今年結成10周年を迎える
この日の公演は台風並みの低気圧の影響で終始雨に見舞われたが、3万のオーディエンスは2時間半にわたる4人の熱演を堪能した。ライブは、スクリーン上で2003年から2013年までのカウントアップが行われる形でスタート。続けてタキシード姿の4人がスタジアムへと向かう様子が映し出され、その凛々しい表情にあちこちで歓声が上がる。そしてスタンド席の4カ所からタキシード姿の男性の姿が見えたと思った瞬間、大きな特効の音が鳴り響きステージに4人が勢揃い。この瞬間にスタンドに現れた男性たちはフェイクだったことが判明し、のっけからのサプライズにオーディエンスは熱狂した。
1曲目を飾ったのはShinji(G)が奏でるアコースティックギターと、明希(B)の柔らかなベースから始まる「ハナビラ」。ピンク色のライトがステージを彩る中、マオ(Vo)は切なげな歌声を響かせた。バラードで観客を酔わせたあと、マオは「横浜! 今日はよく晴れたな。10周年ということで初心にかえってメンバー紹介を」と1人1人の名前を叫ぶ。自分の番が回ってくると「マオにゃんでお願いします」と観客に呼びかけ、3万人の「マオにゃん!」という声を浴びていた。
アニバーサリーライブらしく、この日は結成当初の楽曲から新曲まで10年間の軌跡をたどるセットリストが展開。メンバーも観客もぐるぐると回った「循環」、雨の中マオ、Shinji、明希が花道へ飛び出していった「one way」、ライブ初披露となったジャジーな雰囲気の「恋におちて」などさまざまな楽曲がスタジアムを彩っていく。また「今日はお前らをびっちょびちょにして帰るから!」というマオという言葉が影響したのか、ここから雨脚が徐々に強くなっていく。「嘘」「モノクロのキス」では張りつめたような4人の表情が、それぞれの曲のドラマチックな一面を一層際立たせた。
続いて楽器を乗せたフロートがステージ上手裏から現れ、メンバーはファンに手を振りながらそこへ向かう。途中でマオがゆうや(Dr)の背中に乗りじゃれあう様子を見せると大きな歓声が沸き起こっていた。無事フロートにスタンバイしたメンバーは、マオの「懐かしい曲です。聴いてください」という言葉とともに「アリバイ」と「サーカス」をプレイ。4人は笑顔を浮かべ、雨の中でのライブを楽しんでいる様子を伺わせた。
この日はすべてがハイライトとも言えるようなライブだったが、特に観客を興奮させたのはこのあとのブロック。かねてから「SID 10th Anniversary LIVE」ではスペシャルなセットリストを用意すると明言していた彼らだったが、ここでは初期のナンバーを連発しオーディエンスを驚喜させた。まずはスクリーンにタキシード姿の4人が円卓を囲み、カードゲームに興じる姿が上映される。4人がテーブルに置いたカードがめくられると「必要悪」を皮切りに、懐かしい楽曲のタイトルがスクリーンに映し出され、順番に披露されていく。不気味なサウンドとマオの狂気をにじませた歌声が印象的だった「必要悪」、雨の中でメンバーのコーラスが響いた「ノイロヲゼパアティー」、パンキッシュなアレンジが光る「できそこない」など、どの曲も大きな盛り上がりをみせる。中でもどよめきが起きたのはシドの初音源「吉開学17歳(無職)」だった。ゆうやと明希の怒濤のリズム、吠えるようなマオのボーカル、Shinjiの激しいギターがひとつの塊となって会場を飲み込んでいく。それに呼応するように観客はヘッドバンギングを繰り返し、場内の狂騒状態に拍車をかけた。
「すごいでしょ、セットリスト。思い出しながら、なぞりながらやるの大変だった」と語ったマオだが、その顔には充実した表情が浮かぶ。さらにびしょ濡れになっている状況について触れ、「みてくれはどうでもいいんですよ。4人ともイケメンなんで」と笑ってみせた。そんな明るいムードをつなげるように「and boyfriend」から始まった本編最後のブロックではアップテンポな楽曲が続く。「smile」の途中でマオのマイクにトラブルが発生する瞬間もあったがファンの歌声を支えに、一切中断することなくライブは続行。「Dear Tokyo」ではShinjiが立っているお立ち台がせり上がり、さらにギターから花火が上がるという演出が用意され、ユニークな試みに笑い声と拍手が起こる一幕もあった。そして本編のラストナンバーとして披露された「眩暈」では、マオが「お前ら最高じゃん!」と観客の熱狂ぶりを絶賛。メンバーもオーディエンスも笑顔の中で、本編は無事終了した。
アンコールではマオが「雨のせいでシドも君たちも狂ってきたな(笑)」と開口一番に言い放つ。さっぱりした格好に着替えた4人は「白いブラウス 可愛い人」でしっとりとした空気を、続く「走馬灯」でノスタルジックなムードを作り出す。MCでは公園のベンチで寝て過ごしたインディーズ時代のエピソードを挟みながら、「10年経ってもこんなにたくさんの人に応援してもらってやってる喜びを噛み締めながらやってます」とファンへの感謝が伝えられた。その後も雨の中フロントの3人が飛び出していった「V.I.P」、Shinjiが感情を爆発させるような表情を浮かべた「妄想日記」と続き、「シドと恋しようか?」というマオの言葉とともに始まったのは「夏恋」。3万人のジャンプでスタジアムは大きく揺れ、「打ち上がる花火を横目に」という歌詞にあわせて花火が雨の夜空に放たれる。また途中でマオが明希の頬に数秒間にわたってキスをすると、悲鳴のような歓声が響いた。
最後の曲が始まる前に、「僕たちは10年間両思いだね」と愛おしそうな表情を浮かべたマオ。「シド風邪は夏風邪よりタチが悪いから、家帰ったら速攻でお風呂ね!」と冗談めかし、「15年、20年、30年、40年、50年、60年がんばっていくからついてきてね」と“未来”をファンに約束した。ラストナンバーの「微熱」では、歌詞を噛み締めるように歌うマオにあわせて、明希がシンガロングする様子や、ゆうやとShinjiが丁寧に音を重ねる姿がスクリーンに映し出されクライマックスを彩った。
曲の余韻が残る中、メンバーは花道を走り回ったり、抱き合ったりしながらファンに最後の挨拶をする。Shinjiは「今日のお客さんが君たちでよかった!」、ゆうやは「細かいことは言わない。今日最高!」と叫ぶ。明希は「今日は言葉にならないです。最高のライブです。10年間やってきて一番幸せな日。続けてきてよかった。雨の中付き合ってくれてありがとう」と感慨深そうに述べた。マオは「一生忘れられないライブをありがとう。僕たちならどこでライブをやっても楽しめるね」と笑い、「次の15周年もここにいるみんなと会えることを願ってます」と語る。そしていつものようにマイクを通さず「愛してます!」と叫び、大歓声と拍手を浴びながらステージを去っていった。
なおシドは終演後、10周年プロジェクトの一環で7月にニューシングルをリリースし、夏にアニバーサリーツアー「SID 10th Anniversary TOUR 2013」を全国4都市5会場で行うことを発表。ツアーは全公演野外ライブとなり、それぞれ日替わりのセットリストが組まれるとのことだ。
シド「SID 10th Anniversary LIVE」
2013年4月6日@神奈川県 横浜スタジアムセットリスト
01. ハナビラ
02. 循環
03. one way
04. 恋におちて
05. 嘘
06. モノクロのキス
07. アリバイ
08. サーカス
09. 必要悪
10. ノイロヲゼパアティー
11. できそこない
12. 吉開学17歳(無職)
13. and boyfriend
14. smile
15. Dear Tokyo
16. 眩暈
<アンコール>
17. 白いブラウス 可愛い人
18. 走馬灯
19. V.I.P
20. 妄想日記
21. 夏恋
22. 微熱
※記事初出時、キャプションに記載したアーティストのパートの表記に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。
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