ジャパンミュージックシステム(JMS)主催のライブイベント「REDLINE ALL THE FINAL」が、12月7、8日に千葉・幕張メッセ国際展示場9~11ホールで行われる。
2010年に初開催され、14年にわたって行われてきた「REDLINE」シリーズだが、今年をもって ファイナルを迎える。音楽ナタリーでは主催者であるJMSの専務取締役・鈴木健太郎と、「REDLINE」に初年度から出演してきたクリープハイプの尾崎世界観(Vo, G)にインタビュー。出会いの経緯や過去の「REDLINE」のエピソード、「REDLINE ALL THE FINAL」に向けての意気込みなどを聞いた。
取材・文 / 森朋之撮影 / YOSHIHITO KOBA
イベント情報
REDLINE ALL THE FINAL
2024年12月7日(土)千葉県 幕張メッセ国際展示場9~11ホール
OPEN 9:00 / START 10:30 / CLOSE 22:00(予定)
出演者
ACIDMAN / Awich / AgeFactory / ALI / ASP / bacho / FAT PROP / FOMARE / go!go!vanillas / SATOH / HERO COMPLEX / KOTORI / MONGOL800 / MY FIRST STORY / PEDRO / RIZE / SIX LOUNGE / THE FOREVER YOUNG / TETORA / tricot / w.o.d. / 04 Limited Sazabys / クリープハイプ / サンボマスター / ハルカミライ / 東京スカパラダイスオーケストラ / 優里 / WurtS
2024年12月8日(日)千葉県 幕張メッセ国際展示場9~11ホール
OPEN 9:00 / START 10:30 / CLOSE 22:00(予定)
出演者
AFJB / BLUE ENCOUNT / coldrain / Crossfaith / Crystal Lake / CVLTE / Dragon Ash / dustbox / EGG BRAIN / ENTH / Fear, and Loathing in LasVegas / FOR A REASON / HEY-SMITH / MAN WITH A MISSION / MONOEYES / MY FIRST STORY / NOISEMAKER / Northern19 / Paledusk / ROTTENGRAFFTY / SHADOWS / SHANK / SiM / The BONEZ / SPARK!!SOUND!!SHOW!! / TOTALFAT / マキシマム ザ ホルモン / FACT
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JMSと組むのは、期待と不安の両方があった
──尾崎さんと鈴木さんが出会ったのはいつ頃なんでしょうか?
鈴木健太郎 だいぶ前だよね。
尾崎世界観(クリープハイプ) 出会ったのは2009年ですね。
鈴木 そうか。JMSは主にインディーズ系アーティストのCDの小売店への卸業務や営業が主な仕事なんですが、タワーレコードのバイヤーの方から「クリープハイプというバンドがいるんですけど、ライブを観てくれませんか?」と言われて。下北沢Daisy Barでライブを観たのが、クリープハイプとの最初の出会いでした。
尾崎 その前日、下北沢CLUB Queでライブだったんですよ。ある関係者の方が来てくれる予定だったんですけど、直前になって「行けなくなった」と連絡があって、それでがっかりしてしまって。次の日のDaisy Barはそんなにお客さんが入っていなかったし、前日の苛立ちも残っていたけれど、開き直ってけっこういいライブができた記憶があります。それをたまたま鈴木さんが観てくれていて、今につながった。
鈴木 すごく曲がいいバンドだなと思ったんですよね。当時はヘビーなサウンドのバンドやパンクバンドとの付き合いが多かったし、世間から見るとJMSにはそういうバンドを扱っているイメージがあったと思うのですが、自分としてはジャンルは関係ないし、クリープハイプのようなギターロックバンドと出会えたことがうれしくて。クリープハイプにはとにかく光るものがあったし、純粋に「カッコいいな」と思ったので、彼らの事務所の社長に「一緒にやらせてください」と話に行ったんです。尾崎くんと実際に会って話したのは、そのあとだよね?
尾崎 そうですね。当時はメンバーが固まったばかりで、まだ全然音楽で生活できるレベルではなかった。でも少しずつお客さんも増えてきたりしていて、楽しかったですね。今思い返しても、“これからの自分たち”に一番期待していた時期だったと思います。
鈴木 まだ夜勤のバイトやってた頃でしょ? MCで必ずその話をしてたから。
尾崎 鈴木さんが言った通り、JMSはラウド、パンク系のイメージがあったので、期待と不安の両方がありましたね。JMSの皆さんはそれまで周りにいた人たちとだいぶ雰囲気が違っていて。そういえば、すごく覚えていることがあって。当時は東京の西側に住んでいたので、下北沢から帰るときは井の頭線で吉祥寺まで行って、そこでJRに乗り換えていたんです。ある日、吉祥寺駅を歩いていたら、向こうからちょっと怖そうな集団が歩いてきて。なんか嫌な感じがして目を合わせないようにしていたのに声をかけられて、「最悪だ……」と思ったら、JMSのスタッフさんたちでした(笑)。
鈴木 ハハハハ。
尾崎 「一見怖そうだけど、実は面倒見がいい。そんな方たちにお世話になっているんだな」と思いました。あと、JMSの方たちの売り込みのおかげで、初めてのフルアルバム(2010年9月にリリースされた「踊り場から愛を込めて」)が“タワレコメン”(全国のタワーレコードスタッフがプッシュする作品)に選ばれて。それはすごくうれしかった。
鈴木 タワレコメンに選ばれると、タワーレコード全店でプッシュしてもらえるんですよ。目立つ場所で展開してもらえるし、試聴して、CDを手に取ってもらうという導線が作れる。いろんな人に聴いてもらえる可能性が広がるので、必死になって営業しました。
尾崎 その頃はまずCDを買って、そこから「ライブに行ってみよう」という流れが今よりありましたよね。タワレコメンに決まった日、小川くん(クリープハイプのギタリストの小川幸慈)とプロモーションのためにTOKYO FMの番組に出ていたんです。収録のあと、新宿でホルモン焼きを食べようとしていたときに「タワレコメンに決まりました」と連絡が来て、テンションが上がったのを覚えています。
──「踊り場から愛を込めて」でクリープハイプを知ったリスナーは多いと思います。
尾崎 振り返ると、少しずつ段階を上がっていたなと思います。いきなりたくさんの人に聴いてもらえるようになったというより、細かい活動をしていく中でちょっとずつ知ってもらえるようになった実感がある。鈴木さんとはそういう時期に出会ったので、印象に残っています。
──「踊り場から愛を込めて」がリリースされた2010年は鈴木さんがライブイベント「REDLINE」を立ち上げた年でもあります。初年度の「REDLINE 2010」では、クリープハイプは兵庫のMUSIC ZOO KOBE 太陽と虎公演に出演していますね。
尾崎 とにかく打ち上げがすごくて……あまり思い出したくない(笑)。
鈴木 「打ち上げまでが『REDLINE』」という空気を出してましたからね、僕が(笑)。打ち上げで生まれるカルチャーのようなものがあると思っていて。当時の太陽と虎には名物店長(兵庫・神戸の音楽フェスイベント「COMING KOBE」を立ち上げた松原裕氏。2019年に逝去)がいて、関西特有のコテコテのノリだったんで、東京のバンドはびっくりしちゃうんですよ。
尾崎 「打ち上げがすごい」という話を聞いていたので覚悟していたんですが、店長の松原さんがめちゃくちゃ気を使ってくれているのがわかって。それがすごくうれしかったですね。それでもやっぱり打ち上げは本当にすごかった(笑)。
「REDLINE」は新たな出会いの場
──そもそも鈴木さんはどういうイベントを目指して「REDLINE」を立ち上げたんですか?
鈴木 まだ知られていないバンド、これから活躍していくであろうバンドを集めてツアーをやるというのが一番の目的ですね。あとはお客さんにとってもバンドにとっても、新たな出会いの場になったらいいなと思っていました。ギターロックバンドとパンクバンドの組み合わせだったり、普通では考えられない、異種格闘技的なブッキングを目指そうと。その結果、ほかのイベントと違う新鮮さが生まれたのかもしれないですね。クリープハイプには初年度から出てもらっているし、その後もほぼ毎年のように声をかけさせてもらったんですよ。2012年には尾崎くんに弾き語りで出てもらって。
尾崎 Zepp Nagoyaでもやりましたよね。
鈴木 2014年ですね。クリープハイプ、KANA-BOON、tricot、Northern19という並び。
──そして10周年を迎えた2019年には千葉・幕張メッセ国際展示場9~11ホールで、「REDLINE ALL THE BEST 2019 ~10th Anniversary~」が行われました(参照:SiM、マンウィズ、マイファス、クリープハイプら幕張メッセで「REDLINE」10周年祝う)。クリープハイプをはじめ、20組以上のバンドが出演しましたが、「いずれは『REDLINE』をフェスとして開催したい」というビジョンもあったんですか?
鈴木 まったくなかったんですよね。実際それまではライブハウスでイベント形式でしかやってこなかったんですけど、10年も続けていると関わってきたバンドがどんどん売れていって。節目の年でもあったので、幕張でやったという感じですね。あのときもクリープハイプはすごいライブを見せてくれて。
尾崎 「REDLINE」がアリーナで開催されたのは初めてだったし、楽しかったですね。
──尾崎さんはそのときのMCで、「SNSでエゴサをしたら、リストバンドを転売しようとしていたお客さんがいた」という話をしていて。このイベントに向けて、どれだけの時間をかけて準備しているか考えてほしいとオーディエンスに語りかけていたのも印象的でした。
尾崎 自分たちは最初の年から出演させていただいてますが、イベント自体もどんどん変化していって、規模が大きくなるにつれて、鈴木さんの手に負えなくなった部分もあるんじゃないでしょうか。
鈴木 うん。
尾崎 バンドもイベントも、結局、お客さんの熱量によって盛り上がりが決まるところがあるので。当時はそういうことを考えて言ったんだと思います。そうやってすべてを制御しきれない中で、それでもここまで「REDLINE」を続けてきたのはすごいことだと思います。
鈴木 「REDLINE」を立ち上げたときに、10年は続けようと思ったんです。それくらいやらないとイベントとして成熟しないだろうし、そこまでは絶対にやろうと。
尾崎 クリープハイプも、結成してからメジャーデビューするまでに10年かかりました。鈴木さんは、Daisy Barで「I-SCREAM NIGHT」というイベントもやっていますよね。
鈴木 そっちは完全に個人で企画してるイベントです。忘年会代わりじゃないけど、年末にやらせてもらうことが多くて。1年に1回は自分のイベントを打とうという思いでやってます。
尾崎 普段はDaisy Barにパンク系、ラウド系のバンドが出ることはあまりないけれど、「I-SCREAM NIGHT」ではモッシュやダイブが起きて(笑)。
鈴木 ありがたいことに、スタッフの皆さんが許容してくれるんです。Daisy Barのスタッフが人情に厚くて大好きなんですよ。「I-SCREAM NIGHT」はDaisy Barが好きだからやってるところもありますね。
尾崎 ライブハウスとのつながりって大事ですよね。ツアーを組むときも「キャパを考えると別のハコがいいんだけど、お世話になっているところでやろう」ということもある。「REDLINE」にもそういう、「お世話になったから恩返しをしたい」という思いが強くあります。
鈴木 去年の「REDLINE TOUR 2023」も、お世話になったハコしか回ってないからね。Daisy Bar、太陽と虎、福岡のQueblickとか。あと、2013年に東京のLIQUIDROOMで、10日間連続でイベントを打たせてもらったことがあって。
──LIQUIDROOMで10DAYSはすごいですね!
鈴木 ブッキングもそうですけど、打ち上げも大変でした(笑)。
尾崎 「REDLINE ALL THE BEST 2019」の打ち上げもLIQUIDROOMが会場でしたよね。みんなライブが終わってから、幕張から恵比寿まで2時間くらいかけて移動して。
鈴木 行きたくないですよね、普通(笑)。
尾崎 めちゃくちゃ集まってましたよね(笑)。LIQUIDROOMの上の階のエントランススペースだけじゃなくて、メインフロアも貸し切りになっていて。
鈴木 JMSは過去にバンド活動をしていたスタッフがけっこういて。そのスタッフが所属していたバンドに、メインフロアでライブをやってもらったんです。再結成みたいな形で。
尾崎 10代の頃にそのバンドと対バンしたことがあったんです。それがJMSの社員さんとして再会して。
鈴木 そのバンドにとってLIQUIDROOMは夢のステージでしたからね。PA、照明もしっかり準備して。ただ、観客は全員バンドマンなんですけど。
尾崎 緊張しますよね。
鈴木 オリジナル曲だけじゃなくて、「REDLINE」に出演したバンドのカバーもしてました。そのライブが終わったらあとはもう飲み会ですね。朝6時くらいまでやってた?
尾崎 いや、8時くらいまでやってました(笑)。途中でお酒が全部なくなっちゃって。
鈴木 請求額がすごいことになってた(笑)。コロナの直前だったからやれたけど、あんな打ち上げはもうできないかもしれないですね。
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