフと集まって夜通しで「ガンダムナイト」を開くことがあったそうで、本田と安藤は「『ここでこのセリフが来る』って先に言っちゃうんですよね」「僕のときもそうでした」と笑い合う。また自身の関わった現場での苦労を聞かれると、小西は「東京ゴッドファーザーズ」について「あんまり大変な記憶はなくて、いい思い出しかないです。思い入れの強い作品で、やることがなくなる最後の日まで一緒にいた。最後のラッシュチェックを終えて、残った4人ぐらいで朝方にファミレスでお茶したのが懐かしい」と回顧した。
いずれも今作品でキャラクターデザインを担当した3人だが、それぞれ関わり方は若干違っていたようだ。「千年女優」に関して本田は「参加したときには、大体キャラのラフ的なものは揃っていましたね。今さんのラフに合わせて設定を書いたので、完全に自分の絵っていうわけではないです」と説明。「東京ゴッドファーザーズ」について小西は「もう今さんのイメージのイラストがあって、セル調で色もついていて。何をやればいいんだろうって」と控えめに答える。安藤は「パプリカ」「妄想代理人」いずれも自由にやらせてもらったと話し、「ファーストインプレッションを描いたものを面白がってもらった」と振り返った。
今の功績として、トークショーの中でも話題に上がったのがレイアウト。本田は「やっぱり画力があるのと、整え方が大友(克洋)さんに似てる。最低限の線の量で効果的な画面を作ることにすごく長けている人」と分析。安藤も「業界的にはレイアウトに与えた影響が大きいんじゃないかなと。本当にあれだけのレイアウトを描ける人はいない」と絶賛。小西は自身の描いたレイアウトを、今から「ビルに愛情がない」と言われて直されたというエピソードを明かした。また3人ともスタジオジブリ作品との関わりが深いことから、宮崎駿のレイアウトとの違いについて話す場面もあった。
それぞれが今作品で印象に残るものを聞かれると、本田は「『千年女優』の瓦礫の描き方がすごくうまい。もともと何だったのかちゃんとわかる瓦礫。真似できない」と細かい部分に着目。小西は「千年女優」について「平沢(進)さんの音楽の力も大きいんですが、高揚感がすごくある。アニメでこういうものはほかにない。こんな気持ちに持っていけるんだって思いました」と、アニメーション映画としての感動を語った。安藤は今が演出したOVA「ジョジョの奇妙な冒険」を挙げ「『ジョジョ』は鮮烈でしたし、『PERFECT BLUE』を観たときはショックを受けました。カット割とかシーンのつながりでケレンを出していくのが衝撃的でした」とそのインパクトを伝えた。
最後に「今敏がアニメ業界に与えたものは?」という質問が投げかけられた。本田は「よくも悪くも、すごくお手本になるものを残されたなと。もし今さんの作品がなかったら、もっとこの業界はゆるかったかもしれない(笑)」と表現し、小西は「いろんな人のお手本になっていると思いますし、自分の中ではジブリでの経験とともに基礎になっています」と伝える。安藤は「レイアウトの影響はよくも悪くも大きく、業界にある程度の足枷を作ったと思います。今さんは亡くなるまで『作り続ける』ことをテーマにしてしまってたような気がしてて、存命だったら、そうではない次のステップとして、あの演出力と画力で何が作れたのかはすごく気になるところです」と、会場に集まったファンと「もっと今敏の作品を観たかった」という思いを共有し合い、イベントを締めくくった。
「第3回新潟国際アニメーション映画祭」は3月20日まで新潟市内で開催中。長編アニメーションを中心とした映画祭で、国内外の長編作のコンペティションや、ゲストを招いた上映プログラムが展開される。
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しまふく @simafuku
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