ASIAN KANG-FU GENERATIONの「リライト」をBGMに西原と担当編集の八巻和弘氏が入場。西原は「さっきスピリッツの編集長に『うちの若いホープ2人ですからお手柔らかに。しかも打たれ弱いので』って言われちゃって。やあね、実力があって若くて打たれ弱いなんて。みんなー、やっちまいなー?」と観客にゲスト潰しを要求する。
1戦目の相手は浅野いにお。その代表作「ソラニン」を、「あんな理屈ばっかりこねくるマンガのどこが面白いかわからない」と容赦なくディスる西原。一方浅野は「どうしてそんなひどいことばかり言うのかな……こんなに可愛らしい人なのに」と懐柔作戦。西原もまんざらでない様子だ。自作品のキャラをその場で描く恒例「ナマ描き」では、浅野の描き出すキャラたちに「オッシャレー」と生暖い拍手を送った。
ところが1問目の「野田総理大臣」という難問に、両者ともいきなりフリーズ。うろ覚えながらも描き進むも、出来映えは散々だ。2問目の「ドラゴン桜」で挽回するかと思いきや、浅野は普段マンガをあまり読まないため、そもそもお題がわからないかも、と言う。「頭と身体のバランスが不思議なマンガですよね」と確認しつつ浅野が描いた「ドラゴン桜」は、ムーディ勝山のようなおじさんだった。
3問目は「オサレ系」ということで、羽海野チカ「ハチミツとクローバー」。さっきとは打って変わってイキイキと筆を進める浅野は、完璧なはぐちゃんを描き切り、「描きやすかったです」と満足気にコメント。会場からも拍手が沸き起こる。かたや西原のはぐちゃんは、残念ながらホームレスのよう。浅野も呆れ顔で「ソバージュみたいな髪型ですね」と攻撃する。どうやらパーマのウェーブ感に世代が反映されてしまったようだ。
続いてのお題「ボーイズ・オン・ザ・ラン」は想定内だったのか、2人とも無難な仕上がりで引き分けるも、難問「ASIAN KANG-FU GENERATIONのゴッチ」で西原がドツボに。アジカンを知らない西原に、「メガネをかけてて身長160cmくらいのギターを持ったミュージシャン」と説明する八巻氏と浅野。「唇がボテッとしている」というヒントを頼りにおそるおそるゴッチを描いた西原だが、知らないわりには意外と似てる、という不思議な結果に終わった。
ここで一時休戦、ビッグコミックスピリッツ(小学館)の作品トークに。西原の「スピリッツでどの作品がいちばん嫌い?」という質問にタジタジの浅野だが、西原は「私は『鉄腕バーディー』っていうマンガが意味わからなくて……」とぶちまける。浅野は「僕まだ若手なんですよ……」と謙遜しつつも、「詐欺のアレとか死ぬ紙が届くのとか、あんな設定作ったら売れるに決まってるじゃないですか。ずるいじゃないですか」とだんだん饒舌に。「花沢さんも仲間だと思ってたのにゾンビなんて設定作って。ほんとに売れる気なんだなこの人は、と思いました」ともうひとりのゲストにも言及する。
ハートウォーミングな悪態により会場が温まったところで、次のお題「ガラスの仮面」より「紫のバラの人」。真澄様をまったく知らない浅野が「身体のパーツにバラが入ってたりします?」と素っ頓狂な質問をすると、ここぞとばかりに「おでこに紫のバラの刺青がある。チャクラが開くんです」と嘘を教える西原。素直にアドバイスを聞いた浅野の「紫のバラの人」は、「聖☆おにいさん」の新キャラのような、ありがたい風貌に。さらに「けいおん!」「北斗の拳」「僕の小規模な生活」と描き進み、第1部は終了した。
第2部はもうひとりのゲスト・花沢健吾が登場。すでにほろ酔いな様子で現れた花沢、ナマ描きでは「ボーイズ・オン・ザ・ラン」の田西とちはるを描こうとするも、どうも描線が怪しい。西原も戸惑いの表情を見せ、会場からは偽物説も囁かれ始める。
対決に移る前に、八巻氏が「売れるためにゾンビを描いたんですか?」と直球の質問を投げかけると、花沢は「そうっすね。生活ありますんで」とあっさり。さらに「ゾンビが終わったらロボットものをやりたい。少年誌に行きたい」と次回作についても言及し、「子供だったら騙せる」「2次利用で儲かりたい」と黒い腹の内を明かす。
「ソラニン」の種田と芽衣子、枝野官房長官、有働由美子、「涼宮ハルヒの憂鬱」のハルヒといったお題をこなしたのち、西原が「玄米せんせいの弁当箱」をディスりはじめたことから、グルメマンガの雄「クッキングパパ」を描く流れに。グルメマンガに対する批判を語りながらノリノリで描いた西原の荒岩は、特徴をつかんだ見事な出来。一方花沢が描いたのは、アゴのラインがなすびのような老パパだった。
続いて浦沢直樹の「パイナップルARMY」、島田紳助と加護ちゃんを描いたのち、浅野いにおが再び登場。3人に与えられたお題はEXILEのHIRO、ATSUSHI、MAKIDAI。メンバーの顔と名前がまったく一致せず、完全にお手上げ状態の花沢、西原とは反対に、浅野はきちんと区別がついている様子で3人を器用に描き分けた。西原は「こういう音楽もチェックしているのか」「こっち方面でも生き残ろうとしているのか」と野次を飛ばす。
さらに自分の絵柄で「美味しんぼ」の海原雄山や山岡を描いてほしいというリクエストに、それぞれの「美味しんぼ」を描く西原と浅野。花沢は迫力満点にラーメンをすする海原雄山を描き、会場を沸かせた。さらに「彼岸島」を描いた後、最後のお題は「自分がいちばんエッチだと思ったマンガ」。浅野は「まじかる☆タルるートくん」、花沢は山本直樹作品、西原は「俺の空」と、選ぶ作品にそれぞれの世代と趣味が反映された。
最後に恒例の合同色紙を描いてイベントは終了。浅野、花沢は西原と十分に渡り合えるほどのマンガ論を繰り広げ、画力はもちろんのこと、トーク対決にも花が咲いたイベントとなった。なお対決の一部始終は、後日ビッグコミックスペリオール(小学館)の「人生画力対決」にて、数回にわたり掲載される。
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浅野いにお・花沢健吾、オサレ若造が画力対決で痛烈ディス http://t.co/cHrJJSts