評論家・荻上チキの紹介で、飲み会の場で知り合ったという2人。鳥飼は「もともと(あっこゴリラの)曲を聴いていて。一時期ラップが好きで、荻上さんとラップでLINEとかしてたんです(笑)。それで『あっこちゃんと今度飲むんだ』って聞いたときに、いいなあと言って飲み会にお邪魔した形です」と説明する。あっこゴリラはその日に「前略、前進の君」を鳥飼から渡されたそうで、「帰りの電車で速攻で読んで『ヤバい!』みたいな」と興奮気味に感想を伝えた。
ここからはあっこゴリラが、「前略、前進の君」の中で好きなエピソードを紹介していく。性と恋にまつわるオムニバスで構成されている本作の中で、あっこゴリラが最初にお気に入りとして挙げたのは第2話「それが恋。」。好きな相手が別の女子に片思いしているという内容の本作について、あっこゴリラは「『私だってそんな風に自分の気持ちが1ミリも間違ってないって目で世界を見てみたいよ』ってラインがブチくらいました」と述べる。これは恋心を暴走させた主人公が、ライバル視する女子と対峙した際に言われたセリフ。あっこゴリラは「この気持ちにすごく覚えがある」と共感し、「昔、何を信じたらいいかわかんないんだけど、何かを信じたくて……自分のこと木に縛りつけたかったんです。自分は節操なくピョンピョンいっちゃうタイプで、ずっと不安定だったので。だからこうやって自信を持って怒れる人(主人公)ってすごいと思ったんです。『そこまでまっすぐにいけるってすげえ!』って」と話す。鳥飼はこのエピソードについて「男の子が間に挟まることで、女同士の連帯が深まったりとか亀裂が走ったり、強い波が起こるじゃないですか。そのときって、もう男の子はどうでもいいんですよね。その女同士の感じっていうのが嫌なときもあるし、心強いときもある。それに近いことをずっと今も描いてるような気がします」と考察した。
次にあっこゴリラが印象深いと挙げたのは、“普通”になりたくて自分の体を売る女子高生を描いた第3話「普通」のあるシーン。あっこゴリラは中学生のときに生理になるのが周りより遅かったというエピソードを織り交ぜ、「中学のときは周囲からはみ出たくなかったっていうか、はみ出てるというふうに見られるのがキツかった。だから生理になったときは、『普通だったんだ、よかった』って思って。でも心からの安心感というよりかは、ちょっと寂しいっていうのが、このシーンを見るとハッと思い出すんですよね。『よかった……』なんだけど、空っぽという感じ」と明かす。それを受け、鳥飼は「こういう仕事だと周りの個性が強すぎて何が普通かわからなくなっていくんだけど、結婚とか子供を産んだりすると“普通”っていうのが、地平線がまた見えてくるんです。『それじゃないといけないのかな?』みたいなのがいつも横にある感じが、中学の頃と同じで。引き戻されちゃうんですよね」と返した。
また鳥飼の担当編集・金城小百合氏からは、第4話「虹の彼方に」についての裏話も。恋をした女の子のときめきを描いた本作は、あっこゴリラも「この話だけ(テイスト)違いますよね!(笑)」と言ってしまうほど。金城氏は「ネームが上がったときも『どうした、鳥飼さん』みたいな……(笑)。後日談なんですが、ちょうどその頃、浅野いにお氏と付き合い始めた頃だったんですよね」と、9月に鳥飼が結婚を発表した浅野の名前を挙げる。それを聞いていた鳥飼が「それもあるかもしれない……影響されやすいので」と照れ笑いを浮かべると、金城氏は「すごいキラキラしたものを描くという、そのときに鳥飼さんの純粋さを知りました」と続けた。
イベントの終盤では、鳥飼があとがきで書いた一節の話題に。「私はあなたを救えない。だから私は私を救う。私たちは、私たちを救える」と司会が読み上げると、あっこゴリラは「そこはもうパンチライン! めっちゃ好き!!」とテンションを上げる。「前略、前進の君」を通して、鳥飼が伝えたかったことが詰まっているこの一節。あっこゴリラは「バラバラですからね、当たり前に全員は。バラバラだから最高だし、みたいな。『私も最高だしお前も最高だし』ってシンプルにいけたらいいっすよね」と鳥飼に問いかける。鳥飼も「そう、本当にそれだけのことなんだよね。ただ『私も最高だしお前も最高だし』っていうのだけで乗り切れない瞬間があって、そのときだけは“私たち”(という括り)でやってくしかないよね」と言う。その言葉にあっこゴリラも大きく頷いた後「私は全員、“レペゼン自分”だと思ってるんです。レペゼンって“出身”みたいな意味なんですけど、家族とか血縁とかじゃなく“自分”。1人ひとりバラバラで、そこが最高!みたいな、ね」とまとめ、イベントは幕を閉じた。
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【イベントレポート】鳥飼茜「前略、前進の君」の一節に、あっこゴリラ「それ、パンチライン!」
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