尾上松也、「團菊祭」上演の5月は“ひときわ思い入れのある月” 5月は歌舞伎座で会いましょう (2/2)

歌舞伎俳優としての“現在地”と“これから”

──さてここからは、歌舞伎俳優としての現在地を伺えれば。松也さんがリーダーを務める「新春浅草大歌舞伎」は、2024年のお正月で一区切りとなりました。千穐楽は最後の演目「魚屋宗五郎」の“その後”のような幕がつき、花道からはけていく7人(松也、中村歌昇、坂東巳之助、坂東新悟、中村種之助、中村米吉、中村隼人)と舞台に残る2人(中村橋之助、中村莟玉)で幕と、感動的なフィナーレでした。松也さんが台本を書かれたのでしょうか?

台本なんて正式のものではありませんが、全体の構成は僕が考えて、あとはみんなと相談しながらまとめました。節目、節目で千穐楽だけの趣向を実施してきましたので、「ファイナルも絶対に何かやろう」とは決めていましたが、どういう内容にするかは、初日が開いてから詰めていった感じですかね。浅草の皆様とお客様への感謝、そして来年以降の浅草にも出演される橋之助さん、莟玉さんへのエールを伝えたかったですし、2人とも感動してくださいましたので、僕たちが引き継いだものが無事後輩たちに伝わっていくだろうな、これで大丈夫だろう、というような感覚にはなれましたかね、うん。

──能登地方の震災への募金活動も実施し、終演後「魚屋宗五郎」の拵えのまま皆さんそろって募金箱を持って立たれたのも“ファイナル”の印象的な出来事でした。またコロナ禍で中止の年は浅草メンバーで歌舞伎座にそろう演目がありましたね。松也さんが「できないだろうか」と掛け合われたと伺っています。

そうですね。中止になって残念、それで終わり……ではなく、浅草チームで何かできないか、会社の方にご相談に行きました。

──松也さんは、演出も務められた新作歌舞伎「刀剣乱舞」、遡ると2009年から10年間続けた歌舞伎自主公演「挑む」などでもリーダーシップを発揮されました。松也リーダーの公演は、参加される皆さんがチームとしてまとまり、かつのびのびご活躍されている印象もあり、観客にもその楽しさが伝わってきます。

自分で自分のことは分かりませんが……とにかく僕が中心となるときは、みんなが気持ちよく、楽しくできる場の空気を作ることが、自分にとっても一番良い結果を生むと考えています。良いメンバーに恵まれたのでしょう。

尾上松也

尾上松也

──そして昨年は「刀剣乱舞」以外にも、「ファイナルファンタジーⅩ」「流白浪燦星(ルパン三世)」など、若い世代へのアプローチするような新作にご参加しています。

古典演目の修業と鍛錬もしっかりと続けながら、時代に合った新作を作ることも、上の世代から受け継いでいくべきことの1つ。その一手を担えていけたらいいなと思っています。

──現代劇、テレビなど、幅広くご活躍されている松也さんは、若い世代、新しい客層を呼び込む使命も担われているかと。歌舞伎のどんな魅力をアピールしていくべきだと考えていますか?

歌舞伎の魅力ってなかなか一言では言い尽くせないのですが、歌舞伎の中にはさまざまなジャンルが含まれていますので、そこからお好みのものを探していただきたいです。

──映画にさまざまなジャンルがあるように、歌舞伎には幅広いレパートリーがありますからね。

そうです。いろいろな選択肢がありますし、最近の言葉で言えば“推し活”にも最適なんですよ。俳優だけではなく、衣裳、美術、あるいは“ツケ打ちさん推し”なんてことも可能でしょうし。いろいろな注目ポイントが見つけられるのが歌舞伎の魅力。“演目推し”でしたら、いろいろな俳優さんが1つの役を演じる違いを楽しめますしね。

尾上松也

尾上松也

尾上松也

尾上松也

──ミュージカル「レ・ミゼラブル」や「エリザベート」などは、皆さんWキャスト、トリプルキャストで比較を楽しみますものね。

ミュージカルや2.5次元、ほかの演劇が取り入れているあらゆることがミックスされているのが歌舞伎。楽しみ方の選択肢が幅広いのが面白さの1つでもあると思うんです。僕たちは、ただ「歌舞伎の魅力はこう」と言い放しにするのではなく、それぞれの俳優が歌舞伎という看板を背負いながら、若い方たちの目に触れる、影響力のある場に顔を出して印象を残すことを続けていくことも重要だと考えています。俳優としての幅を広げる意味でも、歌舞伎のためにも、若い世代が積極的にいろいろなジャンル / 世界に出て行く。俳優というのは人気商売ですので、そこでより多くの方に知っていただくことは、大事なことだと思っております。家柄やしがらみにとらわれることではなく、やれる方がチャレンジしていくべきことだと考えています。これだけ娯楽の選択肢が増え、海外のコンテンツにも簡単にアクセスできる時代ですので、その中で歌舞伎を選択していただくことは、並大抵のことではありません。多角的にアピールしていかないと、気づいたときには歌舞伎だけ置いてきぼり……ということになりかねない危機感はあります。

──固定概念に捉われず、時代の風をどう掴まえるかですね。

先輩方が盛り上げた世代のお客様、その影響を受けたお子さんの世代のお客様というのも、今後、どんどん少なくなっていきます。そうしたまた次の時代が訪れる前に必死にならないと、未来につながらないかもしれません。やはりどんなに努力をしても、お客様に観ていただけないのでは我々の存在意義がないですから。劇場に来ていただけるためのチャレンジを、創意工夫しながらやっていくべきだと思っています。

尾上松也

尾上松也

プロフィール

尾上松也(オノエマツヤ)

1985年生まれ。音羽屋。六世尾上松助の長男。1990年に二代目尾上松也を名乗り初舞台。舞台作品・映像作品への出演のほか、2023年には「新作歌舞伎『刀剣乱舞』月刀剣縁桐」で演出にも挑戦。6月には博多座の「六月博多座大歌舞伎」昼の部「修禅寺物語」「身替座禅」、夜の部通し狂言「東海道四谷怪談」、7月には歌舞伎座「七月大歌舞伎」夜の部「千成瓢薫風聚光 裏表太閤記」、9月には「シス・カンパニー公演 / 日本文学シアターVol.7【織田作之助】『夫婦パラダイス』~街の灯はそこに~」、12月・2025年2月には歌舞伎NEXT「朧の森に棲む鬼」に出演予定。

ウナギ・サヤカが歌舞伎座へ
歌舞伎座にやってきたウナギ・サヤカ。

歌舞伎座にやってきたウナギ・サヤカ。

歌舞伎を観たのは初めてではなかったけど、今回ステージナタリーさんに歌舞伎を初心者でも楽しめるように本当にいろいろ伝授していただいて、何も知らないで観ていたころよりももっとずっと面白かった歌舞伎!
大発見歌舞伎
で結果からいうとまた絶対行きたい!
プロレスもそうなんですけど、歌舞伎も初めて観に行くとか最初の1歩を踏み出すにはどうしても敷居が高いというか、作法?というか何も知らないでいくのって結構勇気が必要だったりするじゃないですか?
だから今回行く前に安心させてもらって、楽しみ方をきいて、単純に素人でも本当に
大満足でした!!
正直、何言ってるかなんてわからないけど、でもこれがほんとにすごいのがイヤホンガイド。歌舞伎に合わせて全部教えてくれるから。
何を言ってるかがわからないって1番ストレスで、それがなく教えてくれるから本当にわかりやすかった。

幕間に食べるもお弁当も、歌舞伎ってお弁当食べてもいい時間があってなんかみんなで思い思いのお弁当広げて。
基本お芝居だったり、スポーツ観戦だったりってお弁当食べたり話したりする時間って意外とない中でお弁当食べてもいいよ!
っていう時間があるのは楽しいし、感想言い合ったりできる時間があるのも、そして劇場の中を観れたりだとか、お土産だったりシャンパンが飲めたり、こういう時間が充実してたり楽しみ方も人によってそれぞれあるのを知ると、いつもより優雅な時間を過ごせているってわくわくしました。

5階の歌舞伎座ギャラリーで写真を撮るウナギ・サヤカ。

5階の歌舞伎座ギャラリーで写真を撮るウナギ・サヤカ。

大事な歌舞伎の中身はというとほんとに声だとか衣裳だとか本当に素敵だったんですけど、もう圧倒的愛之助さん!!!!!
スーパースターってほんとにあんなにわくわくしてしまうんですね。
存在感、オーラ、見ているだけで自分の試合かのようにアドレナリンが出ましたw
かっこよかったですね。
お話を知るというよりはもう是非もう一度愛之助さんを観たいという気持ちになりました。

劇場の空気も、役者さんの呼吸もまた体感しにいきたいです。

ウナギ・サヤカ。キャッチフレーズは「極彩色に翔ける傾奇者」。

ウナギ・サヤカ。キャッチフレーズは「極彩色に翔ける傾奇者」。

プロフィール

ウナギ・サヤカ

大阪府生まれ。女子プロレスラー。学生時代はアーティスティックスイミングでオリンピックジュニアナショナルに選ばれ、チアリーディングでは全国優勝を果たす。アイドル活動を経て、2019年1月に「東京女子プロレス」で女子プロレスラーとして、リングデビュー。2020年11月から「スターダム」に参戦し、COSMIC ANGELSの中心選手として年間ユニット賞の連続受賞に貢献。2022年10月より”ギャン期”と称して男女問わず様々な団体にフリー参戦。2023年には株式会社ウナギカブキを立ち上げ、社長を務める。今年1月、初の自主興行をプロレスの聖地・後楽園ホールで開催。キャッチフレーズは「極彩色に翔ける傾奇者」。