岩戸鈴芽役の
2021年12月に行われた同作の制作発表記者会見で、「映画館に足を運ぶ理由になるような作品を作りたい」と語っていた新海監督。その思いについて改めて問われると、「1つは大きな画面で体験するのにふさわしい映像。ディズニーの影響を受けて始まった日本のアニメーションの到達点というか、そういう形のアニメーション映画になったと思う」と自信をのぞかせる。さらに「もう1つは『君の名は。』『天気の子』とやってきて、3本目は劇場でしか聴けない音を入れたかった。音の連なり、劇場でしか体験できない音楽が作りたい。コロナ禍に作り始めた作品でもありますので、積極的に家から出てもらえるように、そんな理由の1つになればいいなという大それた望みを抱えながら作ってきた気がします」と続けた。
音楽制作について「脚本を書き終わった後に感想を言ってほしいなと思って洋次郎さんに送って。数カ月後に音楽の形で感想が返ってくるんですよ(笑)。いつものパターンなんですけど」と振り返る新海監督。「君の名は。」「天気の子」に引き続き、音楽を担当している野田は「新しい起爆剤というか、掛け算になるような要素が欲しいと話してました」と、今作で新たに陣内とタッグを組むことになった経緯について明かす。陣内は「すでに2作も作られているところに入っていくのは緊張感があったし、自分がこれまでやってきた作品とはテイストが違うので、悩んだこともあった」と述べながらも「お話を伺ってコンテも見せてもらって、自分にできることがあると思えた」と当時の心境を明かした。
そして、完成した映画を観たばかりだというキャスト陣が感想を語る。原は「本当に言葉にできないぐらい素晴らしくて……。寝る間を惜しんで音楽や映像をギリギリまで作ってくださった制作スタッフさんと一緒に登壇したかったです」とスタッフへの感謝を述べる。続く松村は「魅力的なシーンをあげ始めたらきりがないんですが、観終わって思ったのは、何度も笑って何度も涙が出て、でもそのたびにその理由と種類が違う。自分の“面白い”という感情にこんなに幅があったのかと驚きました」と語った。
今日観たばかりだという染谷は「胸に突き刺さりすぎて、もう帰ろうかなと思ったぐらいぐっと来ました(笑)」と笑いを誘いながらも、「自分も一緒に旅をしてるような気持ちになって、何回も心を持っていかれた。体験したことのない、観たことのない映画があったというのが正直な感想です」と絶賛。また前のめりに映画を観ていたという伊藤は「キャラクターたちがみんなちゃんと人間らしくて、それがすごく素敵で。器用なわけではないけど一生懸命生きてる、じわっと熱くなる感覚でした」と感動を伝える。さらに花瀬は「私も染谷さんと一緒で観たことないアニメを観たという感覚でした。まるで自分も戸締まりしてるような気持ちになれる参加型の映画」と独特の表現で讃えた。
続けてキャスト陣はアフレコを振り返る。「右も左もわからないまま現場に入って、新海さんが1から100まで教えてくださって。パートが終わるごとに『素敵でした、ありがとう』と言葉をいただけて、なんて夢のような幸せな時間だったんだろうと」と、とにかく楽しい時間だったと語る原。また松村が「新海さんが僕らのことを“楽器”と表してくれたことがあったんですが、僕が演奏するというより、新海さんが僕を演奏することで草太が完成するような。それぐらい僕のすべて預けたアフレコでした」と話すと、新海監督も「北斗くんは、映画のために自分自身を全部委ねるんだと切り替わった瞬間があった。そこからより草太らしくなっていったと思います」と松村の演技の変化を感じていた様子だった。
さらに記者から東日本大震災を題材にした理由について質問が飛ぶと、新海監督は「僕の作品を観る観客の多くが10代で、共通体験としての震災は薄くなっていますが、今ならまだ同じ気持ちを共有できるかもしれないという思いがあった」と明かす。さらに「2011年3月に東京で桜が咲いていたことに心底驚いて。こんな状況でも桜は美しく咲いて、どこまでも冷徹で冷酷で僕らに無関心で、でも美しい。その冷徹さと鋭利な美しさを、エンターテインメントとして映画にできないだろうか、それはこういう形なんじゃないかと思いながら作ったのが『すずめの戸締まり』でした」と続けた。最後は「まずはエンターテインメントを楽しんでください。今、もしかすると日本で一番面白い映画かもしれないので。わからないけど(笑)」という新海監督の言葉で、会見が締めくくられた。「すずめの戸締まり」は11月11日に公開。
「すずめの戸締まり」
2022年11月11日(金)全国東宝系にて公開
スタッフ
原作・脚本・監督:
キャラクターデザイン:田中将賀
作画監督:土屋堅一
美術監督:丹治匠
製作:「
制作プロデュース:STORY inc.
制作:コミックス・ウェーブ・フィルム
配給:東宝
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