キャンプインフェス「FUJI & SUN '24」が、5月11日と12日に静岡・富士山こどもの国で開催される。
「富士山と学び、富士山と生きる。」をコンセプトに掲げる「FUJI & SUN」は、富士山の麓で音楽やアクティビティ、キャンプなどを楽しむことができるフェス。今年はステージ横から見える大きな富士山が魅力のメインエリア「SUNステージ」、樹々の中の幻想的な空間を楽しめるサブエリア「MOONステージ」に加え、キャンプサイト内に新たに「STONE CIRCLEステージ」が設置される。
「FUJI & SUN '24」開催を前に、音楽ナタリーは同フェスに出演するnever young beachの安部勇磨にインタビュー。結成10周年を迎えたネバヤンの近況について聞きつつ、安部の思う“フェス観”について語ってもらった。
取材・文 / 森朋之撮影 / 小財美香子
公演情報
FUJI & SUN '24
「富士山と学び、富士山と生きる。」をコンセプトとして2019年にスタートし、5回目の開催を迎えるキャンプフェスティバル「FUJI & SUN」。キャンプフェスならではの開放的な空間で、ジャンルや世代の垣根を超えた⾳楽とともに非日常のひとときを楽しむことができる。アウトドア体験プログラムをはじめとしたアクティビティや、地元静岡県の素材を生かしたフード、豊富なラインナップによるマーケットなども展開される。
2024年5月11日(土)静岡県 富士山こどもの国
OPEN 9:00 / START 10:00 / CLOSE 21:00
<出演者>
∈Y∋ / Akie / 石野卓球 / くくく(原田郁子&角銅真実) / くるり / クレイジーケンバンド / 食品まつり a.k.a foodman / suimin / cero / TOP DOCA&吉原祇園太鼓セッションズ feat ナツ・サマー / never young beach / HAPPY / BurnTale / ファビアーノ・ド・ナシメント × 石若駿 / Hedigan's / ペトロールズ / midori yamada(the hatch) / 優河 with 魔法バンド
2024年5月12日(日)静岡県 富士山こどもの国
OPEN 8:30 / START 9:30 / CLOSE 19:00
<出演者>
EGO-WRAPPIN'(Acoustic Set) / 踊ってばかりの国 / Campanella / KID FRESINO(band set) / KUNTARI / 柴田聡子 / Chappo / 鎮座DOPENESS / Dos Monos / ハンバート ハンバート / HIMI / maya ongaku / 民謡クルセイダーズ / 森山直太朗
そのときの自分たちを受け入れるしかない
──never young beachは今年で結成10周年を迎えました。4月13日にはアニバーサリーイヤーを記念した日比谷野音ワンマンライブを開催しましたが、10周年を迎えてどのような心境ですか?
そんなに特別な気はしないというか、「もう10年も経つんだな」という感じですね。なぜかちょっと他人事みたいな。今までやってきたことはすでに過去のことだし、それよりも“今”についてだったり「これから何したら楽しいかな?」ということだったりを考えていることのほうが多いので、「10年やったから安心だ」みたいな感じもまったくないです。この先はもっと時間の流れが早くなるだろうし、スポーツ選手で言えば全盛期を過ぎる時期ですからね。身体性も落ちてくるかもしれないし、あとで後悔しないように、そのときにしかできないことをやっていきたいと思ってます。
──常に先を見ている、と。昨年リリースされたアルバム「ありがとう」は素晴らしい作品でしたが、安部さん自身も手応えを感じているのでは?
リリース後もたまに聴くんですけど、否定と肯定の繰り返しみたいな感じで。手応えというか、「我ながらいいな」というような感覚もちゃんとあります。けどふとした瞬間に「もっとこうしてもよかったのかな? そもそもこうか?」と考えるときもある。天邪鬼ですね。いい音楽は世界中にたくさんありますからね。作品を作るたびに「もっともっと作ろう」という気持ちになります。ライブも毎回違いますからね。今日は楽しいなというときもあれば、何か気が乗らない日もあったり(笑)。
──ライブはその日の状態をそのまま出すしかない?
そうですね。毎回100%でやるつもりだし、そうなるように準備するんですけど、会場だったりお客さんだったり、自分たちだけではどうにもならない領域もあるので。だから理想通りにいかなくても、いちいち落ち込まなくなりました。100点なんてなかなか取れるものではないし、60点、70点でもちゃんと胸を張ればいいんじゃないかなと。心に折り合いをつけて楽しむことも大事だと思いますね。そのときの自分たちの状態を受け入れるしかない。
──昨年はソロで北米ツアーを開催し、今年3月にはネバヤンとして中国ツアーを行いました。海外での活動も徐々に増えてますね。
この先のことを考えると、海外での活動をもっと増やしていきたいですね。アメリカでツアーをやってお客さんが喜んでくれているのを体感すると、すごく感動するんですよ。心がものすごく豊かになるというか。これからも続けていきたいですね。海外の人は日本人より思ったことをスコーン!と言う。アメリカにいる師匠に曲を送ったら「つまんない」と言われることもある。でも反対にいいと思ったものは褒めてくれる。それがすごく楽しくて。シンプルで好きなんです。「じゃあどうしよう」と考えるきっかけになるし、それが今の自分には合ってるんですよね。
ソロとバンド、それぞれの楽しさ
──音楽的なことで言えば、ギタリストの岡田拓郎さんをはじめ、ネバヤンを支えるミュージシャンの存在も大きいですよね。
拓郎くんと、鍵盤を弾いてくれてる香田悠真くんは同世代で一番気になる存在です。僕は2人とは違って、感覚だけでやっちゃってて。学がまったくない。自分で作った曲なのにどうやって弾いたか忘れちゃうし、楽器もぜんぜん上達しなくて。だから余計に「演奏してくれてありがとう」という気持ちになる。一緒に音楽ができてすごくうれしいです。拓郎くんに「安部ちゃんもギター弾きなよ」と言ってもらうんですけど、こちらとしては「恐縮です……」という感じで(笑)。下中洋介(G / DYGL)のギターもそうなんですけど、「こんなふうには弾けないな」と思う。それに弾いてもらうと楽しい。自分がイメージしているものを1段も2段も上げてくれる。感謝しかありません。
──なるほど。DYGLやD.A.N.をはじめとする同世代のバンドとは「同じ時代を生き抜いてきた」みたいな気持ちもありますか?
そういう気持ちもあるんですけど、解散や活動休止をするバンドも出てきて少し寂しさも感じます。みんなしないでほしいです。コロナの影響もあるんでしょうけど、みんな30代になり、環境が変化したりして。若い頃みたいにバンドがすべてではなくなるだろうし、新たな価値観と出会うことも増えてるだろうから、続かなくなるのはしょうがないことだとも思うんですけどね。僕はしつこい性格だからまだまだやりますけど。“生き抜く”という面でも音楽の扱われ方も軽くなっていく中、とことん向き合わないと音楽で食っていくのは難しいと思っていて。しつこく執着して、やってるやつが残っていくと思うし、自分なりに「1つひとつ形にできているのかな」と日頃考えなければいけないなと感じています。
──2021年以降はソロ活動も行っていますが、ソロをやることでバンドのよさを再確認することはありますか?
「バンドじゃないとできないことってあるな」と思いましたね。ソロならでの楽しさもあるけど、みんなでゴチャゴチャやるバンドのよさもある。最近考えているのは「とにかく音楽に触れて、レコーディングして、作品を出しまくりたい」ということなんです。作品を出すたびに初めてわかることが絶対にあるし、とにかく手を動かして、作品を重ねていくしかないんだろうなと。
──今後しばらくは多作になりそう?
そうですね。今はソロアルバムの曲を作っていて、今年中にレコーディングしようと思ってます。ネバヤンでももっと曲を作っていきたくて。「ありがとう」の次はどんなアルバムにしたら面白いかなって考えているけど、まだ悩ましいですね。
初めて立った「FUJI & SUN」のステージ
──今年はキャンプフェス「FUJI & SUN」にも出演されますね。ネバヤンは2020年2月にWOWOWで放送された「FUJI & SUN '20」の無観客ライブに出演し、昨年行われた「FUJI & SUN '23」で初めてこのフェスのステージに立ちました。
去年はすごい雨だったんですよ。ステージの前のほうはビショビショで。僕らはけっこう晴れの曲が多いので、「どうやってライブをしたらいいんだろう?」と思っていました。雨が弱点なんです。下中がステージで雨に打たれながらスライディングしてくれて一気に楽しくなったのを覚えてます。あと、ケータリングのカレーがおいしかった。
──静岡の食材を生かした料理を楽しめるのも、「FUJI & SUN」の特長ですよね。さまざまなショップが出展されるほか、アウトドア体験やワークショップも用意されています。
「FUJI & SUN」はまだ若いフェスだし、僕らが出演したときも「どういうフェスなのかな?」とフワッとした感じで来ているお客さんもいたような気がして。これからどんどんブラッシュアップしていくんだろうなと思います。
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恥ずかしくないライブをしなければ