コミックナタリー記者が選ぶ「この15年に完結したマンガ」

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稲垣理一郎・村田雄介「アイシールド21」全37巻(集英社)

「アイシールド21」37巻 (c)米スタジオ・ビレッジスタジオ/集英社

「アイシールド21」37巻 (c)米スタジオ・ビレッジスタジオ/集英社

自宅の本棚にある対象作品の中で、一番古いものはなんだろう……と目についたのが「アイシールド21」でした。「Dr.STONE」「トリリオンゲーム」の稲垣理一郎さんと、「ワンパンマン」の村田雄介さんがタッグを組んで描いたスポーツマンガと言ったら、15年前を知らない人にもそのすごさが伝わるかもしれません。
よく友情・努力・勝利と言われますが、このマンガは決して努力したら勝てるという類の作品ではありませんでした。努力だけではどうにもならない天才がゴロゴロいる世界で、持たざる側の人間は、自分より優れた体格や能力を持つ相手にどう挑むのか? 作中で、アメリカンフットボールの闘いを制するのは“パワー、スピード、作戦(タクティクス)”だと表現されます。ややもすると地味になってしまいそうな、その作戦(タクティクス)の部分の面白さを、巧みなストーリー構成とダイナミックな画面描写で、少年マンガ的ケレン味たっぷりに楽しませてくれるのが「アイシールド21」のすごいところ。「ないもんねだりしてるほどヒマじゃねえ あるもんで最強の闘い方探ってくんだよ 一生な」というセリフも、そんなテーマを的確に言い表しているように感じる、好きなセリフの1つです。
大人になってからのほうがたくさんマンガを読んでいて、毎月のように素晴らしい作品に触れていますが、こうやって思い出してみると、やはり学生時代に熱中していたマンガは特別かもしれません。

似た理由で、昨年完結した「マテリアル・パズル ~神無き世界の魔法使い~」を挙げるか悩みました。2002年から追いかけていたシリーズの完結は、自分の青春の1つが終わったようで、感慨深い気持ちがあります。同作の連載開始時、土塚理弘さんにインタビューさせていただいた経験は忘れられません。続編の構想があるようなので、また彼らの活躍が見られる日を心待ちにしています。

(文 / 鈴木俊介)

アイシールド21(37)

村田雄介, 稲垣理一郎「アイシールド21(37)」
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荒木飛呂彦「STEEL BALL RUN」全24巻(集英社)

「STEEL BALL RUN」24巻 (c)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

「STEEL BALL RUN」24巻 (c)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

私が「この15年に完結したマンガ作品」をあげようとすると、どうしても大人になってから読んだ作品に偏ってしまいますが、唯一、子供の頃からずっと読み続けている作品から選ぶことができたのが「STEEL BALL RUN」でした。私が「ジョジョ」シリーズを初めて読んだのは第3部ですが、大人になった今でもシリーズが続いているのは幸せなことだなと思いますし、「ジョジョ」が続いているから私はマンガを読み続けていられるのかもしれないな、と思ったりします。

と言ってもシリーズの中で今回の条件に合ったからという理由で「SBR」を選んだわけではありません。「ジョジョの何部が一番好きか?」という議論に、ファンなら誰もが頭を悩ませた経験があると思いますが、私は迷わず「SBR」をあげてきました。「7部以降読んでない」なんて声をたまに耳にしますが、完全に人生損してますよ、とお伝えしておきます。

何かを好きであることの理由を説明するのはあまり得意ではないのですが、私はマンガに限らず“キャラクター”というものに重きを置くタイプの人間なので、ジョニィ・ジョースターとジャイロ・ツェペリという2人の主人公が魅力的だったことは大きいと思います。身体的なハンデだけではなく、精神的にも未熟な人間として描かれるジョニィには、これまでの歴代の主人公にはない新鮮さと魅力を感じましたし、そんな問題児ジョニィを支える相棒のジャイロの半端ない包容力……。ジャイロに関しては正直とにかくめちゃくちゃカッコいいに尽きるんですが、個人的にはジョジョの相棒役における最高傑作なんじゃないだろうか?と思っています。アニメ化、楽しみにしてますので……。

悩んだのは高橋ヒロシ先生の「WORST」でした。実際に読んだのは作品が完結した後でしたが、前作の「クローズ」も含めて一気読みしてドハマリ。河内鉄生が事故死したのがあまりにもつらくて、その先が読み続けられずしばらく読むのを放棄する、という私にしては珍しい経験をしました。数ある2次元のキャラクターの死の中でもトップクラスのトラウマで、そういった意味でも非常に印象深い作品です。私が一番マンガを熱心に読んでいたのは学生時代なので、この企画の基準で作品を選ぶのは難しかったのですが、「クローズ」「WORST」は大人になった今だからこそ刺さった作品ではないかと思います。この世にはヤンキーマンガからしか得られない栄養があることを学びました。

(文 / 増田桃子)

STEEL BALL RUN(24)

荒木飛呂彦「STEEL BALL RUN(24)」
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小林尽「スクールランブル」全22巻(講談社)

「スクールランブル」22巻

「スクールランブル」22巻

もしも自分のオタク的人生の歩みを変えようと思ったならば、私は「スクールランブル」と出会った2004年10月5日にタイムマシンで向かい、テレビのリモコンを取り上げるだろう。あのときチャンネルを12に合わせたテレビから聴こえてきた「グルグル回るグルグル回る♪」という堀江由衣さんの歌声と、「なぜこのアニメが18時に!?」という衝撃は、私の人生を変えるのに十分だった。

「スクールランブル」は、登場人物たちのまっすぐな「好き」という気持ちに溢れたラブコメディだ。主人公・塚本天満と、もう一人の主人公・播磨拳児の「好き」という思いは、初登場回からはっきりとセリフとして描かれ、その「好き」という思いが空回りするとき、強すぎるとき、それが“コメディ”として読者を笑わせてくれる。しかし、私はそんなキャラクターたちの「好き」なものに全力な姿にカッコよさを覚えた。小林尽先生の繊細なタッチから生まれるキャラクターたちがカッコよく見えれば見えるほど、シュールなギャグや行き過ぎた行動といった“コメディ”部分の面白さは際立ち、普段コメディリリーフ的な役割を担う天満が、ふとしたときに見せる、恋する乙女な表情が魅力的に映り、私の心を何度も射抜いた。

「アニメの先を知りたい」と、表紙の美少女に気恥ずかしさを感じながら、コソコソと購入した1巻。「スクールランブル」との邂逅によって、「好き」なものに全力な人のカッコよさに気づかされてからは、自分の「好き」なものに胸を張れるようになり、親に見られるのもお構いなしに、本棚の一番いいスペースに「スクールランブル」の単行本を置き続けた。そして単行本の先を知りたいと、掲載誌である週刊少年マガジンを手に取り、「魔法先生ネギま!」に出会い、声優のよさを知り、なんやかんやあってコミックナタリーという「好き」を発信できる職場で働けている。いつか私の仕事が、誰かの人生を変えるマンガとの出会いのきっかけになれば、これほどうれしいことはない。

あのとき深夜ではなく夕方から「スクールランブル」が放送されていたから私はここにいる。テレビ東京さんありがとう!

(文 / 粕谷太智)

School Rumble(22)

小林尽「School Rumble(22)」
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けらえいこ「あたしンち」全21巻(朝日新聞出版)

「あたしンち」21巻

「あたしンち」21巻

持病で通院が多かった小学生時代、長い長い待ち時間がつらかったため、病院の隣にある本屋で親に単行本を買ってもらったのが出会いだったと思います。「娘さんが好きだと聞いて」と親の知人がたんまりとくれる読売新聞日曜版から、「あたしンち」のみ切り抜いてノートに貼り、やたらにかさばる“単行本”を作っていたこともありました。そんなに読みたきゃ読売新聞を取りなさいよというご指摘もあるかと思うのですが、実家は朝日新聞を取っており、「ののちゃん」のスクラップもライフワークだったので。待とうよ、新刊。

立花家の面々が特に何か起きるわけでもない毎日を、だいたいは笑ってときに怒ったり落ち込んだりしながら、単行本21巻分にわたって過ごしている様子がただただ愛おしかった。なぜだか、遠くに暮らす親戚家族の様子を定期的に教えてもらっているような気持ちで読んでいました。それだけに、「♪はなはだ、とーとつですが」と訪れた最終回が衝撃で、しばらくロスに陥っていたのですが、私の大好きな家族たちは「あたしンちSUPER」という名前で帰ってきてくれました。泣くほどうれしかったのを覚えています。

読み始めた頃はユズヒコよりもずっと年下でしたが今やすっかりみかんの倍近い年齢になり、おそらくお母さん・お父さんと同年代になっても、きっと読み返していると思います。今は単行本ですべて持っているので。
「水は海に向かって流れる」か「ばらかもん」か……とも悩んだのですが、登場人物の暮らしぶりがよく見える作品を好むようになったのも、「あたしンち」がきっかけかもしれません。

(文 / 佐藤希)

あたしンち(21)

けらえいこ「あたしンち(21)」
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古舘春一「ハイキュー!!」全45巻(集英社)

「ハイキュー!!」45巻 (c)古舘春一/集英社

「ハイキュー!!」45巻 (c)古舘春一/集英社

有名すぎるほど有名な作品で、今回のランキング上位に食い込むことも間違いないのだが、あえて挙げたい。なぜなら「これが沼ってやつか……(眩い光に包まれながら)」と、人生で初めて感じたマンガだからだ。とあることがきっかけで原作の単行本を読み始めたのだが、ページをめくる手が追い付かなかったのをよく覚えている。そこから週刊少年ジャンプ(集英社)を毎週買う日々がスタート。睡眠時間を削ってアニメ「ハイキュー!!」シリーズを追い、劇場版総集編「青葉城西高校戦『ハイキュー!! 才能とセンス』」、「白鳥沢学園高校戦『ハイキュー!! コンセプトの戦い』」は舞台挨拶付きの初日に足を運んだ。さらにはハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」に夢中になり、古舘春一先生の直筆原稿をこの目で拝みたくて、宮城・仙台市で開催された「ハイキュー!! 」の原画展にも日帰りで来訪。アニメ映像と珠玉の楽曲が融合した「ハイキュー!!コンサート」、アニメのオープニング・エンディングアーティストを集めた「ハイキュー!! 頂のLIVE」、アーツ千代田3331の体育館を使った展示イベント、コラボカフェ、同人誌即売会etc。とにかくオタ活が滾って仕方なかった。

なんで沼に堕ちたのか。工夫が凝らされたリアルな描写、影山・日向をはじめとする魅力的でしかない登場キャラクターたち、勝者だけでなく敗者にもスポットを当てた面白すぎるストーリー展開など、見どころを言い出したらキリがないが、何よりも「バレーボールってこんなに面白いスポーツだったのか」と気付かせてくれたのが一番大きい気がする。実際に高校バレーを体感したくて、当時住んでいた地元のバレー部を応援しに行ったのだが、墨田区総合体育館で嗅いだ“生エアーサロンパス”の匂いは、たぶん一生忘れないだろう。そして当時はまだ東京体育館で行われていた、春の高校バレーの観戦。舞台に立って戦う選手、彼・彼女らを応援し見守る観客たち、スタッフ・関係者の方々、その誰もが本当に当事者でプレイヤーだった。きっと「ハイキュー!!」に出会えてなかったら、知り得ない感情だったように思う。完結こそすれこの作品は、自分にとって15年、20年とずっと心に残り続けるバレーマンガであることに違いないのだ。烏養コーチの名セリフ「下を向くんじゃねえええええ!!! バレーは!!! 常に上を向くスポーツだ」 とともに。

(文 / カニミソ)

ハイキュー!!(45)

古舘春一「ハイキュー!!(45)」
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堀田きいち「君と僕。」全17巻(スクウェア・エニックス)

「君と僕。」17巻

「君と僕。」17巻

2022年に完結した「君と僕。」。長らく休載をされていたこともあり、正直完結を見届けるのはもしかしたら難しいのかも……と思っていた作品なだけに、突如令和の時代に連載再開、完結まで描ききりますといった報告がなされたときには本当に心からよろこびました。

同じ高校に通う男子高校生5人の日常がひたすらに描かれていくだけなのですが、そのどれもが愛おしく、得も言われぬ気持ちにさせてくれます。基本はコメディタッチながら、高校生ならではのふざけた空気感、あの時代にしかできない恋愛、ちょっとした特別感を感じる先生との会話。言葉に表すのが難しいような当時の空気感や感情が繊細に描かれ、いつ読み返しても「青春とはこれ!」を感じさせてくれるのです。当時は中学生だった私も、今や一介の社会人。彼らよりもかなり大きく成長した今、改めて読んでも「君と僕。」はまごうことなき私の青春バイブルです。

マンガを好きになったきっかけの作品として「ぴくぴく仙太郎」を挙げるか迷いました。衝撃的な1話から始まる同作ですが、当時小学生の私はその意味を深く考えることもなく、仙太郎やみやちゃんたちのかわいらしさにノックアウトされていた記憶です。ペットを飼うことはただ楽しいだけではなく、向き合うべきこともたくさんあると学べる名作だと思っています。

(文 / 大湊京香)

君と僕。(17)

堀田きいち「君と僕。(17)」
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坂本眞一「イノサン」全9巻(集英社)

「イノサン」9巻 (c)坂本眞一/集英社

「イノサン」9巻 (c)坂本眞一/集英社

私のマンガに対する“常識”をぶち壊し、世界を大きく広げてくれた作品として「イノサン」とその続編「イノサンRougeルージュ」を挙げさせていただきます。きれいな表紙に惹かれて何気なく手に取ったのですが、1コマ1コマの美しさや繊細な描き込みに「マンガってこんなに美しい絵で作ってもいいんだ!」と度肝を抜かれました。多数登場するグロテスクで残酷なシーンの中にも、人間の深いところで輝く命の美しさのようなもの込められているように感じます。演出がとにかく新鮮で、目には見えない音や温度だけでなく、感情や概念を絵で伝える力に感動。実験的とも言える表現には置いていかれそうになりながらも「次はどんな絵が待ち受けているんだろう」とワクワクしながら読んだことを覚えています。

運命に苦悩し、考え方を変えながらも根底には優しさを持つシャルルが好きですし、現代社会にも通じる価値観を持ったシャルルの妹・マリーのどこまでも自由であろうとする生き様には惚れ惚れします。私はサンソン兄妹とは対照的にごく平凡で平和な人生を送ってきたので、この作品で見た生き様を参考にする局面にはそうそう出くわしませんが、いざというときのお守りとして「全ての人間は不完全な存在のまま生きる権利がある」という言葉を大切に心にしまっておこうと思いました。余談ですが、マリーに憧れすぎて髪型のサイドを刈り込もうとしたとき、全力で止めてくれた美容師さんには今でも感謝しています。

(文 / 伊藤舞衣)

イノサン(9)

坂本眞一「イノサン(9)」
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読者の反応

坂本眞一 Shin-ichi Sakamoto @14MOUNTAIN

ありがとうございます!
記者の方の素敵なコメントに感激です!
刈り上げ次は是非^ ^ https://t.co/dVewZidc0o

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