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のっちはゲームがしたい! 第5回 [バックナンバー]

気分はもう神室町の住人!「龍が如く」スタジオで3Dスキャンを体験してきました

総合監督・名越稔洋さんとの対談で明かされる、ジレンマを抱えながら開発を続けた15年

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ゲームが大好きなPerfumeののっちさんが、ゲームに関わるさまざまな人々に会いに行くこの連載。今回は「龍が如く」シリーズを開発するセガを訪問し、劇中で生き生きと活躍するリアルなキャラクターたちを生み出してきたスタジオを見学させてもらいました。

さらに記事の後半では「龍が如く」シリーズ総合監督・名越稔洋さんとの対談も実施。Twitterで募集した名越さんへの質問も、皆さんに代わってのっちさんが本人に聞いてきましたので、最後までお見逃しなく。

取材 / 倉嶌孝彦・橋本尚平 / 橋本尚平(取材後記は除く) ヘアメイク / 大須賀昌子 撮影 / 上山陽介 題字 / のっち

のっちさん、3DスキャンでCG化

コロナ禍の影響で長らく取材が延期になっていたセガに、ついに足を踏み入れてワクワクしているのっちさん。まずは「龍が如く」シリーズのチーフプロデューサー・横山昌義さんに案内していただきながら、社内にある3種類のスタジオにやってきました。

音声収録をするサウンドスタジオは3部屋あり、1スタはナレーションなどを録音する小さめのブース、3スタは社内の作曲家などが楽器を演奏してレコーディングするブース、そしてこの2スタは「龍が如く」チーム専用のブースになります。ここでは俳優たちが、ゲームに登場するキャラクターのセリフを録ります。

2スタの内部。

2スタの内部。

この音声収録は、以前までは外部のスタジオを借りていたそう。のっちさんが「しょっちゅう使うから社内に作っちゃったほうが早い、ということですね」と聞くと、横山さんは「でも実際に作るときはいろいろ苦労しましたよ。防音用に壁に鉛とか入れなきゃならないから。予算的にもけっこう揉めました」と苦笑いしていました。

レコーディング機材の一部。

レコーディング機材の一部。

続いて訪れたのは3Dスキャンスタジオ。ゲーム内にフルCGで登場する俳優たちの3Dモデルは、ここで撮影されたデータをもとに作成されます。

3Dスキャンスタジオの入り口。

3Dスキャンスタジオの入り口。

スタジオに入るなり、のっちさんは「えっ! これが社内にあるんだ! 衝撃!」「私たちは毎回めちゃくちゃ高いスタジオを借りて撮ってますよ!」とビックリ。横山さんによるとこの設備は手作りだそうで、美容院用としてよく使われている市販の椅子や、市販のカメラを組み合わせて作られています。

機材について説明する横山さんと、驚くのっちさん。

機材について説明する横山さんと、驚くのっちさん。

3Dスキャンの機材。中央の椅子に座って撮影します。

3Dスキャンの機材。中央の椅子に座って撮影します。

なお、Perfumeのサウンドプロデューサーである中田ヤスタカさんは、湘南乃風とのコラボで「龍が如く7 光と闇の行方」の主題歌「一番歌」を制作し、同曲のミュージックビデオでCGになってゲームの世界に登場しました。MVで使われた中田さんや湘南乃風メンバーの3Dデータも、このスタジオで撮影されています。

3DCGになった湘南乃風と中田ヤスタカさん。

3DCGになった湘南乃風と中田ヤスタカさん。

MVの中で側転しながら二丁拳銃を撃つ中田さんを観て「中田さんがハン・ジュンギになった! うっらやましい!」と驚いたというのっちさん。ぜひ自分も、ということで今回ここで3Dスキャンを体験させてもらうことになりました。

頭の高さを定位置に合わせて撮影開始。欠損することなく正確にデータが取れるように、耳にかかった髪はかき上げます。「えー!どんな表情をすればいですか!?」とのっちさんは興奮気味。ちなみに実際にゲームで使うデータを作成するときは、無表情のほか喜怒哀楽いろいろなバージョンを30分くらいかけて撮るそうです。撮影しながらのっちさんは「こういうときってだいたい、緊張して目を見開くから怖い顔になっちゃうんです(笑)」と笑っていました。

まずは真顔で撮影。

まずは真顔で撮影。

さらに笑顔もパシャリ。

さらに笑顔もパシャリ。

撮影した写真がコンピュータでCGデータに成形されるまで約10分。できあがったのっちさんの3Dスキャンデータがこちらです。

キャプチャーした3DCGはまさしく「のっちが如く」といった仕上がり。

キャプチャーした3DCGはまさしく「のっちが如く」といった仕上がり。

3Dなので、もちろん回転させてあらゆるアングルから見ることが可能。

3Dなので、もちろん回転させてあらゆるアングルから見ることが可能。

このデータを清書するように、たっぷり時間をかけて細かい部分をきれいにしていくと、実際にゲームで使われているようなリアルな3Dモデルが完成します。「でもなんとなくこの時点で、質感とか目の感じとかが『龍が如く』に出てくる女の子っぽくて、ゲームに出てくるところが想像できますね」と言いながら、のっちさんは興味深げにモニターを覗き込みました。

自分をキャプチャーした3Dデータを覗き込むのっちさん。

自分をキャプチャーした3Dデータを覗き込むのっちさん。

スキャンデータがスマホの顔認証に反応するかどうか試すのっちさん。反応しませんでした。

スキャンデータがスマホの顔認証に反応するかどうか試すのっちさん。反応しませんでした。

左のモニターに写っているのが清書を終えて完成した3Dデータの例。

左のモニターに写っているのが清書を終えて完成した3Dデータの例。

「清書するときにシワや毛穴を消したり、逆に足したりして本人とは年齢を変えたりもできるんですか?」というのっちさんの質問に、横山さんはオーダーに準じてなんでもすると回答。「よくあるのが『痩せさせてくれ』ですね。『昨日ちょっと飲みすぎちゃって』ということはよくあって(笑)」「女性の場合は、ただ撮っただけではその人の見た目にならないことも多いです。3Dは位置情報をもとに起こしているんですが、皆さん実際には影がないところにメイクで陰影を付けているので。だからCGにメイクを施して実物に近付けなきゃならないんです」「顔が整っている人ほど、特徴が出にくいからか似づらいですね」と説明してくれました。

モーションキャプチャーを使用した演技の奥深き世界

最後に見学したのはフェイシャルモーションキャプチャースタジオです。ここでは俳優の顔にトラッキングマーカーを貼って特殊なカメラで撮影し、その表情の動きを正確にデータ化。これを先ほど撮った3Dデータに組み合わせることで、生命が宿ったようなリアルな表情を作成することができます。のっちさんはフェイシャルモーションキャプチャーの様子を見るのはこの日が初めてでした。

フェイシャルモーションキャプチャーの様子。今回はお手本としてスタッフの方の表情をキャプチャーします。

フェイシャルモーションキャプチャーの様子。今回はお手本としてスタッフの方の表情をキャプチャーします。

顔にたくさんのマーカーを貼り、その動きを特殊なカメラで記録しています。

顔にたくさんのマーカーを貼り、その動きを特殊なカメラで記録しています。

顔に貼られている銀色のマーカーの数は79個。ここに光を当て、跳ね返ってきた光から位置情報を取得しています。マーカーの数を増やせばその分だけ顔の動きはナチュラルになるので、例えばハリウッド映画の撮影などではもっと多くのデータを取っていますが、データを増やせばそれだけ重くなってしまうので、「龍が如く」のキャラクターで喜怒哀楽を表現するには今のところ79個が適切な量なのだそうです。

マーカーの位置はPCにリアルタイムで表示されます。

マーカーの位置はPCにリアルタイムで表示されます。

「龍が如く」のキャラクターは、体の動きを撮る役者と、顔の動きを撮る役者、そして声を当てる声優はすべて別人が担当しています。それを聞いたのっちさんはビックリして、「体と顔と声、どれが最初なんですか?」と質問。横山さんはこう話してくれました。

「場合によります。例えば『龍が如く6 命の詩。』に出ていただいたビートたけしさんは声が最初で、たけしさんが収録した音声に合わせて体の役者が演技して、最後に顔の役者がセリフを覚えて演技をしました。それらをたけしさんのCGモデルに入れて再生すると本人っぽくなるんです。体の演技をした人がそのまま顔の演技もやることも多いんですけど」

また「キャラクター1人につき1人の役者さんがいるんですか?」というのっちさんの疑問には、横山さんは「そんなことをやってたらとんでもない人数になっちゃうんで。体専門、顔専門の役者がいろんな役を演じてます」と回答。さらに、体の動きのデータを撮るための、別の場所にあるモーションキャプチャースタジオについても説明してくれました。

「モーションキャプチャースタジオは体育館みたいにすごく広いところで、動きを感知する赤い光を飛ばす機材が何百個と取り付けられています。ただデータ量の都合で、同時に7人までしかキャプチャーすることができないので、大人数が出てくるシーンも7人くらいの役者が1、2カ月くらいかけて全部の役を演じてるんです」

セガモーションキャプチャースタジオの様子。Vicon社の反射光学式カメラが約100台設置されており、ワイヤーアクション用設備も完備されています。(セガの技術ブログ「SEGA TECH Blog」より)

セガモーションキャプチャースタジオの様子。Vicon社の反射光学式カメラが約100台設置されており、ワイヤーアクション用設備も完備されています。(セガの技術ブログ「SEGA TECH Blog」より)

「キャプチャーするときは舞台上に、ゲーム内と同じようにセットを組むんです。そうしないと、椅子に座るシーンが空気椅子になっちゃうから。コタツに入る動きが必要であれば、コタツのサイズを決めて小道具を作って撮影する。階段も作って、長階段の場合はその動きをコピーして何回もループさせます」

マーカーを貼った小道具の数々。このうち椅子とギターは実際に「龍が如く」で使用されました。バトルやヒートアクションでも使用するので、木材と発泡スチロールという軽い素材で作成されており、振り回したり多少手荒に扱っても問題ないようにしてあります。(セガの技術ブログ「SEGA TECH Blog」より)

マーカーを貼った小道具の数々。このうち椅子とギターは実際に「龍が如く」で使用されました。バトルやヒートアクションでも使用するので、木材と発泡スチロールという軽い素材で作成されており、振り回したり多少手荒に扱っても問題ないようにしてあります。(セガの技術ブログ「SEGA TECH Blog」より)

その話を聞いて「セットまで作ってるなんて想像が付かなかったな……」と驚くのっちさん。まだまだ興味は尽きず「じゃあ、主人公とやられ役を同じ人が演じてたりもするんですか?」と聞くと、横山さんは「一応、メインで演じる役は決まってるけど、それ以外もエキストラ含めて全部を演じるので、主人公をやった人が次のシーンではやられ役、ということはあります。舞台稽古をずっとやってるみたいで楽しいですよ」と答えてくれました。

モーションキャプチャーの様子。親指、人差し指、小指にもマーカーを付けて指のモーションも収録しています。(セガの技術ブログ「SEGA TECH Blog」より)

モーションキャプチャーの様子。親指、人差し指、小指にもマーカーを付けて指のモーションも収録しています。(セガの技術ブログ「SEGA TECH Blog」より)

顔の動き・表情を収録するためのHMC(ヘッドマウントカメラ)。(セガの技術ブログ「SEGA TECH Blog」より)

顔の動き・表情を収録するためのHMC(ヘッドマウントカメラ)。(セガの技術ブログ「SEGA TECH Blog」より)

モーションキャプチャーを使用した演技の奥深き世界を覗いたのっちさん。次のページからはいよいよ総合監督・名越稔洋さんとの対談です。

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これを売ることに対して社内に賛成派はほとんどいなかったんです

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のっちさんにご来社いただきました!

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