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当初の公開予定だった3月から2度の延期を経て、10月31日に念願の公開を迎えた「映画プリキュアミラクルリープ」。今作で初めて「プリキュア」シリーズに携わった深澤監督は「率直にすごくうれしいです。7カ月近く、ずっと肩に『ミラクルリープ』を背負って過ごしてきたので」と感慨深げに述べ、「(24時からの)最速上映のある日は、早めに寝ようとしたんですが寝られなくて。結局2時くらいに目を覚まして、朝までエゴサして(笑)。すごくいい反応だったので、ようやく肩の荷が下りて寝られました」と、緊張とともに迎えた公開日を振り返った。作画監督の板岡は「個人的には、公開は無理だと覚悟はしてました」と当時の胸中を明かし、「でも、デカいスクリーンで観てもらうために描いたものだから、本当によかったです。自分たちはあまりに近くでこの作品を観てきたので、本当に面白いか判断しかねるんですよね。みんなが面白いって言ってくれるまで『面白いですよね』とは言えなかったので、本当にありがとうございます」と改めて観客に感謝を述べた。
“永遠に明日がこない世界”に変えようと目論む敵・リフレインにより、プリキュアが同じ1日を繰り返す今作。いわゆるタイムリープものになった経緯について、内藤プロデューサーは「春に公開予定の映画だったので、一抹の寂しさを内包する季節に、それでも前に進もうよっていうメッセージを乗せたいと考えました」と話し、「本編が約60分なので、その中で各キャラクターの個性を引き出すと考えたとき、リアル脱出ゲームのような、決められた時間の中で、閉じ込められた環境を打破する、というのが面白いんじゃないか」とその着想を明かした。板岡が「よく引き受けましたね」と深澤監督に投げかける通り、同じ場面を繰り返し描く必要があるタイムリープものを短い尺の中でやることは、決して簡単ではない。村山は「作画が楽になるかと思ったんですが、結局この2人(深澤監督、板岡)がめっちゃ描いてるから関係なかった(笑)」と制作を振り返り、深澤監督は「チャレンジだったんですが、結果としてうまく見せることができたかなと。劇場に行ったときに、1ループ目で時間が戻った場面で、子供が『あ、戻った』って言うのが聞こえて、ちゃんと子供にも伝わったんだなと思いました」と喜びを語った。
映画オリジナルキャラクターである“明日”をつかさどる精霊・ミラクルンと、“昨日”をつかさどるリフレインの誕生秘話も明かされた。「シナリオ打ちに興味本位でくっついていったら、あんまりやることがなかったから村山さんの横で落書きしてて、『こんなの思いついたんですが』って出したのがミラクルンです」と板岡が説明すると、そのときに描かれたミラクルンについて村山は「天才だと思いました」と評する。一方のリフレインは「僕の中にイケメンの引き出しがなかったので、最初はハゲのマッチョだった(笑)」と板岡。深澤監督も「見た目から強さを出したかったんですが、マッチョが社内で全否定をくらったんです(笑)」と、現在のキャラクターに至るまでの紆余曲折を明かした。
板岡描き下ろしの色紙をプレゼントする抽選会も行われ、「そろそろお時間が……」と司会者が締めくくろうとするも、板岡が「とっておきの話を用意してきたんだけど」と切り出し、観客は大きな拍手で後押しする。無事に許可を得て話し始めた板岡は、「仕事に向かう途中で青山(充)さんに会ったんですよ。僕が『キャラクターが多くて大変ですねー』なんて言ったら、『どのくらい出るんですか』って聞かれて、13人ですと。そしたら青山さんが『まあね、13人ならね』って(笑)」と、「プリキュアオールスターズ」シリーズの数々で作画監督を務めてきたアニメーター・青山充とのエピソードを披露し、ファンを喜ばせた。そんな板岡に深澤監督は「でも、板岡さんが第2の青山さんになるんじゃないかと思いますよ。アクション描けるし、手が速いし、プリキュア大好きだし」と言うと、板岡は「僕、手が速いんじゃなくて、会社にいる時間が長いんです」と返して笑いを誘った。
最後に深澤監督からも、とっておきの話が。「実はこの作品はコロナの影響でセリフを直したりカットを切ったりして、再ダビングをしていて。再ダビングをしたことで、音が格段によくなったんです」と明かす。自身も既に3回劇場で鑑賞しているという深澤監督。「そういうのを劇場で体感すると本当に気持ちいいので、ぜひ何回も劇場に足を運んで観ていただけたらなと思います」と呼びかけた。
たいぷかのん/スーたん @typekanon
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