「普段あるものが何ひとつ参考にならない」弐瓶勉の世界観をアニメにする難しさ

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「フジテレビ『+Ultra』ラインナップ発表会2022」が本日1月20日に開催された。発表会の模様はYouTubeで生配信され、「エスタブライフ」「大雪海のカイナ」という2作品の情報が明らかになった。

「エスタブライフ」からの登壇者。左からスクウェア・エニックスの白井慎一氏、ポリゴン・ピクチュアズの上村涼介氏、谷口悟朗監督、橋本裕之監督、スロウカーブの米森裕人氏。

「エスタブライフ」からの登壇者。左からスクウェア・エニックスの白井慎一氏、ポリゴン・ピクチュアズの上村涼介氏、谷口悟朗監督、橋本裕之監督、スロウカーブの米森裕人氏。

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2018年に設けられたフジテレビの深夜アニメ枠「+Ultra」。高品質な作品を世界に向けて届けることを掲げ、これまで「キャロル&チューズデイ」や「BEASTARS」、現在放送中の「平家物語」といったアニメを手がけてきた。2021年9月にはアメリカのアニメ配信サービス・クランチロール、国内の企画・宣伝会社であるスロウカーブとの共同製作体制を発表。本日の発表会前半では3社の代表者が一堂に会し、ニッポン放送アナウンサー・吉田尚記の司会のもと、今後のビジョンについて語った。

左からフジテレビの森彬俊氏、クランチロールの山口貴也氏、スロウカーブの尾畑聡明氏。

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「全世界の人に響くコンテンツを作るうえで、海外の知見を企画段階から入れていきたい」という思いのあったフジテレビの森彬俊氏と、「開発制作運用まで一貫して、長期にわたり一緒にやれるパートナーを探していた」というクランチロールの山口貴也氏。そんな2人を引き合わせたというスロウカーブの尾畑聡明氏は、クランチロールとタッグを組んだことについて「僕らには『海外のお客さんはこれが好きだろう』という思い込みがあったが、それがまったく違っていた。すごくダイレクトに海外の情報が得られて、それを企画に活かすことができる」と気付きを語る。一方の山口氏も、「我々からすると、『海外でこういうものが好まれる』という意見を真摯に受け止めて検討していただける」と話し、刺激を与え合いながらアニメ作りに取り組んでいることを伝えた。

「エスタブライフ」ビジュアル (c)SSF/エスタブライフ製作委員会

「エスタブライフ」ビジュアル (c)SSF/エスタブライフ製作委員会[拡大]

発表会に先がけてタイトルと、谷口悟朗が原案・クリエイティブ統括を務めることが明かされていた「エスタブライフ」。そのステージには谷口監督をはじめ、TVアニメの監督を務める橋本裕之、スロウカーブの米森裕人プロデューサー、アニメーション制作を手がけるポリゴン・ピクチュアズの上村涼介氏、そしてゲームの制作を担当するスクウェア・エニックスの白井慎一氏が登壇した。TVアニメ、映画、ゲームの展開が同時発表された同作について、谷口監督は「アニメだけでなく、いろんなメディアの人が入ってこられる“世界”を最初に作っちゃおう」と考えたと話し、そのために「多様性を認める世の中を具現化した世界を作ろう」と構想していったという。さらに逆算する形で、人類が1つの価値観に染まって滅びないよう、AIに管理されているという設定が作られていったと明かした。

左から谷口悟朗監督、橋本裕之監督、スロウカーブの米森裕人氏、ポリゴン・ピクチュアズの上村涼介氏、スクウェア・エニックスの白井慎一氏。

左から谷口悟朗監督、橋本裕之監督、スロウカーブの米森裕人氏、ポリゴン・ピクチュアズの上村涼介氏、スクウェア・エニックスの白井慎一氏。[拡大]

TVアニメ「エスタブライフ グレイトエスケープ」のテーマは「逃亡」。監督を務める橋本は、「逃げることは悪いことじゃない。無理してやる必要はないし、逃げた先にも新しい人生が生まれるかもしれない。“逃げる”という言葉にはマイナスイメージがありますが、それをプラスに変えていく」と志を語る。一方で、自分がスタッフィングされたことについて「かわいい女の子をお前が作るんだぞ、と期待されているのかも(笑)」と口にすると、谷口監督は「当たり前じゃないですか」ときっぱり。ポップでかわいいデザインの少女をメインキャラクターに据えた作品は、ポリゴン・ピクチュアズにとっても初めての挑戦ということで、上村氏は「普段うちの作品を観てくださっていたユーザーの方以外も観てくださるのではと。橋本さんから、女の子をかわいく見せるノウハウを、手取り足取り叩き込んでいただいています」と意気込んだ。

「大雪海のカイナ」からの登壇者。左から講談社の仲間圭吾氏、安藤裕章監督、ポリゴン・ピクチュアズの守屋秀樹氏、ポリゴン・ピクチュアズの赤木優子氏。

「大雪海のカイナ」からの登壇者。左から講談社の仲間圭吾氏、安藤裕章監督、ポリゴン・ピクチュアズの守屋秀樹氏、ポリゴン・ピクチュアズの赤木優子氏。[拡大]

そして発表会で初の情報解禁となったのが、弐瓶勉とポリゴン・ピクチュアズによる新プロジェクト「大雪海のカイナ」。アニメ「シドニアの騎士」「BLAME!」と長くタッグを組んできた両者だが、このプロジェクトは2014年、「シドニアの騎士」第1期の頃に動き出したものだという。ポリゴン・ピクチュアズの守屋秀樹氏によると、「弐瓶さんが本気で王道のファンタジーを描いた作品が見たい」との思いが企画のきっかけとなったそうで、「来年ポリゴン・ピクチュアズも40周年を迎えるので、セルルックCGの集大成的な作品にしたい」と意気込みを述べる。また「シドニア」シリーズにも当初から携わり、今作では監督を務める安藤裕章は、「僕の何割かは弐瓶勉でできあがっていると思います。『シドニア』で声をかけてもらったのもうれしかったですが、オリジナルというところで楽しく作らせていただきました」と笑顔を見せた。

「大雪海のカイナ」原案ビジュアル (c)弐瓶勉/大雪海のカイナ製作委員会

「大雪海のカイナ」原案ビジュアル (c)弐瓶勉/大雪海のカイナ製作委員会[拡大]

弐瓶を担当する講談社の仲間圭吾氏は、「講談社の担当チームと話しているときと、アニメの会議とでは、まったく違う顔をしている。本当にすごい人」と話す。マンガの連載がある中で、50枚、100枚のイメージボードを並行して描いたという弐瓶。さらに弐瓶の手がける世界観やキャラクターの服装について、安藤監督は「独創的なんですが、すべて物語上の意味があってデザインされている。今作は日常のルールとまったく違うルールで考えられたデザインなので、普段あるものが何ひとつとして参考にならず、動かすのに苦労しました」と敬意をにじませた。

左から講談社の仲間圭吾氏、安藤裕章監督、ポリゴン・ピクチュアズの守屋秀樹氏、ポリゴン・ピクチュアズの赤木優子氏。

左から講談社の仲間圭吾氏、安藤裕章監督、ポリゴン・ピクチュアズの守屋秀樹氏、ポリゴン・ピクチュアズの赤木優子氏。[拡大]

「大雪海のカイナ」は、2月26日発売の月刊少年シリウス4月号(講談社)で「獣の奏者」の武本糸会によるマンガ連載がスタート。仲間氏は「ここまで弐瓶先生の頭の中にあるものを描ける作家さんはそうそういない」と太鼓判を押した。そして安藤監督は、「優しい絵なのにとても緻密で、説得力がある。こちらもがんばります。今日も会社で、自宅で、スタッフたちががんばって作っていますので、アニメのほうも期待してください」とメッセージを贈った。

TVアニメ「エスタブライフ グレイトエスケープ」は4月、「大雪海のカイナ」は2023年1月にフジテレビ「+Ultra」ほかで放送開始。なお本日の発表会の模様は、YouTubeでアーカイブ視聴が可能だ。

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TVアニメ「大雪海のカイナ」

フジテレビ「+Ultra」ほかにて2023年1月より放送予定

スタッフ

原作:弐瓶勉
監督:安藤裕章
脚本:村井さだゆき、山田哲弥
アニメーション制作:ポリゴン・ピクチュアズ

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