Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 2018 / 森山未來|言語を飛び越えたコミュニケーションに

3年に1度のダンスフェスティバル「Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 2018」(以下DDD)にて、新作「SONAR」を発表する森山未來。表現の可能性を探り続ける彼が、ノルウェーのダンサー、ヨン・フィリップ・ファウストロムと音響空間作家の及川潤耶と共に、“言葉を越えたコミュニケーション”に挑む。しなやかに、伸びやかに、自然体で歩み続ける森山が、目線の先に捉えているものとは。

取材・文 / 熊井玲 撮影 / 平岩享

横浜に近しさ、親しみやすさを感じる

──森山さんは前回2015年のDDDにも参加され、「JUDAS, CHRIST WITH SOY ユダ、キリスト ウィズ ソイ~太宰治『駈込み訴え』より~」を上演されました。DDDにはどのような印象をお持ちになりましたか?

森山未來

賑やかですよね、本当に。横浜ベイサイドバレエのようなものもあれば、コンテンポラリーのダンスプロジェクトもあるし、前回は(近藤)良平さん振付の盆踊りのようなものもあって(笑)、賑やかで入りやすいフェスティバルだなという印象があります。

──DDDをはじめ、横浜とダンスには近年、とても近しい印象があります。

本当にそうですよね。「東京にいる意味ないなー」っていつも思います(笑)。横浜はダンスやアートにすごく力が入っている感じがしますね。あといつも思うんですが、横浜の空気感って、僕の地元の神戸と近いところがあるんです。港町だし、海があって山手があって、空気の抜け感とノスタルジックな雰囲気を感じます。そういうところも含めて横浜は好きですね。

──今回は横浜赤レンガ倉庫1号館で新作「SONAR」を上演されます。

赤レンガにはすごくお世話になっています。昨年17年1月は「JUDAS~」(参照:森山未來×蓮沼執太「JUDAS~」が来年1月に、先行イベントにU-zhaan)と横浜ダンスコレクション2017「VESSEL」(参照:「横浜ダンコレ2017」にダミアン・ジャレ&名和晃平、多田淳之介の新作)を上演していますし、ワークショップの講師としても呼んでもらっていたりして(参照:森山未來とエラ・ホチルドが直接指導、ダンスワークショップ今年も開催)。フードモールとしてのランドマーク的な位置付けの場所で、これほど活発にダンスプロジェクトが行われているのはいいことだし、倉庫ならではの空気感がいいですね、いかようにでも使える感じがあると言うか。

言葉を使わずにお互いを感じ合うには

──新作のタイトルは、“水中を伝播する音波によって、水中や水底の物体に関する情報を得る装置”を意味する「SONAR」です。作品の資料として、ジャック・マイヨールについて書かれた文章を拝読しました。

森山未來

今回は、ヨン・フィリップ・ファウストロムと何かやりたいというのが一番のきっかけで、最初からタイトルやコンセプトが決まっていたわけではないんです。ヨンはノルウェー人なので、日本とノルウェーの共通点を考えていく中で、捕鯨文化なんじゃないかなと思い至って。でも別に、ポリティカルなところに突っ込みたいわけじゃないんです。クジラはソナーっていう超音波のおかげでコミュニケーションが取れて、お互いの距離感をつかみながら回遊する。イルカにも同じテレパシーと言うか超音波のようなものがあって、言葉を使わなくてもお互いのことを感じ合っているんですよね。今回はそういう、言語を飛び越えたコミュニケーションで遊べないかなと。そう考えるうちに、今回の作品とジャック・マイヨールに通じるものがあるなと思ったんです。ジャック・マイヨールはもともと好きなアーティストで、いいなと思った言葉を書き留めていたので、それを今回、コンセプトのベースにしました。

──ファウストロムさんとは「テ ヅカ TeZukA」で共演されています。以前からご親交があったのでしょうか?

森山未來

いや、「テ ヅカ TeZukA」で知り合って、そこからです。彼のキャラクターが好きで、「テ ヅカ TeZukA」のときはよく一緒に酒を飲みました(笑)。人間的にもフィジカル面でも強いダンサーなので参考にさせてもらった部分もあるんですが、「テ ヅカ TeZukA」のあと、特に深くコミュニケーションを取っていたわけでもなくて。ただ、以前スウェーデンに行ったときにたまたま時間があって、ノルウェーは隣だからヨンに連絡したら偶然会うことができて。そこでいろいろしゃべるうちに、何か一緒にやれたらいいなと思った……そのくらいの、軽いフットワークで始まったんですけど。

──クリエーションについてはどんなお話をされていますか?

3月の中頃に8日間くらい、ノルウェーにレジデンスして一緒に稽古しました。ファーストインスピレーションで大まかなコンセプトが得られればいいなと思ってたんですけどそこには到達できて、8月にまた稽古を再開します。

──創作にインターバルが入ることは、作品に影響を与えるのでしょうか?

森山未來

プラスの影響しかないと思いますね。もちろん、2、3週間とかでバババッて作ったものをぽんと出すっていう勢いも否定しないですけど、熱量で作ったものを1回熟成させると俯瞰で見られるし、その間にそれぞれのワークをして違うインスピレーションが得られるので、次に集まったときに前回作ったものがまったく違う見え方になる。すると違うアプローチができるようになるので、作品がより豊かになっていく感じがありますね。


2018年8月7日更新